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[FT]アップルウオッチ、iPhone連携が生む難問
誰かがスマートフォン(スマホ)に匹敵する可能性があるブレークスルーとたたえられる新しいハイテク製品を生み出したとしよう。その製品を潜在顧客の85%が利用できないようにしたら、どうなるか。
それが、米アップルが「アップルウオッチ」の発売でやろうとしていることだ。同社は10日からオンラインで注文を受け付け始め、2週後に9カ国でウオッチを発売する。
店頭に並ぶアップルウオッチ(10日、香港)=AP
新しい「ウエアラブル」のコンピューティングプラットフォームとして、これまでで一番期待が持てるモノにしては、ウオッチは頓挫する恐れがある。ウオッチを持つことになるのは、アップルの既存顧客の一部だけだ。なぜなら、ウオッチは「iPhone(アイフォーン)」に縛り付けられているからだ(そのiPhoneはスマホ所有者の6人に1人しか利用していない)。
ウオッチはiPhoneと接続する端末で、ウオッチ上で動作するアプリは、アップルの「アップストア」が扱う同社製モバイル端末用のアプリの拡張版だけだ。
■アップルの中途半端な姿勢
影響力のある米国の経営学教授、デビッド・ヨッフィー、マイケル・クスマノ両氏によれば、これは技術プラットフォームの重要性をアップルが中途半端に受け入れている姿勢をまさに明白に表している。両氏は4月半ばに出版される新著『Strategy Rules』で、アップル共同創業者の故スティーブ・ジョブズ氏は本能的に、自己完結型の製品――独自の規則で機能する、強固に統合された技術――の開発に引き寄せられたと主張する。
対照的に、プラットフォームはネットワーク効果から恩恵を受ける。他のハイテク企業がアプリなどの補完的な製品・サービスを付け加え、そうした製品・サービスがさらに多くの利用者を呼び込む仕組みだ。ジョブズ氏は最後には、モバイル端末向けのアップストアをもってプラットフォームという概念の力に屈した。
だが、ヨッフィー、クスマノ両氏によると、ジョブズ氏が見せた混乱はアップルで今でも明白であり、ポスト・スマホのコンピューティングプラットフォームでのリードを無駄にする結果になりかねないという。
これは白黒がはっきりしている状況ではない。ウオッチは恐らく、プラットフォームの大志が欠けている製品というより、むしろ既存の技術プラットフォームの延長と見なした方がいいのだろう。結局のところ、ウオッチはサードパーティー製の簡素なアプリを搭載する。そのため、ウオッチは途中で何度か曲折がありそうな新市場における最初の慎重な一歩を意味している。