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どうして、あの営業マンばかりが売れるのか? -月10台クルマを売り続ける「営業しない営業」
「あなたと話がしたいんだ」
そんなことを言ってくる客がいるという。
手軽なネット取引が利用客を増やすなか、昔ながらの対面営業で投資家の心をつかむのが業界中堅の立花証券。立川支店一筋26年の田島雅明さんは、「とくに仕事とは関係のないことでも相談を受ければお応えしますし、雑談をすることもありますよ」とにこやかに話す。
一見したところ仕事とは無関係の相談や単なる雑談であっても、顧客との対話には営業マンにとって大切なヒントが含まれている。田島さんのように、顧客のほうから「話がしたい」と言われるようになるには、どうしたらいいのだろうか。
ここで紹介するのは、トップセールスの証言から構成した「話し方」や「聞き方」の実例である。
なかには他人には真似のできない、その人ならではのテクニックやスキルもあるだろう。しかし、どんな形であれ、優秀な人の話には何かしらのヒントが含まれているはずだ。
まずは、自動車業界の例から見ていこう。
■月10台クルマを売り続ける「営業しない営業」
顧客によく言われる言葉がある。「営業なのに、ちっとも売り込もうとしないんだね」。実際、「売るための営業をしているつもりはない」と安田哲也さんは言う。
日産自動車では営業職をカーライフアドバイザー(C/A)と呼ぶが、安田さんは神奈川日産自動車横浜中店のC/A部長。年間販売成績の優秀者に贈られる金賞を11回受賞し、2004年には全国日産販売店の功労者に所属が許されるプラチナクラブに入会した。いわば営業職の殿堂入りである。
営業歴24年。その間に販売したクルマは、あと30台で3000台に届く。一人月3台が平均というこの業界で、安田さんは月に10台近くを売ってきた計算だ。
「売る営業はしていない」のなら、売れる秘訣はどこにあるのか。
「僕がやってきたのは、日産の営業として、自分が居るべき場所を常に探し続けることです」と安田さん。「そもそも営業は、何もしなければ行き場のない仕事なんですよ。営業マンにとって、居場所がないのが一番つらい」と語る。
「背負っているのは日産の看板だけ。店を出て、どこへ行って何をするかが決まっているわけではない。ですから、営業として勝負できる舞台を自ら開拓することが何よりも大きな課題です」
そのために安田さんが心がけてきたのは「自分がお客様にとって、どう役に立てるかを考え、行動で示すこと」だ。それができれば「お客様が自分の“分身”となって、手助けしてくれる」という。…