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<客室数ワースト1位>増える宿泊者、減る旅館 奈良
歴史的遺産や古社寺で高い知名度を誇る奈良。実はホテル・旅館の客室数は9055室と都道府県でワースト1位(2013年度、厚生労働省調べ)だ。県は観光振興の柱として宿泊者数の増加を目指している。チェーンホテルや小規模なゲストハウスなど簡易宿所は増加しているが、伝統的な旅館は減少傾向が続くのが実態だ。
厚労省のデータによると、ホテルと簡易宿所は09年度末の56軒と258軒から13年度末にはそれぞれ58軒と273軒に増加。一方、旅館は同時期に430軒から399軒に減った。その背景は何か。
13年に猿沢池のほとりで幕末から続いた老舗旅館「魚佐旅館」が廃業した。既に建物は解体され、今夏には結婚式場に衣替えすることになっている。
理由の一つは建物の耐震化だった。元経営者は「東日本大震災後に問い合わせが増えた。修学旅行客のキャンセルが出たのは痛かった」と話す。県庁近くの市町村職員共済組合「四季の宿やまと」が09年に廃業したのも、やはり70年建築の建物が耐震基準を満たさず改修資金も手当てできなかったことが理由だ。
13年の法改正で3階建て以上で延べ床面積5000平方メートル以上のホテル・旅館は15年末までに耐震診断結果の報告が義務付けられた。県旅館・ホテル生活衛生同業組合の担当者は「補強工事だけでは建物の美観を損ない、客室内が狭くなる。サービス向上には追加工事が必要」と指摘する。14年度だけで6組合員が廃業するなか、同組合では災害時の観光客の避難所とすることで耐震化の補助金を得るといった他府県の事例を研究している。
もう一つの問題は景観規制だ。薬師寺の東塔、西塔越しに若草山が見える−−。そんな古都の景観を守るため建築物には厳しい高さ制限がある。
県が奈良市中心部の県営プール跡地などで進める「高級ホテル」事業も例外ではない。イメージ図では、7階建てホテルは約3万2000平方メートルの用地のうち北側の大宮通りに張り付くように配置。通りから50メートル幅までは商業地域で高さ制限は31メートルだが、南側は「第二種住居地域」で高さ制限は25メートルとさらに厳しく、商業施設の面積にも規制があるためだ。
先の「魚佐旅館」の場合、周辺地域は高さ15メートル規制。高さを稼げないと、新築しても十分な部屋数は見込めない。元経営者は「あと2階分を積めたらというのが正直な思い」と話す。
過去にはJR奈良駅周辺の再開発事業で高さ規制を緩和して10階建てビルを建設したケースもあるが、市の担当者は「地域の合意を得るなど一定の手続きが必要」と話す。…