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LIXILの新キッチンに 旧サンウエーブの“隠し玉”
次々に海外企業の大型M&Aを仕掛けるLIXILは、2011年4月に旧トステムなど計5社が経営統合して以来、水面下で開発を進めてきた“新素材”を投入し、競合他社を一気に引き離す勝負に出た。
3月5日に発表したシステムキッチン「サンヴァリエ〈リシェルSI〉」シリーズで、キッチンの作業台にステンレスや人造大理石を使ったモデルに加えて、新素材のセラミック(焼き物)を扱ったモデルを投入したのである。
一部の専業メーカーが手掛ける富裕層向けのオーダーメイドを除けば、システムキッチンでセラミックを採用して量産化に踏み切ったのは国内では初めて。一枚板の作業台は、焼き物ならではの上品さと高級感があり、本物志向の50~60代のニーズに応えるものだ。
ステンレスや人造大理石を使った標準モデルは68万2000円(税別)からあるが、セラミックを採用した最上位機種は252万円(税別)。今後、プレミアム製品であることを打ち出していく。
自ら競争の舞台を変える
新素材で勝負を懸ける背景には、キッチンの世界における大きな変化がある。近年は、家族が全員で集まるリビング(居間)に向けて据え付けるタイプが人気を集めており、「今や憧れのキッチンは、“キッチンが中心のリビング”に変わりつつある」(業界関係者)。
国土交通省の「住宅市場動向調査」(平成24年度)でも、リフォームした箇所はキッチンが40%で第1位、トイレは29%で第2位、居間と浴室は28%で第3位だった。そこでLIXILは、キッチンと住まいをトータルで提案して競争の舞台を変えるべく乗り出した。
1984年に登場した「サンヴァリエ」シリーズは、旧サンウエーブ工業が業界トップシェアを築いたブランドだ。同社は、LIXILの傘下に入る前からセラミックなどの新素材を使ったキッチンの構想を温めていた。それがようやく日の目を見たことになる。
新発売の〈リシェルSI〉は、キッチンの収納扉に作業台の質感と調和する計48色を用意し、16種類の取っ手と合わせて全部で411通りの組み合わせを可能にした。
さらに、リビングの空間に合わせる建具(商材)と連動し、同じ色で光の反射具合を一致させたドアや建材もそろえた。それができたのも、グループ内に焼き物の技術を有する旧INAX、インテリア建材などを扱ってきた旧トステムや旧新日軽がいたからである。
今回の動きには、作業台の主流がステンレスから人造大理石へ移行したように、“次なる変化”をリードしたい藤森義明社長兼CEOの意志が透けて見える。新素材のセラミックで勝負を仕掛けると同時に、その周辺需要も取り込む製品群をがっちりとそろえることで、TOTOなどを圧倒し、引き離しにかかるというシナリオだ。
(週刊ダイヤモンド編集部 池冨 仁)