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組み込みの祭典「ET2014」で見た半導体の最新製品
2014年11月19日~21日に組み込み技術と組み込み製品に関する展示会「Embedded Technology 2014(ET2014)」が神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催された。本稿では半導体の新製品や開発品などの展示品に関するトピックスをお届けする。
会場の入り口近くに設置されたET2014の看板
半導体関連の展示で最も興味を引いたのは、東芝情報システムが参考出展したプログラマブル・アナログ半導体「analogram」(アナログラム)である。「analogram」は、シリコン・ダイにあらかじめアナログ回路のコアが数多くレイアウトしてあるデバイスだ。ユーザーは「analogram」を購入後にパソコンのソフトウェアと開発ボードを通じて目的の回路構成を選択する。すなわち、アナログ回路をプログラムする。このため、従来のカスタム・アナログ半導体に比べるとはるかに低い開発コストで、目的のアナログ半導体をユーザーは入手可能になる。展示ブースの説明員によると、来年(2015年)の夏には商品化したいとする。
東芝情報システムが参考出展したプログラマブル・アナログ半導体「analogram」の説明パネル
プログラマブル・アナログ「analogram」のデモブース。液晶ディスプレイで概要をスライドショー形式で説明していた
ユーザーが実際にプログラムするのは、アナログ回路コア同士を接続する配線情報である。プログラムした配線情報は、シリコン・ダイが搭載したOTPメモリ領域に書き込まれる。このため、プログラムの回数は1回限りとなる。シリコン・ダイの内部にはアナログ回路コアのほかに、ルート・コンバータと呼ぶ領域があり、アナログ回路コアの相互接続と入出力ピンへの接続を制御している。プログラム済みのanalogramデバイスでは、電源を投入するとOTPメモリ領域から配線情報を読み出し、その情報に基づいてルート・コンバータが配線接続と入出力ピン接続を実行する。
もちろん、1種類のシリコン・ダイでアナログ応用の多種多様な要望に応えることは難しい。そこで最初のシリーズでは、3種類のシリコン・ダイを用意することを考えている。すなわち「汎用(analogram-basic)」、「アナログ信号処理用(analogram-AFE)」、「パワーMOS駆動用(analogram-driver)」である。
「汎用(analogram-basic)」のシリコンが搭載するのは、コンパレータが4個、オペアンプが4個、LDOレギュレータが1個、基準電圧源が1個、外付け抵抗による可変基準電圧源が1個、発振器が1個、などである。
「アナログ信号処理用(analogram-AFE)」のシリコンが搭載するのは、10ビットの逐次比較型A-D変換器が1個、オペアンプが4個、計装アンプが1個、LDOレギュレータが1個、基準電圧源が1個、ハーフVDD回路が1個、発振器が1個、などである。
「パワーMOS駆動用(analogram-driver)」のシリコンが内蔵するのは、ゲート・ドライバが4個、電流検出用アンプが4個、LDOレギュレータが2個(5.0Vと2.5V)、基準電圧源が1個、発振器が1個、などである。
124Gビットのアミューズメント向け大容量メモリ
ラピスセミコンダクタが出展したプログラマブル大容量ROM「P3ROM」も興味深かった。P3ROMは、アミューズメント機器(いわゆるパチンコ機器やパチスロ機器などの娯楽機器)に向けて開発した特定用途向けのプログラマブルROMである。ET2014では新製品として、記憶容量を大幅に拡大した62Gビット品「MR22EG3110B」と124Gビット品「MR22EG4110B」を紹介していた。アミューズメント機器向けの次期画像処理LSIである「AG5」(アクセル製)あるいは「YGV637」(ヤマハ製)と組み合わせて使用することを想定している。
P3ROMはROMでありながら、電気的な書き込みと消去が可能である。これまでのP3ROM製品は最大容量が16Gビットだった。アミューズメント機器の液晶ディスプレイに表示する動画の記憶容量は、まずます増加する傾向にある。例えば特殊な条件を満たしたときにだけ出現する「プレミアム物」あるいは「レア物」と呼ばれる動画を格納するようになったことが、記憶容量を押し上げているという。
ラピスセミコンダクタが出展したプログラマブルROM「P3ROM」の説明パネル
プログラマブルROM「P3ROM」と画像処理LSIを接続したボードのデモ。右上の液晶ディスプレイには「パチスロ」を模擬した画面が表示されている
124Gビット品「MR22EG4110B」の語構成は×64ビット、電源電圧は3.3V、動作温度範囲は0℃~70℃である。パッケージは140端子のFLGA。消費電流は動作時が500mA、待機時が120mAとかなり高い。アクセス時間はランダム・アクセス時間が230μs、ページ・サイクル時間が25nsである。ベースとなるシリコンがNANDフラッシュメモリ技術であるため、ランダム・アクセス時間が長い。
62Gビット品「MR22EG3110B」の語構成は×64ビット、電源電圧は3.3V、動作温度範囲は0℃~70℃である。パッケージは140端子のFLGA。消費電流は動作時が250mA、待機時が60mA、アクセス時間はランダム・アクセス時間が230μs、ページ・サイクル時間が40nsとなっている。