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JST、認知発達研究向け普及型ヒト型ロボット・プラットフォームを開発
科学技術振興機構(JST)は、JST目的基礎研究事業の一環として、大阪大学大学院工学研究科の浅田稔教授らが、人間とロボットの認知発達研究のための普及型ヒト型ロボット・プラットフォームとして、赤ちゃんロボット「M3-neony(エムスリー・ネオニー)」と、集団コミュニケーションロボット「M3-synchy(エムスリー・シンキー)」を開発したことを発表した。
上段左下段右に向かって、自立するM3-neonyの正面像、四つ這いするM3-neony、M3-neony同士のコミュニケーション場面、M3-synchyの正面像、複数のM3-synchy(奥2体はプロトタイプ)によるコミュニケーション場面(出所:JST)
同プロジェクトは、ロボットを通じて人間の認知発達のメカニズムを理解する「認知発達ロボティクス」と呼ばれる切り口での研究が行われている。これは、ロボット工学の「作ることによって知る」方法と発達心理学、認知科学、脳科学など人間科学の「観察することによって知る」方法とを融合した認知発達研究で、人がある学習をする時のメカニズムを知りたい時、その学習についての仮説を立て、それに基づく学習プログラムを設計しロボットを動かし、そのロボットが学習・発達していく様子を調べることで、先の仮説を検証するとともに、認知発達のメカニズムをより深く理解するが可能になる。結果として、その理解が、自ら適応・学習・発達し、複雑な人間社会において人と共存できるロボットの構築に役立つものへと結び付けられていくという。
今回発表された2体のロボットは、ロボットに関する専門知識が少ない研究者でも容易に扱える普及型研究用プラットフォームの実現を目的として開発されたもの。
M3-neonyは、赤ちゃんの運動学習や認知発達を研究するためのプラットフォームで、人間の新生児と同程度の大きさとなる身長約50cm、重量は約3.5kgで、全身に22個のモータ、頭部に2個のCMOSカメラ(30万画素)と2個のマイクロフォン、胴体に1個の姿勢センサ(2軸ジャイロと3軸加速度)、全身に90個の触覚センサを有し、それらを制御可能なコンピュータを内蔵した自立型のヒト型ロボットとなっている。
機体は、2007年と2008年のロボカップ世界大会のヒューマノイドリーグで優勝した機体をベースにしており、最大トルク41kgf・cm、回転速度0.14s/60°のモータにより乳幼児の複雑な動きを模倣させることが可能だ。また、乳幼児の知覚をなぞらえた各種センサを搭載することで、顔や物体、音声、接触などを認識させることが可能となっている。そのため、寝返りや四つ這いなどの乳幼児のような振る舞いが実現され、身体バブリングによる運動学習や、身体接触を伴う養育者の介助に基づく学習など、さまざまな認知発達研究が可能となるという。
一方のM3-synchyは、複数のロボットと人間の間の集団コミュニケーションを机上などの身近な環境で実現するためのプラットフォーム。身長は約30cmで重量は約2.3kgの車輪移動型ロボットで、全身17個のモータ、センサとして頭部に1個の広角レンズ付きCCDカメラ(33万画素、水平画角約120度)と2個のマイクロフォン、出力装置として全身に15個のLEDと胴体にスピーカーを備えている。
身振りや表情(視線と口の動き)、LEDによる頬の紅潮、スピーカーによる発話のほか、カメラとマイクロフォンによる顔や物体認識、音声認識などが可能で、これまでの卓上用の小型ロボットと比較して、非言語コミュニケーションに重要な自由度を豊富に有している(眼球に3自由度、首に3自由度、腰に2自由度)ことが特長となっている。そのため、さまざまな言語的・非言語的な様式によるコミュニケーション、特にアイコンタクトなどの視線行動による集団コミュニケーションを実現することができ、社会的コミュニケーション能力の学習・発達などの研究を行うことが可能となるという。
2体のロボットはいずれも、制御装置として教材用のモータ制御マイコンを採用しているため、開発容易性を備えた研究用プラットフォームとなっている。また、汎用のロボット用サーボモータを用いることで、高いメンテナンス性も兼ね備えている。
ロボットの動作は別のWindowsベースのPC上のモーションエディタによって作成することができ、モーションデータをモータ制御マイコンに読み込ませることで動作を実行させることができる。また、M3-neonyでは、内蔵コンピュータもしくは外部のコンピュータからモータ制御マイコンにアクセスすることにより、個々のモータを自由に制御することも可能だ。加えて、ロボット専用OSは使用しておらず、デバイスのアクセスに特殊なドライバなども必要としないため、ユーザーが自由な環境でモータ制御およびセンサ情報処理プログラムを開発することができ、結果として研究者それぞれの研究目的に合わせた学習プログラムの設計が可能となっている。
なお、JSTでは、今回開発した2体のロボットを使った研究を進めることで、社会的コミュニケーションを通した人間の学習・発達に関するより深い理解とともに、それに基づくコミュニケーション能力が発達するロボットの実現を目指すとするほか、2体ともに各種研究機関向けに普及することを予定しており、今後、さまざまな認知発達研究において使用されることを期待するとしている。