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希少糖 甘くない商品化
近藤浩二 75 レアスウィート社長
<白い粉>
- レアスウィート社長・近藤浩二氏
-
香川大の学長だった2000年のこと。農学部の教授が白い粉の入った瓶を手に学長室を訪ねてきました。研究用の試薬などに使われるプシコースという珍しい糖でした。特定の植物からわずかしか取れないため、500グラムで3000万円以上もの値段が付くと。教授は、ミカンの皮や残飯などからこの糖を生成できる酵素を発見したと言うのです。
「捨ててしまうものからそんな貴重な糖を作れるのか」。大学の特色ある研究としてぜひ取り組みたいと思いました。農学部の研究室に私が書いた看板を掛け、その教授と助手とともに研究を始めました。
<事業化の壁>
研究を進めると、味は甘いのに血糖値の上昇を抑えたり、動脈硬化を防ぎやすくしたりする効果があることがわかってきました。菓子などにこの糖を使えば、多くの人に喜んでもらえるはず。夢のような糖だと、期待が膨らみました。
しかし、この「希少糖」を安く大量に作る技術はない。事業にするには、製造・販売をする会社が必要です。いくつもの企業を説得しましたが、「大量に売れる見込みがなければ作れない」と断られ続けました。
学長を03年に退職しましたが、諦めきれません。「協力してくれる会社がないなら自分で作ろう」。仲間に出資を呼びかけ、私も資金を出し、06年に会社を起こしました。
研究の過程でできる糖を試薬として製薬会社に売り、収入を得ていましたが、売り上げはわずか。資金繰りは自転車操業で、研究員1人の給料を出せず、私が負担した時期も。「社屋」は地元の山間部で廃校になった小学校の校舎です。そこで商品化を模索する日々が続きました。
<健康の手助けを>
08年、食品素材メーカーとの共同研究で、でんぷんを原料とする糖を化学反応させ、希少糖を約15%含むシロップを作り出す方法がようやく見つかりました。
甘いのにカロリーは砂糖より少なく、肥満になりにくいといえます。大量に生産でき、家庭向け商品を500グラムで1200円に抑えることに成功したのです。
10年に販売会社のレアスウィート社を設立しました。まずは人々に希少糖について知ってもらおうと、香川県内の公民館などで説明会を開きました。しかし、5人しか集まらなかったことも。おばあちゃんが「ええ話やのう」と言ってくれた時はうれしかった。
地元の物産館など四つの店でシロップの販売を始め、ゼリーやジャムなど希少糖を使った商品が増えると、口コミで評判に。今では大手コンビニエンスストアのデザートや大手飲料メーカーの清涼飲料水にも使われるようになりました。
教育の世界にいたはずが、希少糖という素材にほれ込み、気付いたら経営者になっていました。これからも人々の健康な生活の手助けができればと思います。(聞き手 沼尻知子)
◇
《メモ》 香川大で長く物理の教べんを執り、1997年に学長に就任した。2006年、研究開発を行う希少糖生産技術研究所を創業。10年にレアスウィート社(香川県三木町)を設立し、社長に就いた。
希少糖は50種類以上あるとされ、虫歯予防に使われるキシリトールもその一種。同社はプシコースなどの希少糖を約15%含んだシロップを販売している。2013年度の売上高は約3億円。
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