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千葉工大、原発対応版Quinceの新型を公開
東京電力・福島第一原子力発電所に投入されるロボットが1月30日、千葉工業大学・芝園キャンパス(千葉県習志野市)にて報道陣に公開された。このロボットは、同大学が開発している「原発対応版Quince」。昨年1号機が投入されたが、ケーブルの切断により機体を喪失。追加投入する2号機・3号機の開発を進めていた。
「原発対応版Quince」の2号機(左)と3号機(右)
これを開発した小柳栄次・fuRo副所長
「原発対応版Quince(クインス)」は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトで開発したレスキューロボット「Quince」をベースに、大幅な改良を施したもの。Quinceはもともと原子力災害は想定していなかったが、福島第一の事故を受け、機体に線量計など、様々な機器を追加で装備。その結果、重量は27kgから50kg近くにまで増え、「ほぼ新規のロボット」(古田貴之・千葉工大fuRo所長)になった。
古田貴之・千葉工大fuRo所長
原発対応版Quinceについて
1号機が初めて投入されたのは昨年6月。原子炉建屋の地下に溜まった汚染水の水位測定とサンプリングが目的だったが、階段の幅が図面より狭かったため、これは断念。しかしその後、目的を上層階の線量測定などに切り替え、10月には2号建屋の5階まで行くことに成功していた。開発責任者の小柳栄次・fuRo副所長は「作業員が内視鏡で炉内の撮影に成功したのも、我々のロボットがきめ細かな線量測定をやったから」と述べる。
1号機の活動。2号建屋と3号建屋の線量測定や写真撮影などを行った
1号機で得られた知見をフィードバックさせて、様々な改良を施した
しかしその後、1号機は帰還中に通信ケーブルが切断、制御不能になり、回収できなくなってしまった。そのため、対策を施した2号機・3号機を追加で開発。このたび、投入する準備が整った。
階段を降りる新型Quince
瓦礫の走破性能は高い
まずケーブル切断時の対応についてだが、今回は2台をペアで運用。2号機にはダストサンプラー、3号機にはレーザーレンジファインダが搭載されており、どちらが建屋に入るかはそのときのミッション次第だが、もう一方のロボットは入り口で待機。万が一、中に入ったロボットのケーブルが切れたときには、待機の1台が救出に向かう。
建屋は放射線対策のため、構造は分厚いコンクリートになっており、無線は見通しでしか通じない。そのため有線ケーブルを使っているのだが、2台のロボットには無線LANの通信機が搭載されており、相互の通信が可能。救出ロボットが近くまで来れば、ケーブルが切れていたとしても、無線LAN経由で再び制御できるようになる。
1号機の状態。冗長性がないので、このケーブルが切れてしまうと、もうどうしようもない
2~3号機の方法。救出機を向かわせれば、無線LANと有線LANを経由して通信経路が確立できる
救出運用時は、有線LANに2台分の通信負荷がかかるため、画像の解像度やフレームレートを落として、1台の通信量を通常時の20Mbpsから8~10Mbps程度にまで下げる。また、通信機を新しくして、有線LANの通信速度は1号機の15Mbpsから30Mbps程度に向上している。
2号機と3号機で、機体のほとんどの部分は共通。線量計、温度計、湿度計、光学カメラはどちらも装備しており、これらの観測については基本機能として、同じように実施できる。2号機にはダストサンプラーが搭載され、浮遊塵を収集。その線量を調べて、作業員の被曝量の低減に役立てる。3号機のレーザーレンジファインダでは、今後の作業で必要となる3D空間地図を作成する。
1号機(左)と2号機(右)の比較。かなり変わったことが分かる
3号機の装備。レーザーレンジファインダ以外は2号機と同じ
2号機のダストサンプラー。空気中の浮遊塵を収集して持ち帰ることができる
線量計は最上部の箱の中に入っている。その下の前後にはカメラが搭載
箱の中にはカメラが入っており、線量計のデータを見ることができる
通信ケーブルの出し入れは自動化された。オペレータの手間が1つ減る
ケーブルのアームにはガードがついて、ひっかかりにくくなった
前後にキャリングハンドルをセットできるようになった。運搬性が改善
細かいことだが、側面のネジが大きくなって、バッテリ交換が容易になった
操作系も一新された。コントローラに集約し、画面に触る必要がなくなった
これから東電の作業員に対して操作の訓練を行い、その後、新型Quinceは2月中旬にも福島に向けて出発する見通し。なお、千葉工大は今後も原発対応版Quinceの開発を続けるとしている。