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[FT]英、核戦力にこだわる悲しさ
英国の選挙戦で先週、核兵器の話が飛び出した。保守党のマイケル・ファロン国防相が、もし労働党政権が誕生したら英国の核抑止力である潜水艦発射弾道ミサイル「トライデント」の更新への支出を拒み、「英国の背中を刺す」かもしれないという刺激的な発言をしたのだ。
ファロン氏の発言は1980年代の主題の繰り返しだった。つまり、労働党は防衛問題が不得手で核兵器について定見を持たないというレッテルを保守党が貼り付けるのに成功した時代のテーマだ。
核弾道ミサイルシステム「トライデント」を解除すべきだと主張する人々(4日、グラスゴー)=ロイター
しかし、英国の軍事力の勇猛果敢な守護者を気取ることを今日の保守党に認めるべきではない。ファロン氏の発言とは裏腹に、現政権は労働党政権が始めた路線を踏襲して、防衛力の劇的な縮小を差配してきたからだ。
英国陸軍の規模はわずか8万2000人に縮小される予定だ。これはナポレオン戦争以降では最低の水準だ。現在の連立政権で国防省閣外相を務めていたニック・ハービー氏(自由民主党)によれば、次の議会で防衛費がさらに削減されれば、陸軍の規模はわずか6万人に縮小される可能性もあるという。
また、1977年には駆逐艦やフリゲートを計70隻擁した海軍も、19隻に縮小されている。これでは、82年のフォークランド戦争で英国が必要とした規模の部隊を編成することはもうできないかもしれない。
空軍については英国放送協会(BBC)のマーク・アーバン氏が、「爆撃機6機による任務が……おおむね、RAF(王立空軍)の長距離攻撃力の限界」であることが2011年のリビア紛争で明らかになったと新著に記している。
■強さの象徴でしかないトライデント
このように防衛力を大幅に削減してきた文脈に照らせば、潜水艦から発射するトライデント・ミサイルシステムの更新に300億ポンド以上を支出するという保守党の約束は、国の防衛を真剣に考えている証拠にならない。
むしろこれは、英国が必要としている通常戦力に資金を出さず、強さの象徴でしかないものに何百億ポンドもの資金を無駄遣いする浅はかな決断だ。
スコットランド民族党(SNP)や労働党左派に属する本当に急進的な政治家たちは、英国の核兵器を全廃したいと思うことだろう。しかし、失地回復を目指すロシアが核兵器を持っていることを自慢し、イランなどの国々に核兵器が拡散する脅威も続いていることを考えれば、全廃は無分別な選択だ。