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<大震災4年>津波で孫や家族失い…愛犬と再び歩む76歳

<大震災4年>津波で孫や家族失い…愛犬と再び歩む76歳

東日本大震災の津波で妻と娘、孫2人を失い、仮設住宅で暮らす宮城県東松島市の川上由夫(よしお)さん(76)が、集団移転先の住民と一緒に、ペットを通じた交流団体を設立した。自分を責める日々から救ってくれたのが、ともに生き残った愛犬のビーグル「トワ」(7歳、雄)がくれた人とのつながりだった。震災から4年。「自分が今も苦しむ人を支えたい」と思えるようになった。

【避難地域に残されたペットたち(2012年掲載)】

 2011年3月11日、川上さんは妻和子さん(当時66歳)と海岸から約500メートル離れた同市の大曲浜地区の自宅にいた。大きな揺れ。市内の内陸部に住んでいた長女真弓さん(同43歳)が川上さん夫婦を心配し、中学校にいた孫の龍君(同14歳)、聖(たから)君(同13歳)を車に乗せて駆けつけた。無事を確認し合った時、津波が足元まで迫っていた。

 車3台で逃げようとした。和子さんの車には龍君、真弓さんの車には聖君が乗った。「トワを頼んだよ」。和子さんの言葉で、川上さんはトワを乗せ、エンジンをかけた。出発して間もなく、波にのまれた。車外に出た龍君が3メートル先で「助けて」と叫ぶ姿が見えたが、すぐに視界から消えた。

 川上さんの車は前部が沈み込む形で波に浮かんだ。トワを抱きながら車内で一晩を明かした。「雪が降る寒さの中、トワの体で温められた」。車が打ち上げられたのは約1キロ内陸部だった。翌日、体育館でブルーシートにくるまれた龍君と対面した。約1カ月後、和子さんら3人も車の中から遺体で見つかった。

 「娘と孫は俺を迎えに来なければ助かったのに。なぜ俺だけ死ななかったのか」。1人残された川上さんは避難所でふさぎ込んだ。11年9月に移った仮設でも生前の家族の姿が忘れられず、酒の量が増えた。生きる目標を失っていた。

 そんな生活を変えてくれたのが、妻に最後に世話を託されたトワだった。名前は「幸せを永遠(とわ)に」との願いを込めて孫が付けた。「家族の形見」のトワは孫が通った中学校の体操服を見ると、決まって鳴き声を上げる。

 散歩に連れ出すと、出会う住民が声をかけてくれた。仮設内で会話が徐々に増えていき、動物保護のボランティアの人たちとも知り合った。13年12月にはボランティア団体の誘いで、名古屋市内で体験を語った。いつしか、つらい過去を大勢の前で話せるようになっていた。「トワがつないだ人との縁で前を向けた」と思う。

 川上さんは今夏をめどに、市内の防災集団移転先「あおい地区」に自宅を再建する予定だ。「震災の苦しみを口に出せない人は多い。住民同士が支え合える街にしたい」。引っ越しに先立ち昨年12月、ペットを通じて移転先の住民の親睦を深めようと、「あおいペットクラブ」を設立した。ペットの有無にかかわらず会員を募り、地域の巡回やイベントを企画したいと考えている。【柳沢亮】

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