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首都大など、ビスマス/硫黄を主成分とした層状超伝導物質系を発見

首都大など、ビスマス/硫黄を主成分とした層状超伝導物質系を発見 

 首都大学東京(首都大)、物質・材料研究機構(NIMS)、産業技術総合研究所(産総研)、電気通信大学(電通大)で構成される研究チームは、ビスマス(Bi)と硫黄(S)を主成分とした新しい層状超伝導物質系(Bi4O4S3およびLaO1-xFxBiS2)を発見したと発表した。

 同成果は首都大 電気電子工学専攻の水口佳一 助教、三浦大介 准教授、NIMSナノフロンティア材料グループの高野義彦グループリーダー、産総研 計測フロンティア研究部門 ナノ移動解析研究グループの後藤義人 研究グループ長、藤久裕司 主任研究員、電通大 量子・先進理工学専攻の黒木和彦 教授らによるもので、詳細は11月に日本物理学会刊行の英文誌「Journal of the Physical Society of Japan」オンライン版が掲載される予定のほか、12月3~5日にかけて行われる「第25回 国際超電導シンポジウム(ISS2012)」でも発表される予定。

 層状化合物は、2次元的な層状(シート状)の結晶構造を持つ物質で、異なる種類の層を積層させることで、さまざまな物質をデザインすることが可能だ。また、2次元的な結晶構造は低次元的な電子状態を生じさせるため、高温超伝導などの特異な量子現象の舞台として研究が行われてきている。

 現在、最も高い超伝導転移温度(Tc)を持つ銅酸化物高温超伝導物質系では、銅と酸素が作るCuO2面が共通の層状構造として存在し、高温超伝導発現の鍵となった。同様に、2008年に発見された鉄系超伝導物質系では鉄とヒ素が結合したFe2As2層が高温超伝導発現の鍵となっており、これらの高温超伝導体は「超伝導状態が発現する層」と「ブロック層」が積層した結晶構造を持つことが特長となっている。

 今回の研究チームの成果は、ビスマス(Bi)と硫黄(S)を主成分とした新しい層状超伝導物質系(Bi4O4S3およびLaO1-xFxBiS2)を発見したというもの。粉末X線回折実験とリートベルト解析の結果により、共通の特長として、BiとSが2次元的に結合したBiS2層(超伝導状態が発現する層)とブロック層が交互に積層した結晶構造を持つことが確認された。

 Bi4O4S3およびLaO1-xFxBiS2の結晶構造。実際のBi4O4S3結晶構造はSO4サイトが50%欠損していると予想される

 今回発見された超伝導物質系は、Bi3+の絶縁体(母相)に電子キャリアが入ることにより金属的な伝導を示すようになり、低温で超伝導転移を示す。LaOBiS2(母相)は絶縁体だが、OサイトのF部分置換により電子キャリアがBiS2層にドープされ、超伝導状態が発現。Bi4O4S3系ではSO4イオンの部分欠損により、電子キャリアがBiS2層にドープされており、バンド計算の結果、BiS2層のBi-6p軌道の電子が超伝導発現に寄与していることが示された。また超伝導転移温度は、Bi4O4S3が約5K、LaO0.5F0.5BiS2が約10.6Kであり、ブロック層の構造を変化させることで上昇するという。

 LaO0.5F0.5BiS2の電気抵抗率の温度依存性(磁場中:0T-5T)。0Tの条件においては10.6K以下で超伝導状態発現に伴う電気抵抗率の減少が観測され、約8Kでゼロ抵抗状態が実現されている

 研究チームでは今回の成果を受けて、今後、BiS2超伝導層を基本とした新超伝導物質の開拓が進み、さらに高い超伝導転移温度を持つ物質が発見されることが期待されるとするほか、BiS2層における超伝導発現メカニズムを解明することで、今後の超伝導物質探索に新たな指針を与えるとともに、高温超伝導機構のさらなる解明が期待されるとコメントしている。

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