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北大など、果物などを腐敗させる「エチレン」を低温で分解する新触媒を開発

北大など、果物などを腐敗させる「エチレン」を低温で分解する新触媒を開発 

 北海道大学(北大)と太陽化学は5月21日、果物、野菜、花の腐敗をもたらす「エチレン」を低温で分解する新触媒の開発に成功したと共同で発表した。

 成果は、北大 触媒化学研究センターの福岡淳教授(センター長)、同・原賢二准教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、5月3日(独時間)付けで「Angewandte Chemie」に掲載された。

 果物や野菜など、さまざまな植物の実からエチレンが放出される。放出されるエチレンの量は微量ではあるが、果物、野菜、花の腐敗を進める作用を持つため、長らく効率的な除去方法の開発が求められてきた。特に、冷蔵下で果物、野菜、花の鮮度を保って保管や輸送を行うという社会的な要請が大きいことから、0℃などの低温下においてもエチレンを除去できる技術の開発は重要である。

 これまでのところ、吸着材を用いる方法が提案されているが、再利用することができず、効力を失った場合には交換をしなければならない問題点があった。交換の必要がなく、繰り返し利用可能で効率の高い触媒の開発が望まれているところである。

 そこで研究チームは触媒を用いて微量エチレンの低温下での除去を行うことを考え、さまざまな種類の金属を数nmの微粒子状にして種々の材質の上に固定化する多様な触媒を開発した。そしてそれらを試した結果、数nmの細孔を有する「メソポーラスシリカ」の中に固定化した白金の微粒子が非常に高い効率でエチレンを除去する触媒として機能することを発見したというわけだ。

 なおメソポーラスシリカとは、2~50nmの規則的な形の穴を持つシリカ(二酸化ケイ素(SiO2))のことである。吸着材や触媒としての用途開発が進められている物質だ。

 この触媒を用いると、エチレンは二酸化炭素と水に酸化され、0℃の低温下で50ppmという低濃度のエチレンでも完全に除去することが可能だ。また、長時間使用で効力が減少した場合には、単純に加熱して副生する水を除くことで元の効力を回復でき、繰り返し利用できることも確認された。

 研究チームによれば、エチレン以外にも、我々の身の回りに存在する、例えば住宅資材から放出されるシックハウスの原因となる「ホルムアルデヒド」や「トルエン」といった、さまざまな悪影響をもたらす「揮発性有機化合物(VOC)」についても、今回の触媒はそれらの除去に対して応用できることが期待されるという。

 また研究チームは、今回は白金という貴金属を利用しているため、それらを用いない安価な金属による触媒を開発することも今後の展開すべき方向性であるとしている。

 画像1。白金微粒子/メソポーラスシリカ触媒

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