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エネルギーの地産地消で地域の活性化は進むのか?自治体の意識調査を紐解く

 

 再生可能エネルギーは地方自治体を救うのか?

 

 太陽光発電、バイオマスなど「再生エネルギー」が少し前から注目されているが、ただ枯渇しないクリーンなエネルギーという理由だけではなく注目されている理由がもう一つある。それはエネルギーの“地産地消”が望めることだ。通常、エネルギーに対して私たちは例えば、石油や石炭など大半が外国の資源を利用している。外国の資源ということは、それに対して私たちはお金を払っている訳だが、当然お金は外国に流れていく。しかし、地方自治体に導入することで、エネルギーをその土地で地産地消できれば、お金は自治体の中で巡り、新たな労働力も生まれ、一石二鳥という計算だ。
 
 地方自治体への導入が期待されたが…。実際は、例えば風力なら騒音問題などが起きたり、買取りに関して疑問点が多かったり、そうした事から導入はなかなか進まなかった。そんな中で2012年に再生可能エネルギー固定価格買取り制度(以下、FIT)が導入された。導入されたことで、一気に再生可能エネルギーに期待が集まった。しかし、フタをあけてみると、地方自治体よりも固定価格買取り制度に“うまみ”を感じた企業も相次ぎ参入。日本の再生エネルギーの視点で見れば、FIT導入により一気に再生エネルギーの市場は拡大した。しかし、もともと期待していた地方自治体の観点で見れば、結局外国からのエネルギーに頼るのと同じで、同じ日本とはいえ域外の資本のため地方自治体の活性化へつながるとは言いにくい状況といえる。
 
 そうした中で、再生エネルギー事業に参入した企業は多くなり需要と供給が崩れることになる。その結果、電力会社は「電力の供給不安定」さを理由に再生可能エネルギーの接続保留を打ち出したニュースは記憶に新しいだろう。今年に入り1月末には接続保留は解除されたが、まだまだ不安定さは隠せない。
 
 今回、国や電力会社の対応から見るのではなく自治体から見た再生可能エネルギーと地方活性化について考えてみたい。

 
 
 

 自治体と再生可能エネルギーとの関係

 

 こうした状況の中、早稲田大学と群馬大学では「創発的地域づくりによる脱温暖化」プロジェクトの中で、全国約1,600の自治体に再生可能エネルギーの導入実態についてアンケートを実施。1月末に「再生可能エネルギー導入の実態と自治体意向調査」として、集計結果を発表した。
 
 調査結果概要の説明会当日には、一般社団法人創発的地域づくり・連携推進センターの早稲田大学の堀口健治名誉教授、東京農工大学名誉教授であり龍谷大学の堀尾正靭教授、そして独立行政法人科学技術振興機構・社会技術研究開発センター実装プロジェクト「創発的地域づくりによる脱温暖化」に参加する群馬大学の宝田恭之教授、早稲田大学の岡田久典上級研究員が登壇した。…アンケートの実施の背景について、宝田教授は「私たちが研究する脱温暖化は科学技術だけでは答えは見いだせない。社会構造を変えるようなライフスタイルの変化が重要です。その中でカギとなるのが再生可能エネルギー。地域の活性化に非常に大切だといいながら、最近は本当に地域の活性化を担っているのかどうか、疑問があった。そういった中で今回、自治体に向けてアンケートを実施して実態について探ってみました」とのことだ。
 
 
 

 自治体は再生可能エネルギーに対してどう考えているのか?

 

 では実際のアンケート結果を見てみよう。
 
 約1,600の自治体に調査を行い、実際に回答があったのは414の自治体。
 約30%の回答率だったことについては、昨年10月に一部電力会社からの接続保留が影響したのでは、とのことだった。また、自治体の規模が小さくなるにつれて再生可能エネルギーに関して担当する部署がない割合も高く、一概に答えにくかった事も影響したとのことだ。
 
 今回起きた接続保留の件はどう自治体に響いているのか?
 自治体に今回の件で困っている事業者がいるのかと訊ねた質問では、自治体が認識している「保留によって困っている事業者」は約17.4%いるということだ。いないと答えた自治体が18.4%。一方、分からないと答えたのは64.3%にのぼった。自治体の規模をみると、都道府県ではいる・いないの認識が約80%近くあるが、人口20万人以上の都市では逆に分からないの割合が約80%にのぼる。大学の分析結果でも、「FIT制度では総じて自治体には情報がないという状況があります」とのことだ。
 
 FITの見直しの中でどういう改善をしてほしいか(複数回答式)、については、「系統連系状況の情報が公開されていないままに電力会社は回答保留をしているが、今後は系統連系と設備認定の透明性を担保してほしい」との回答が42.5%、「FIT制度を利用した投機的事業に対しては適切な規制が必要である」37.7%、「地域の雇用や経済循環につながることが明確な事業を優遇する価格設定にして欲しい」36.0%という結果になった。
 
 情報不足に対する不満と、本来地域活性化につながるはずの再生可能エネルギーが地域活性化ではなく一部の投機的な事業のほうで利用されているのが分かる。

 
 

 再生可能エネルギー導入の課題は?

 

 実際の自治体の再生可能エネルギーへの取り組みを訊いた質問を見てみると、公共施設に太陽光発電を設置するなどの導入は進んでいるが、一方で省エネ資源の活用に関する明確な地域の合意形成やルールができていないことが多いという。…また、推進するにあたり地域で直面している問題について訊いた質問では、「事業の見極めが困難である」42.8%、「再生可能エネルギー導入に詳しい人材がいない」35.5%、「事業資金の調達が難しい」29.2%という結果だ。専門知識をもった人材の不足がうかがえる。
 
 また、計画中の再生可能エネルギー施設・設備に関するトラブル・苦情について、まず苦情の内容は「景観」52.0%、「不安」40.0%、「自然保護」38.0%ということだ。不安に関しては近隣住民への情報提供に不足があり、合意がとれていない様子がうかがえる。
 また、実際にあった再生可能エネルギーの施設・設備では、「域外資本のメガソーラー」40.5%、「域外資本の風力発電」19.0%、「地元資本のメガソーラー」18.2%という結果になった。投機的な地域外の資本について苦情が多いのが見える。
 
 アンケート結果を報告した岡田上級研究員は「FITの見直しを行い、地域との合意を形成する必要がある」とコメントをしていた。
 
 
 

 再生可能エネルギーはどうなるのか?

 

 発表の中で、鳥取県のある自治体で水力発電を行い毎年2,000万円近くの電力を中国電力に売電しているという話を聞いた。その自治体は売電するまで近年人口減少が激しく過疎化が進んでいたが、売電により自治体はうるおい最近は人口増加しているという。
 
 地域外の事業者が参入して再生可能エネルギーを作ることが悪いとは言わないが、トラブル内容や施設を見ても、その地域の自然保護や地域活性につながるのはやはり地域内事業者であることが多いようだ。とはいえ、自治体も認めているようにまだまだ専門知識をもった人材の不足や情報が行き届いていないことが、再生可能エネルギー導入の遅延につながっていることも否めない。
 
 創発的地域づくり・連携推進センターでは今後、自治体とさらに連携して情報の提供や人材支援など、再生可能エネルギーが各地域に根付き活性化につながるようなプラットフォームづくりが行われるという。
 
 こうした取り組みによって地産地消のエネルギーが生まれれば域外にお金が流れることはなく、自治体自体にお金がまわる。今の日本の人口減少や空き家問題の解決にもつながるだろうと感じる。実際に地方に移住したくても、仕事ができる場所がないからと戻れない若い世代も多い。しかし、こうしたプラットフォームづくりによって仕事できる場所が増え、人口も増え、その結果地域の活性化につながることを期待したい。

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