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岡田准一も通った秘密のトレーニングルームがすごい〈週刊朝日〉
がっしりとした体と快活な笑顔の持ち主で、82歳になった現在もプロスキーヤー・冒険家として活躍する三浦雄一郎さん。都内にある三浦さんの事務所で行われた作家・林真理子さんとの対談で山登りの面白さを語った。
* * *
林:エベレストにお登りになる前のドキュメンタリーをテレビで見たことがありますけど、酸素の少ないところでトレーニングなさるんですね。
三浦:この事務所の1階の突き当たりが低酸素室なんですよ。出発前の半年ぐらい、週2回ずつそこに入ってトレーニングしてましたね。富士山の頂上だと酸素が30%くらい少なくて、5千メートルだと約半分になるんですが、それが人工的にできるようになってるんです。今度、夢枕獏さんの『神々の山嶺(いただき)』という小説が映像化されるんですけど、主演の岡田准一さんもここに来て、トレーニングしてましたよ。
林:そういえば「岡田准一、エベレストに挑む」って何かに大きく出てました。今日来ないかしら(笑)。
三浦:もう出発しちゃったかな。モンブランに登った「イッテQ!」のイモトアヤコさんも、スタッフと一緒に来られてました。
林:それは立派ですね。突然モンブランに行けるわけじゃないんですね。
三浦:僕は自分のためにつくったんですが、いろんな人がここでトレーニングしてます。
林:いまは世のため人のために。
三浦:というか、山が好きな人のためにね。ボクシングや自転車でオリンピックに出る人たちもトレーニングで来たりしてますけど。
林:沢木耕太郎さんの『凍(とう)』という本を読んでわかりましたけど、氷点下の厳しい環境のなかで排泄とか食事とか、そういう日常をこなしながら登っていくわけですよね。
三浦:それを承知で好きでやってるわけですから。
林:三浦さんはそういう状況の中でも、テントの中で手巻き寿司パーティーをしたり、お茶会をなさったりしたんでしょう?
三浦:そうそう。お茶の作法も知らないくせにね。せっかくならおいしいものを食べたいし、楽しみたいから。
林:そういう苦しい思いをしたごほうびとして、エベレストからの空や雲を見られるわけですね。
三浦:すばらしかったですね。どこに行ったって自然というのはすごいものですけど、氷の壁をずっと登っていって、そのまま宇宙に向かって歩いていくような感じでしたよ。
※週刊朝日 2015年4月3日号より抜粋