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富士通研、CPU間の大容量データ伝送に向けてシリコン集積光送信器を開発

富士通研、CPU間の大容量データ伝送に向けてシリコン集積光送信器を開発 

 富士通研究所は、CPU間での大容量データ伝送を実現するために必要となる、光送受信器用のシリコン集積光送信器を開発したと発表した。

 近年、スーパーコンピュータ(スパコン)の演算処理速度は1年半で約2倍のペースで高速化しており、2020年頃をターゲットに、エクサフロップス級のスパコンの開発が進められている。エクサフロップス級の処理性能を実現するには、CPUから10Tbpsにおよぶデータを入出力するための大容量データ伝送技術が必要となる。しかし、従来の銅線を用いた電気インタコネクト技術では、データ容量の増大に伴い回路面積、伝送線数、消費電力などが増大するため、エクサフロップス級スパコンのデータ伝送を実現するのは困難と言われている。このため、図1に示すようにCPU間を光で接続する光インタコネクト技術の適用が検討されている。特に最近、小型で大規模集積化に適した、電気と光の融合が可能となるシリコンフォトニクス技術を用いた光送受信器の開発が注目を集めている。

 図1 シリコン集積光送受信器による大容量データ伝送技術

 光送受信器内の送信器は、光を出す光源とその光に情報を乗せる光変調器で構成される。光変調器は、低消費電力化および小型化に有利なリング共振器を用いた構成が望まれる。一方、光送受信器はCPUの近くに配置されるため、CPUからの発熱の影響などにより、光源の発振波長と光変調器内のリング共振器の波長が一致しなくなると、光に情報が乗らなくなるという問題があった。これを一致させるためには温度制御機構が必要となり、光送受信器の小型化・低消費電力化を妨げる要因となっていた。

 そこで同社では、光源の波長制御部に光変調器と同一のリング共振器を用いることで、温度制御機構なしで光源と光変調器の波長を一致させる構造を考案。また、同構造を採用した光源と光変調器をそれぞれ個別に試作し、それぞれの温度特性が一致することがこれまで実証されてきた。

 今回、新たに同構造を採用した光源と光変調器を同一シリコン上に集積した光送信器を試作し、温度制御機構なしで光源と光変調器の波長を一致させて、25~60℃の範囲で10Gbpsの光変調信号が得られることの実証が行われた。

 図2は光源と光変調器を集積して試作したシリコン光送信器。温度の変動による波長のシフトに対応するため、光源の波長制御部と光変調器には同一のリング共振器が用いられている。さらに、光源の波長と光変調器の波長が多少ずれても動作を保障するために、光変調器はリング共振器を複数並べた構成にすることで動作波長範囲を拡大している。こうした構造を採用したことで、温度制御機構が不要となり、光送信器全体の消費電力を従来に比べ約50%削減したとする。また、半導体光増幅器を除いた光送信器の長さは約2mmと小型化を実現しているほか、シリコン細線光導波路構造の最適化により、将来的には1mm以下の小型化が期待できるという。

 図2 試作した光源と光変調器を集積したシリコン光送信器

 図3は温度を変化させながら測定した10Gbpsの光変調信号の様子。温度が25~60℃まで変化させた時、スペクトルのピーク波長は長波長側に移動するが、波長の制御無しで安定した変調信号が得られていることが分かった。

 図3 25~60℃における光送信器の10Gbps高速変調動作

 この光送信器の高速化をさらに進め、波長多重技術を利用して1チップに多数集積することにより、CPUモジュールに搭載可能なサイズで、Tbps級の大容量光データ伝送が実現できるという。

 同技術を用いることで、将来のエクサフロップス級スパコンやハイエンドサーバに必要なCPU間の大容量データ伝送を低消費電力で実現することが可能となり、超高速コンピュータの実現が期待される。

 今後同社では、シリコンフォトニクス技術を用いた受信器を開発し、今回開発された送信器と集積することで小型の光送受信器を実現していく方針とするほか、波長多重技術の適用や大規模集積を進めて、10Tbps級の大容量集積光インタコネクトの開発を進めていくとコメントしている。

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