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「上場ゴール」の最悪IPO “gumiショック”の波紋
「最悪のIPO(新規株式公開)だ」──。2014年12月に東証1部に上場したばかりのスマートフォンゲーム大手gumiが、投資家から大ひんしゅくを買っている。
上場わずか2カ月半で業績予想を下方修正しただけでなく、15年4月期は黒字予想から4億円の営業赤字に転落することになったからだ。海外向けの主力ゲームが伸び悩んだためだという。
企業側の姿勢も酷評の的だ。もともと同社の國光宏尚社長といえば、ベンチャー業界では有名人。上場後のベンチャーの株価が公開価格を下回り続けているにもかかわらず、株を売った創業者やベンチャーキャピタル(VC)だけがもうける「上場ゴール」と呼ばれる現状を問題視。「企業もVCも証券会社もIPOすることだけが目的になってしまっている」とIPOの在り方を批判してきた。
だが、gumiの株価は公開価格の3300円からずるずると値を下げ、今回の件で一時1451円まで落ち、時価総額も500億円を割り込んだ。その折、財務担当責任者らを中心に経営陣の株放出が発覚、公募よりVCの売り出しが多かったこともあり、自らが「上場ゴール」を体現したのだ。
しかも、3月5日の業績修正の翌日には、運転資金のための銀行借り入れをしていたことを明らかにした。これが1月末の出来事とあって、「年明けから業績悪化が見通せていたのではないか」とますます投資家を疑心暗鬼にさせた。
これに対してgumiは「借り入れは開示ミス。1月の売上高の進捗率は95%と順調だったが、2月の実績がかなり落ち込んだ」と故意ではないとの見解を示すが、今回の対応に失望した投資家は少なくない。しかも、問題はgumiだけにとどまらない。
主幹事の交代が転機
今からおよそ1年前、証券業界で大きな動きが起きた。gumiの主幹事を、野村證券が大和証券から奪い取ったのである。
主幹事とは、上場を目指す企業と共に数年間上場準備を進め、IPO時に株式の募集や売り出しを中心的に行う証券会社のことだ。
一度決まった主幹事を奪い取るのは並大抵ではない。しかもgumiは、いきなり東証1部上場を狙える時価総額1000億円規模の大型案件だった。それをひっくり返した野村の本気度に、VCも「これはもうかる案件」と次々と群がり、出資も相次いだ。
しかし、現実はこの通り。結果として、IPO業界に冷や水を浴びせたのである。投資家も次のIPO案件への投資に及び腰となり、上場予備軍の株価算定に影響を及ぼし始めている。
東証もこれまで以上に「下方修正」に敏感となっていることから、証券会社の締め付けも厳しくなろう。gumiショックはいち新興企業の問題で収まらない深刻な事態を招いている。
(週刊ダイヤモンド編集部 小島健志)