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【コマツ】 遠のく反転攻勢のタイミング 攻守の施策投下で体質強化
製造業の優等生として知られるコマツの業績の足踏みが続いている。「新興国」と「鉱山機械」の需要減が主たる原因だ。コマツの反転攻勢はいつになるのか。
「なぜ、ここまで株価が下がるのか? こちらが聞きたいくらいだ」と藤塚主夫・コマツ取締役専務執行役員は肩を落とす。
1月28日、コマツが2015年3月期3Q決算を開示した直後から2月にかけて株価は急落、28日終値より一時10%以上も値を下げた。今期は、連結売上高は前年同期比3.4%増の1兆4366億円、営業利益は同9.8%増の1818億円と増収増益なのだが、市場の反応は冷たかった。
目下のところ、市場関係者の関心は、いつコマツの業績が反転し、再び成長軌道を描けるのか──。このただ一点に尽きる。
今期の増益要因を分解すると、販売数量減187億円のマイナスを円安効果294億円のプラスでカバーしており、実態が回復したとはいえない。それどころか、新たなリスクが頭をもたげてきており、反転の兆しは見えない。
投資判断を「買い」から「中立」へと引き下げた齋藤克史・野村證券マネージング・ディレクターは、「ロシアや中東などの建設機械の需要減リスクが株価に織り込まれていない上、期待感が高まっていた鉱山機械の部品の回復時期が後ろ倒しになった」と分析する。
その説明の通り、コマツの先行きの懸念は二つある。一つ目は新興国の建機需要の急減リスクであり、二つ目は鉱山機械の回復時期の遅れである。
まず、新興国の建機需要については、中国の3Qが40%減となり想定の30%減よりマイナス幅が拡大。その上、新たな不安材料として、ロシアのルーブルの急落が浮上した。顧客は、値下げをしないコマツ製建機を買い控える傾向が強まる。
二つ目の鉱山機械の回復については、かねて懸念されていたことではあった。コマツの鉱山機械の新車販売台数は12年3月期に8000台に迫ったが、15年3月期は2200台にとどまる見込み。市場に出回っている鉱山機械は約4万台に及ぶため、「(10年程度で新車を買い替えるとすると)4000~5000台が販売されていてもおかしくない」(藤塚専務)として、復活のタイミングが期待されていたところだった。
日本円ベースでは、15年3月期3Qの鉱山機械の売上高は1288億円となり、同2Qを上回った。だが、鉱山機械はドル建てで販売されることが一般的であり、為替差益が含まれる日本円ベースの数字よりも、ドルベースの数字の方が、販売動向の実態に近い。…
ドルベースでは15年3月期3Qの鉱山機械の売上高は11億2900万ドルと同2Qを下回っている。(新車ではなく)部品の売上高が下げ止まるとの見方もあるが、野村證券による同4Q予想では、日本円ベースでは前年同期比17%減、ドルベースでは28%減となる見込みで、さらに深刻となる。
大橋徹二社長が就任して、この4月で2年。円安へ振れ為替が好転したタイミングで、ロケットスタートするつもりが、「新興国」と「鉱山機械」の二大リスクが浮上し、業績の足踏みが続いている。
固定費削減も研究開発投資は持続
ICTで領域広げる
では、反転攻勢のタイミングはいつなのか。
大橋社長は、「資源メジャーとの情報交換によれば、16年度には投資のタイミングが訪れる」と踏む。「新興国リスクで来期は落ち込むが、16年度には回復する」(齋藤マネージング・ディレクター)との予測もある。当面は、我慢の経営が続くが、中長期的な成長を悲観する市場関係者は少ない。
また、「01年に大赤字を出したときに倒産の危機を味わった。外部環境はよろしくはないが、右顧左眄しても仕方ない」(藤塚専務)と腹をくくる。
「あらゆる知恵を絞って固定費を削減する一方で、製造業の根幹である売上高の3%超に相当する研究開発投資は落とさない」(同)として、来る反転攻勢に向けて、攻守の施策を怠らない方針だ。
2月1日、コマツはICT(情報通信技術)を駆使した新たなサービス「スマートコンストラクション」をスタートさせた。3Dスキャナーや無人ヘリコプターを飛ばして工事現場の状況を把握するなどして、施工業者の作業環境を飛躍的に改善させるものだ。遠隔地から車両の稼働状況などを把握できることで知られる「コムトラックス」の発展系ともいえる。
ポイントは、顧客のメリットを追求すると同時に、現場のリアルな情報を取得できるようになること。顧客の事業環境のみならず、「サービスで稼ぐ」というように、コマツのビジネスモデルを変革させようとしている。
ICT投資は一例だが、資源価格、為替変動に左右されない企業体質をつくることこそ、危機を経験したコマツが編み出した経営スタイルでもある。坂根正弘・相談役特別顧問も「今が企業体質は一番強い」と太鼓判を押しているというが、来期の停滞をはね返すことができるかどうか。コマツは正念場に差し掛かっている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)