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「ドラクエ」生みの親が明かすヒットの方程式

 「ドラクエ」生みの親が明かすヒットの方程式

 

  スクウェア・エニックスが2月26日に発売したゲームソフト「ドラゴンクエストヒーローズ」が好調だ。発売1週間で約60万本を売り上げ、家庭用ゲーム機向けとしては久々のヒットを飛ばす。辛口のネットユーザーの間でも評価が高い。ゲーム制作を監修するゼネラルディレクターは、ドラクエシリーズでおなじみのゲームクリエーター・堀井雄二氏。「説明書を読まないで、誰でも楽しめる」という最新作は、登場するのはドラクエ世代には懐かしいキャラクターだが、人気のアクション仕立てにした点が新しい。古いファンから新しいファンまでとりこになる最新ゲームは、日本市場では苦戦する「プレイステーション(PS)4」の起爆剤になるのか。

 

 ■「シブサワ・コウ」氏との夢のコラボ

 

 「ドラゴンクエストヒーローズ」はコーエーテクモゲームスで実績がある「無双」と「討鬼伝」のいいとこ取りで生まれた

  「ドラゴンクエスト」は1986年に第1作が発売された人気シリーズ。「ヒーローズ」はシリーズ初のアクションゲームで、「PS3」と「PS4」の2機種で遊べる。派生作品とはいえ、ドラクエの最新作が「PS」で楽しめるのは実に10年ぶりだ。

  「ドラクエでアクションゲームを作りませんか」――。始まりは5年前、コーエーテクモゲームス社長の襟川陽一氏が堀井氏に投げかけた一言だった。歴史シミュレーション「信長の野望」を生んだ「シブサワ・コウ」として知られる襟川氏は、共にゲーム産業を切り開いてきた戦友。「いつか一緒にゲームを作りたかった」という堀井氏は申し出を快諾した。開発は「三国無双」などのヒット作を開発するコーエーの精鋭部隊「オメガフォース」が担うことになった。

  しかし、ゴーサインはなかなか下りなかった。オメガフォースが持ち込むゲーム案をスクエニがことごとく突き返したからだ。「これほど固いとは」。開発責任者の小笠原賢一執行役員は困惑した。

  押し寄せる大勢の敵を一撃でなぎ倒す「無双」の爽快感を、ドラクエの多彩なモンスターを相手に再現できれば傑作になるとの確信があった。過去には「機動戦士ガンダム」が題材の「ガンダム無双」などを成功させた実績もある。だが、スクエニは虎の子のドラクエで安易な「ドラクエ無双」を作るのは避けたい。溝が埋まらず、交渉が途絶えた時期もあった。

  潮目が変わったのは2013年夏。きっかけはオメガフォースの新作「討鬼伝」のヒットだった。巨大な鬼を討伐するハンティングアクションのヒットを目の当たりにして、スクエニが歩み寄りを始めた。ドラクエには「スライム」から「ギガンテス」まで大小様々なモンスターが登場する。大勢の敵を倒す「無双」と巨大な敵を倒す「討鬼伝」のいいとこ取りができる。

  スクエニが提示した発売日は15年2月。開発期間は1年半もない。通常、ゲーム開発は大作ともなれば数年間を投じる長丁場だ。それでも、小笠原氏に迷いはなかった。「ドラクエに出会わなければ、いまの自分はない」と小笠原氏は話す。「コーエーにいながらドラクエが作れる。こんなチャンスは二度とないぞ」とチームを鼓舞した。メンバーにはコーエー屈指のドラクエ好きが集まっていた。

  「開発が始まると、意外なほど自由にやらせてもらえた」と小笠原氏は振り返る。「これはやり過ぎたか」と恐る恐る差し出した演出もあっさり承認されて拍子抜けした。「無双」をほうふつとさせる派手なアクションをふんだんに盛り込めた。スクエニでドラクエシリーズのプロデューサーを務める青海亮太氏は「開発チーム全員がドラクエを知り尽くしていて、シリーズの世界観をしっかり守ってくれた」と話す。

  しかし、ゼネラルディレクターの立場でゲーム作りを監修する堀井氏が立ちはだかる。

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