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水循環変動観測衛星「しずく」、軌道制御に成功 -「A-Train軌道」の先頭に
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月2日、日本時間2012年5月18日1時39分に種子島宇宙センターから打ち上げられた第一期水循環変動観測衛星「しずく(GCOM-W1)」(画像1)が、6月29日に実施した軌道制御の結果、NASAが主導する「A-Train(The Afternoon Constellation)軌道」衛星群の所定の位置(画像2)に投入されたことを確認したと発表した。
画像1。「しずく」のイメージイラスト。(c) JAXA
画像2。A-Train軌道で連なる日米仏の衛星たち。2015年にNASAのOCO-2が打ち上げられるまでは、「しずく」が先頭を務める。(c) NASA
A-Trainとは、高度約700km、昇交点通過地方平均太陽時13時30分付近を観測軌道とする複数の衛星でもって構成される、NASA主導の地球観測衛星のコンステレーション(衛星群)だ。
各国の衛星が協力して地球全体を観測するシステムで、軌道上でA-Trainに参加している衛星は、「Aqua(NASA)」(画像3)、「CALIPSO(NASA/仏CNES)」(画像4)、「CloudSat(NASA)」(画像5)、「Aura(NASA)」(画像6)の4台で、5台目の「しずく」は日本の衛星としては初参加となる。
なお、かつてCNESの「PARASOL」も加わっていたが、2009年にA-Train軌道から離れ、軌道が下がってきている状態だ(画像2では6番目に描かれている)。
画像3。Aqua。「しずく」が加わるまでは先頭を務めていた。(c) NASA
画像4。CALIPSO。現在は3番目の位置。(c) NASA
画像5。CloudSat。現在は4番眼の位置。(c) NASA
画像6。Aura。現在は5番目の位置。(c) NASA
地球観測では、さまざまなセンサで同時に同地点を観測することが非常に効果的だ。複数の衛星がほぼ同一軌道に隊列を成して飛行することにより、複数の衛星で地球の同一地点をほぼ同じ時刻(約10分以内)に観測することができるのである。
各衛星の位置は厳密に管理されており、ただA-Train軌道に投入すればいいわけではない。前述したように、約10分以内に同一地点を観測できるという厳密に定められたほかの衛星と近距離の位置に投入する必要がある。当然、それだけ衝突の危険性が増すわけで、高度な衛星の軌道制御技術がなければ果たせないというわけだ。
「しずく」はJAXAがこれまで培ってきた衛星ランデブー技術を活かし、A-Train軌道への投入に成功した。「しずく」の投入位置はAquaの前方であり、2015年にNASAが打ち上げる予定の「OCO-2(Orbiting Carbon Observatory-2)」(画像7)が参加するまでは、A-Trainの先頭を取る形となる。
画像7。OCO-2。2015年に打ち上げられ、「しずく」に代わって先頭になる。(c) NASA
NASA地球科学部長マイケル・フレリック氏は、「JAXAが開発された『しずく』をA-Trainのメンバーとして迎えることに、大歓迎いたします。A-Trainに参加している複数の衛星データの融合、共有により、大気科学の研究は著しく進歩しています。これに『しずく』の観測センサ『AMSR2(高性能マイクロ波放射計2)』(画像)のデータセットが加わることで、A-Trainの科学研究の可能性が大いに広がるでしょう」と、歓迎のメッセージをJAXAに送っている。
「しずく」は、この後、AMSR2を低速回転から定常観測を行う。毎分40回転まで回転数をあげ、観測性能の確認を実施する予定だ。
画像8。「しずく」搭載の観測センサ「AMSR2」(組み立て中に撮影されたもの)。(c) JAXA
なお、現在A-Trainに参加している衛星の打ち上げ日や機能・目的などについては、以下の通り。
Aqua:NASAが2002年5月4日に打ち上げた。ラテン語で水(アクア)を意味する。大気中及び海からの水蒸気、雲、降雨、海氷、土壌水分等のさまざまな地球の水循環に関する観測データを取得する衛星Aura:NASAが2004年7月15日打ち上げた。地球大気の組成、化学反応、ダイナミクスを解明するための観測データを取得する衛星。CALIPSO:NASA/CNESが2006年4月28日に打ち上げた。エアロゾルや雲が地球の気候に与える影響を解明するための観測データを取得する光学ライダー衛星。CloudSat:NASAが2006年4月28日に打ち上げた。雲が地球の気候に与える影響を解明するための観測データを取得する電波レーダ衛星。OCO-2:NASAが2015年に打ち上げを予定している大気中の二酸化炭素量を観測する衛星。