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「Apple Watch」はどれを選ぶべきか? どちらの手に巻くべきか?

「Apple Watch」はどれを選ぶべきか? どちらの手に巻くべきか?

●Apple Watchを選ぶポイントは3点

 Apple Watchの市場導入はかなり慎重に行われており、筆者自身もコラムをいくつか書いているものの、情報は今日まで限られていた。とはいえ、幸いにもデモとハンズオンを体験でき、時計分野の専門ジャーナリストともApple Watchに関する情報を交換できたので、掲載日が予約注文できる初日ということもあって、少し変わったコラムにさせていただきたい(発売日は4月24日)。

【そのほか、筆者お気に入りのレザーループやミラネーゼループなど、Apple Watchの写真】

 選ぶポイントはアルミ、ステンレス、ゴールドという外装の違い、ケースサイズ(38ミリと42ミリ)の違い、バンドの違いの大きく3点ある。

 まず素材だが、モデルによってはおおよそ200万円となる18金ケースの「Apple Watch Edition」は、さすがに筆者の視野には入ってこない。予算が合わないということもあるが、たとえ筆者が予算を気にせず、こうした製品を手に入れられる財力を持っていたとしても、手を出すことはない。

 冷間鍛造プロセスで作られた18金のApple Watch Editionは、確かに素晴らしい仕上がりで、実際に手にしてみると質感は高い。しかし、ここまで立派な18金仕上げのケースならば、中身(Apple Watchのエレクトロニクス部)が、将来、アップグレード可能であることを保証してもらわないことには、納得して使おうとは思わないからだ。

 すでにバッテリーの交換が可能なことが明らかになっているが、中身より外装の価値が高いApple Watch Editionならば、多少割高なアップグレード設定でも同じ個体を使いたいオーナーもいると思う。

 したがって、現実的にはアルミケースの「Apple Watch Sport」(税別4万2800円から)と、ステンレスケースの「Apple Watch」(税別)という選択肢になる。

 Apple Watch Sportの選択で悩ましいのは、標準で用意されているバンドの組み合わせが、エラストマー製のスポーツバンドしか用意されていないことだ。このスポーツバンドはシンプルで装着感も悪くないのだが、想像よりもコシがあり、装着にはちょっとしたコツが必要という印象を持った。こうしたポップな雰囲気の腕時計が欲しいのであれば、それで問題ないのだが、もう少し落ち着いた時計らしい外観が欲しいのであれば、選択肢はステンレスケースのApple Watchとなるだろう。

 そこには約2倍の価格差があるのだが、この時計を毎日、左腕に巻くのであれば、実にさまざまな場面で身に着けることになる。もちろん、バンドを好みのものに交換すればよいだけなのだが、新たにアップルが開発した7000番台のアルミ素材に酸化皮膜処理を行ったというApple Watch Sportのケースは、革や金属のバンドと組み合わせると少し違和感がある(この辺りは好みだが、筆者自身が買うならば……ということでご容赦いただきたい)。

 時計に詳しいジャーナリストによると、Apple Watch Sportに使われているアルミ合金、酸化皮膜処理は、かなり硬く、何らかの対策が行われている可能性もあるとのことだが、一方でこれまで人の汗に長期間耐えられるアルミ製の腕時計を作ったメーカーはないそうで、その点でやや疑問もある。

 「左手首」という場所を明け渡し、今持っている時計を今後は使わないという覚悟の元で買うのであれば、選ぶのは冷間鍛造されたステンレスケースを美しく機械磨きしたApple Watchだ。アップルもこの商品が主力となることを見越して、何ら説明なしのジャスト“Apple Watch”と名付けているのだと思う。

 多様なバンドが用意されているが、パソコンユーザーにおすすめなのは「レザーループ」だ。色は好みだが、私ならばネイビーブルー(ブライドブルー)を選ぶだろうか。このバンドのよい点は、ほぼ無段階で腕周りを調整し、マグネットでイージーに固定できる点。肌触りも皮革だけに素晴らしいが、さらにノートPCのパームレストに尾錠など金属パーツが干渉しない点が使いやすい。

 尾錠がないのは、金属を布のように編み上げた「ミラネーゼループ」と呼ばれるバンド(バンドの素材としては一般的だが、このような構造はApple Watchが初めてだろう)も同じで、金属バンドのほうが好みということであれば、こちらもいいと思う。予算に余裕があるならば、レザーループとミラネーゼループの両方を手に入れて、交換しながら使うのもいいかもしれない。

 なお、サイズに関しては意外にコンパクトだ。操作性や視認性の違いもあるので、男性ならば、42ミリを一度腕に巻いてみることをおすすめしたい。

●あなたが巻くのは左腕? それとも右腕?

 もっとも、「そのようなことはApple Watchを選ぶうえで、まったく必要のないものだ」と思う方もいると思う。「スマートウォッチとして、Apple Watchの実力はどうなのか?」ということが、そもそもの情報として欲しいということだ。

 しかし、この評価について簡単には下せないと考えている。

 スマートウォッチに求められているのは、スマートフォンが取得する使用者個人につながる情報を、スマートフォン本体を使わずにさり気なく通知することだと思う。もちろん、スマートウォッチ側からスマートフォンに対し、リモートで指示することで簡易的な返信をしたり、音声認識で情報を引き出すといったインタラクティブな操作も可能だ。生体センサーを用いた健康管理やフィットネス情報も得られるだろう。

 しかし、それらは付加機能……いわば「オカズ」であり、それまで使っていた時計を机の引き出しにしまい、毎日左手首に巻く時計として選ぶかどうかは、「スマートフォンからの通知を、腕時計というカタチのデバイスを通して得たいのか?」という部分に集約されると考えている。

 そうした意味では、筆者にとってのApple Watchのライバルは、Android Wearを搭載したスマートウォッチではなく、またタグ・ホイヤーがインテルやグーグルと共同で開発しているスマートウォッチでもなく、右腕に巻くソニーの「SmartBand Talk」なのだ。機能的には圧倒的に劣るが、通知という意味ではさり気なく、また時計でもないところ(腕時計を毎日している人ならば、右手首に装着するタイプの製品)がいい。

 筆者の場合、Apple Watchを入手したならば、左腕に巻くときももちろんあるだろうが、頻度としては右腕に巻く機会のほうが多いだろうと想像している。左腕で竜頭とタッチパネルを操作することになるが、筆者ぐらいの世代だと気に入った時計は誰にでもあるものだ。人それぞれにライフスタイルがあるので、ここはシンプルに、「あなたならどちらの手首にApple Watchの居場所を見つけますか?」という質問にしておこう。

 素晴らしい質感のApple Watchは、美しいディスプレイと曲面仕上げでケースとの一体感が素晴らしい外観を持ち、サスガと思わせる盤面デザインを切り替えられるようになっている。だが、個人的な好みから言うと「スーパーフラット」な高精細デジタルディスプレイよりも、立体的にレイヤーを重ねたデザインのほうが好みという面もある。時計にとってケースやカバーガラスの造形、仕上げも重要だが、盤面の作りもまた製品を選ぶ要素だと思う。

 ただ、Apple Watchの居場所を右腕とするのであれば、マグネットを使ったループ系のバンドは選ばないほうがよいかもしれない。機械式時計やクォーツ時計(防磁ケースを持たないもの)は、手首を交差させたときに悪影響を受ける可能性があるからだ。右腕にApple Watchを巻くならば、ケースやバンドへのこだわりを捨て、割り切ってApple Watch Sportを選ぶという選択肢が出てくる。

 筆者の場合、まだ右なのか左なのか。Apple Watchを自分が購入して使うというストーリーを考えるとき、どちらに巻くのかを決めかねている。故にどのモデルを使うのか、そもそも買って使ってみるかを迷っているのが現状だ。

 もっとも大きなネックとなっているのは、バッテリーの持続時間である。実際にはまる1日を越えて使えることもあるようだが、少なくとも2~3日は安心して動いてもらわないと、左腕という場所は与えられないと考えている。もし、今のバッテリー持続時間でよいとアップルが判断したのであれば、せめて充電用ケーブルは2本、自宅用と携帯用を用意してほしいと思う。

 なお、以前にも書いたことだが、スマートウォッチとして、ユーザーインタフェースや通知の仕組み、盤面デザイン、時計としての作りや装着感は、現時点で他社の追従を許さない完成度であることは、これまでの記事を見ていただければ分かるだろう。

●問題はエレクトロニクス製品としての鮮度

 ただ最後に……Apple Watchだけでなく、本格的に「時計」であることを目指すすべてのスマートウォッチに言えることだが、時計として本格派を目指せば目指すほど、エレクトロニクス製品として鮮度を失う速度が問題になる。

 Apple Watchはその価値(利便性)をスマートフォン側に依存し、スマートフォンの基本ソフトとアプリ、そしてクラウドで価値創出をする仕組みだが、それでもやはりエレクトロニクス製品としての鮮度は落ちてくる。バッテリー持続時間も、来年、再来年と延びていくだろう。

 筆者がスマートフォンを常に左手首に巻くときがあるとすれば、そうした漠然とした疑問(どんなに気に入ったスマートウォッチも、エレクトロニクス製品としての鮮度を失った瞬間に使わなくなることに対する懸念)に対して、自分が納得したときになるだろう。

 ところでApple Watchのステンレスおよびゴールドのケースは、日本最高峰の高級腕時計も磨いている高い技術を持った日本企業が受注しているとの情報をキャッチした。なるほど、それであればこの品質も納得である。

 いつまで、あるいはどのぐらいの規模まで日本で加工できるのか、門外漢の筆者には想像もできないが、再び日本の加工技術にスポットが当たる機会になるとしたら、Apple Watchあるいはスマートウォッチという商品ジャンルの成否とは別の視点で興味深いことだと思う。

[本田雅一,ITmedia]

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