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Agilent、32GHzの超広帯域オシロスコープを開発
Agilent Technologiesの日本法人であるアジレント・テクノロジーは4月27日に記者会見を開催し、アナログ帯域幅が32GHzと極めて広いデジタル・オシロスコープ(デジタル・オシロ)「Agilent Infinium 90000X シリーズ」を開発し、2010年7月に出荷を始めると発表した。販売は4月27日より開始している。
「90000Xシリーズ」は、アナログ帯域幅が16GHz(2チャネル入力)/16GHz(4チャネル)入力の下位品種から32GHz(2チャネル入力)/16GHz(4チャネル入力)の上位品種まで、仕様の違いによって10品種を用意。
アナログ帯域幅が32GHzと極めて広いデジタル・オシロスコープ「Agilent Infinium 90000X シリーズ」
記者会見の冒頭で挨拶するアジレント・テクノロジー代表取締役社長の梅島正明氏
32GHzと広いアナログ帯域幅を実現するため、20Gサンプル/秒(Sps)の高速アナログデジタル変換器(AD変換器)ICを8個、搭載した。アナログ入力が2チャネル以下の時は4個のAD変換器をインタリーブ動作させ、80GSpsでアナログ信号を取り込んでいる。アナログ入力が3~4チャネルのときはインタリーブ動作させるAD変換器が2個に減るので、サンプリング速度が40GSpsに下がるとともに、アナログ帯域幅が16GHzとなる。
32GHzと広いアナログ帯域幅を実現するには、アナログ・フロント・エンドが重要である。アジレントはアナログ・フロント・エンドを、独自開発のInP化合物半導体ヘテロバイポーラICによるマルチチップ・モジュールで構築した。InP化合物半導体チップの開発には、10億円以上を投じたとする。
新製品の技術内容を説明する米Agilent Technologies デジタル・テスト事業部オシロスコープ部門マーケティング・マネージャのJun Chie氏
「90000Xシリーズ」のアナログデジタル変換ボード。上からアナログ・フロント・エンドのマルチチップ・モジュール、その下に20GSpsアナログデジタル変換器、メモリ・コントローラ、メモリと続く
アナログ・フロント・エンドのマルチチップ・モジュール。5個のInP化合物半導体ICによって32GHzまでのアナログ信号2チャンネルを増幅し、サンプルする
マルチチップ・モジュールのサンプル
これまで、デジタル・オシロのアナログ帯域幅はハイエンド品で16GHzくらいだったとアジレントは説明する。帯域幅を16GHz以上に拡張するには、デジタル信号処理(DSP)によって高周波領域の利得を高めたり、あるいは、周波数変換によって高周波領域の信号周波数を下げてからデジタル化するといった手法が使われていた。これらの手法には雑音フロアが増加するという弱点がある。アジレントはこれらの手法は使わず、アナログ信号をそのままデジタル信号に高速変換することで、雑音フロアの増加を防いだ。
「90000Xシリーズ」のそのほかの主な仕様は、ディスプレイが12.1型フルカラーXGA(1024×768画素)液晶タッチパネル、波形メモリが標準10Mポイント、最大2Gポイント、測定更新速度は5万回/秒、本体寸法は23cm×43cm×48cm、本体重量は20.5kg。解析ソフトウエアやコンプライアンステスト・ソフトウエアなど、測定の目的に合わせて43種類のソフトウエアを搭載できる。
価格(税別)は、最上位品種の「DSAX93204A(アナログ2チャネル32GHz、アナログ4チャネル16GHz、解析ソフトウェア搭載済み)が3,436万4,000円。最下位品種の「DSOX91604A(アナログ2チャネル16GHz、アナログ4チャネル16GHz、解析ソフトウエェなし)が1,571万4,000円。
なお、アジレント・テクノロジーはオシロスコープの開発と合わせ、30GHz帯域対応のオシロスコープ用プローブ「Agilent InfiniiMaxIII プローブ・システム」を開発し、2010年7月に出荷を始めると発表した。16GHz/20GHz/25GHz/30GHzに対応したプローブ・アンプ、ZIFプローブ・チップ、2.92mm/SMAプローブ・アダプタ、はんだ付けプローブ・ヘッドなどの製品がある。
30GHz帯域対応のオシロスコープ用プローブ「Agilent InfiniiMaxIII プローブ・システム」