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アレハンドロ・チャスキエルベルグ作品展「OTSUCHI Future Memories ~大槌 未来の記憶~」

アレハンドロ・チャスキエルベルグ作品展「OTSUCHI Future Memories ~大槌 未来の記憶~」 さまざまな「写真展」を随時案内していく本コーナー。今回はソニーイメージングギャラリー銀座で、2015年3月19日まで開催しているアレハンドロ・チャスキエルベルグ作品展「OTSUCHI Future Memories ~大槌 未来の記憶~」を紹介する。
 
 “この作品展は、岩手県中部の大槌町という小さな町を題材に、アルゼンチンの写真家アレハンドロ・チャスキエルベルグ氏が、夜間での長時間露光を表現に活かした彼独自の撮影スタイルで幻想的な作品をご覧いただけます。作品展の内容を説明する前に、チャスキエルベルグ氏について簡単にご紹介しましょう。
 
 アルゼンチンのブエノスアイレス出身のアレハンドロ・チャスキエルベルグ氏は、世界的なフォトコンテストである『ソニー ワールド フォトグラフィー アワード(SWPA)2011』 L’Iris d’Or(グランプリ)受賞者で、さらに『ポートレート オブ ザ イヤー インターナショナル(POY)』の最優秀ラテンアメリカポートレート賞を受賞するなど数々の世界的な賞を受賞しており、世界が今最も注目する写真家の一人です。
 
 作品展の題材となった大槌町は、東日本大震災時に津波による深刻な被害を受けた町の一つです。チャスキエルベルグ氏との大槌町との接点は、2012年に東京で開催された氏の作品展の担当キュレーターだった速水惟広*(はやみ いひろ)氏でした。速水氏のご親戚が大槌町にお住まいであったため、チャスキエルベルグ氏は被災地の状況を詳しく知ることになりました。もともと「日本の漁業文化」に興味があったことから、この出会いをきっかけに、漁業の町であった大槌町を題材にした作品を撮る可能性を探ったのです。そして、速水氏や大槌町住民の皆さんと交流を深めながら大槌町での制作活動ができる環境を整えていきました。*「PHaT PHOTO」ゼネラルマネージャー、Tokyo Institute of Photographyディレクター
 
 チャスキエルベルグ氏は大槌町に3回訪れ、トータルで約1カ月半の滞在中に精力的に作品を制作しました。ある作品では、被写体となってくれる人たちに、もともと自分の家があった場所に夜来てもらうようにお願いし長時間露光中の数分間、静かにその場に座ってもらい撮影を行いました。
 
 夜間での長時間露光による撮影についてチャスキエルベルグ氏は次のように語っています。
 
 「長時間露光中の数分間の撮影中、長い沈黙が訪れます。…それによって人々は内省的になり自身の内面と向き合えます。さらに彼らと私との間に密接な関係性が生まれるのです。時には撮影を通じて癒しの役割を果たしていると感じることもあります。また、視覚的な観点から言えば、残された家の間仕切りや空き地の境界線などを懐中電灯などの光でなぞることで、そこだけを明るく強調できるといった表現ができるからです。」
 
 この作品展に展示される写真の多くは、モノクロの部分と独特の色調のカラーの部分が混在しており、不思議な雰囲気に包まれています。元の写真は、解像感を保つために大判のモノクロフィルム(4×5インチ)で撮影されたモノクロ写真です。そのモノクロ写真をデジタル画像として取り込み、デジタル処理で部分的に色をのせていきます。ある作品では、津波によって壊れた建物はモノクロで、そこに佇む人物などはカラーとして表現されています。それは、今を生きている命ある被写体には着色を施し、廃墟となった過去の記憶は元画像のモノクロのままにすることで、未来に向けて生きる住民たちの力強さを伝える作品になっています。自身が撮影したモノクロ写真に着色する色は、津波で流された水浸しの様々な写真に残っていた色をデジタル的に抽出して使っています。そこには氏の深い考えがありました。
 
 「津波でアルバムが流され、びしょ濡れになってしまったことには(被災前と被災後という)ストーリー性があり、私たちの感覚に訴える要素があります。歴史を感じさせる数々の写真の色を使うことで、過去と今、そして未来への架け橋になってくれるのです」と氏は語っています。
 
 チャスキエルベルグの作品を通じて、大槌の人々が未来に向かって生きる姿をぜひご覧ください。”

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上原健二
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