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京大ら、宇宙天気予報の基礎となる太陽嵐のモデリングに成功

京大ら、宇宙天気予報の基礎となる太陽嵐のモデリングに成功 

 京都大学 理学研究科附属天文台の柴田一成教授および名古屋大学太陽地球研究所の草野完也教授らの共同研究チームは、実際の太陽観測データに基づいた太陽嵐(太陽フレア、コロナ質量放出、太陽風擾乱)の数値モデリングに成功したことを発表した。同成果により、宇宙天気予報の進展と太陽嵐のメカニズムの解明が進むことが期待されることとなる。

 現在、太陽黒点活動は徐々に活発化しており、黒点の発生数は2013年ごろに次の極大を迎えると予想されている。こうした太陽活動の高まりにより、太陽表面でフレアやコロナ質量放出などの太陽嵐が起こるが、太陽風の擾乱などとなり地球まで伝わると、地球周辺の宇宙環境は磁気嵐などに襲われ、人工衛星、通信、地上電力網などに障害を引き起こす可能性が出てくる。こうした被害を未然に防ぐためには、「宇宙天気予報」の確立が不可欠となるが、太陽と宇宙空間の複雑な変化を正確に予測する方法論はまだ確立されていないのが現状であった。

 太陽観測データに基づく太陽嵐モデリングのながれ

 今回の共同研究では、この宇宙天気予報の基礎となる太陽地球間環境(太陽、太陽風、地球磁気圏・電離圏)の観測とそれに基づく数値モデリング(数値シミュレーション)研究を5年間実施、太陽フレア爆発とその結果として生じる一連の宇宙環境の乱れをほぼ再現することができるモデルを開発した。

 2006年12月13日に太陽黒点近傍で発生した太陽フレア(左)とモデリングによって再現された太陽コロナの磁力線構造。ねじれた磁力線(右図白線)の先端部分がフレアの明るい領域に対応することが分かる

 このうち、太陽嵐(太陽フレア、コロナ質量放出、太陽風擾乱)モデルは、太陽観測衛星「ひので」が観測した太陽表面磁場データに基づき、太陽フレアとそれに伴う宇宙環境の乱れを計算するモデルで、研究チームでは「地球シミュレータ」を利用して同モデルを2006年12月13日に発生した大規模フレアに適用することで、フレアとその結果として生じたコロナ質量放出および太陽風擾乱の様子を再現することに成功した。特に、太陽フレアの後に発生したプラズマとエネルギーの急速な伝播の様子を捉えることには初めて成功したという。

 太陽嵐モデリングによって再現された太陽フレアに伴って太陽表面から噴出するプラズマ(赤面)と磁力線(緑線)の変化。底面の黒い領域は太陽黒点に対応する

 なお、同研究チームでは、これらの成果が太陽嵐のメカニズムの解明へ結びつくものとするほか、数値予測を通して宇宙天気の被害を最小限に抑える技術の確立に向けた一歩となるとしている。

 2006年12月13日に発生した太陽フレアの観測とシミュレーション結果。左は太陽観測衛星「ひので」のX線望遠鏡(XRT)が捉えられた太陽フ レアのX線像。赤線で示された形状の構造が急速に矢印の方向へ伝播する様子が観測された。左はフレアモデルによる3次元シミュレーションで再現された磁力線と衝撃波面。「ひので」で観測されたX線の波動が衝撃波の伝播に対応することが分かる

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