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稲垣吾郎と「ヒロくん」の関係性を世にも奇妙な物語に演出するテレビの罪

稲垣吾郎と「ヒロくん」の関係性を世にも奇妙な物語に演出するテレビの罪

 

 3月23日放送のバラエティ番組『中居正広のISORO』(フジテレビ系)で、SMAP・稲垣吾郎(41)が、“謎の同居人ヒロくん”を公開した。“ヒロくん”とは、稲垣の親友である年上男性だ。

 ヒロくんの存在は、2009年放送のクリスマス恒例バラエティ『さんま&SMAP!美女と野獣のクリスマスSP 』(日本テレビ系)で稲垣が「50代の男性が週に2回ほど自宅を訪れる」「ヒロくん、ゴロチと呼び合う関係である」と話したことで広まった。昨年末の同番組で稲垣は再度ヒロくんのことを話し、「(稲垣の自宅には)ヒロくん専用の部屋、バスローブ、ヘアトニックがある」「同じ電動歯ブラシを毛先だけ変えて使用する」「精神は恋人のようなもの」といった事実がネット上で爆発的に話題となった。ヒロくんは妻子持ちであるが、稲垣の金銭面も彼が管理してくれているとのことだった。出会いのきっかけは、麻布十番のワインバーで、容姿がジャッキー・チェン似であることから“銀座のジャッキー”とあだ名されているという。

 今年1月放送の『すべらない話』(フジテレビ系)にゲスト出演した際も、ヒロくんのエピソードを披露した稲垣。今回は満を持してヒロくんと過ごすプライベートな休日を公開するに至ったわけである。

◎男好きの男は変な生きもの?

 『中居正広のISORO』は、タイトル通り、MCをSMAPの中居正広(42)が務め、アシスタントとして高島彩(36)が出演、稲垣はゲストとして参加。3人がスタジオで、稲垣&ヒロくんの休日を撮影したVTRを見ながらトークする場面がメインだった。最終的には、ヒロくんご本人とその奥様(元タカラジェンヌ)も登場する。

 VTRでヒロくんはサングラス状のモザイクをかけた状態。ロマンスグレーの豊かな髪を持ち、服装や佇まいだけでも清潔感ある裕福な50代男性であることがわかる。ヒロくんは東京都内の広い庭園を有する400坪の邸宅に住んでいる。プールつきの豪邸に稲垣と撮影スタッフがお邪魔し、自家製の燻製でワインを嗜んだり、2人が頻繁に訪れるという長野の土地へ同行したり。稲垣がどのような休日を過ごしているのか、SMAPメンバーの中居も全く知らなかったそうだが、VTRを見る限りでは、ヒロくんとイチゴ狩りをしたり、長野の友人たちと談笑し野菜の収穫をしたり、絶景スポットで沈む夕日に感動したりと、非常に充実したプライベートを過ごしている。

 ヒロくんは週に2回ほど稲垣の自宅マンションに泊まりに来るそうで、稲垣とヒロくんが同じベッドで寝たこともあるし、一緒に風呂に入ることもある。そう聞くと中居は「信じられない!!」という反応を示し、高島も苦笑を浮かべていた。だが、家庭用のさほど広くないサイズの浴槽ならば成人男性2名で入るのは窮屈で違和感が強いかもしれないが、温泉や銭湯に同性の友人同士で入浴すること自体は一般的だろう。稲垣はそういう意味で「お風呂も全然一緒に入れる」と言っているようなのだが、番組の演出意図は一貫して「オジサン同士の異常な愛情」を見せようとしている。

 番組ではやたらと稲垣・ヒロくんの関係を「アヤしい」ように見せる演出に凝っていた。冒頭では「稲垣と50代男性との同性愛疑惑」などと紹介していた。数年前、稲垣が引っ越すことになり新居を決める際に、ヒロくんと一緒に物件探しをしたり、必要な家具や日用品も2人で買いに行ったというくだりでは、「こうしてはじまった2人の同棲生活」「男同士の妖しい関係」と、テロップで煽る。

 ヒロくんは「妻子がいるのに40代の美男子と遊ぶ変な50代男」で、稲垣を「モテるはずなのに結婚もせず中年男性に心酔している変な男」。わざわざ2人を“変な人”枠に当てはめようとし、ごく自然な友人関係を世にも奇妙な物語に仕立てあげているのである。

 彼らは自らが同性愛者か否かを明確にしていないし、性行為の有無についてなど勿論話さない。言う必要はないのだ。しかし彼らが何も言わずとも、これでは番組が「男を好きな男なんて、おかしいよね」との偏見・差別をまき散らしているのと同じである。中居の態度も完全に「ゲイフォビア」の代表的なノリだ。スタッフにポンカンを剥いてあげた稲垣に対しての「手ェ洗ってんのか?」と言うツッコミに関しては、潔癖症を自称する中居らしくて良かったが。

◎セックスにこだわる人たち

 稲垣とヒロくんを撮影したVTR自体は面白い内容だった。稲垣はヒロくんのことを敬愛しており、「大好き」という気持ちを自然に口にするのだが、それ自体をも「そんなこと言うのおかしいよ!」と否定する中居たちに、「大好きな人には大好きって言ったほうがいいじゃない、言えるとすごく気持ちいい。絆ってそういうことでしょ」とさも当たり前のように語れる稲垣に恐れ入った。偏見まみれのマチズモ世界で、彼は、自分を見失わず真っ当に、そして実にしなやかに生きているのだと思った。

 少し年の離れた友人と親密な関係を築く。それ自体は何らおかしなことではない。それなのに、「恋愛」「家族」以外の関係性で親密な者同士を見ると、途端に動揺してしまうのはなぜだろう。大人間では、ビジネスでも血縁でもなく性交渉ナシの関係が一切成立しないというのだろうか? あるいは、性的魅力に惹かれ合う形でしか大人は人間関係を築けないということだろうか。よく考えるまでもなく、親密さを恋愛感情の表出にのみ結びつけることはおかしいと気付くだろう。

 ヒロくんは裕福な家庭に生まれ育ったお坊ちゃまで、教養があって博識で、美しいものや美味しいものにこだわって、良い体験をするために時間もお金も惜しまない。傍から見てもカッコいいおじさんである。稲垣が彼と時間を共にするようになって、豊かな日々を享受していることを祝福できる。この2人の関係を、同性愛だと揶揄するのはそれこそ自らの人間関係の貧困を露呈するようなものではないだろうか。
(清水美早紀)

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