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【女子のお悩み相談室】「モテテクって本当に効果があるの?」柴崎竜人がズバッと解決!
乙女たるもの、悩みは尽きません。
そんな乙女から寄せられたお悩みを、現在、小説家・脚本家などとしてマルチな才能を発揮中の柴崎竜人さんを先生にお迎えし、委員長のメガ美、劣等生のつん子、などなど、雑誌『Cheese!』編集部の女子たちと語らいながら解決していきます!
第1回は「モテテクって本当に効果があるの?」という疑問です。
柴崎竜人(以下、柴崎):そもそもモテテクって、例えばどんな?
つん子:ネットなんかでよく見るのは、「合コンで意中の男性の膝にそっと手を置く」とかですかね。
ふじっこ:太ももに手を置くのは「今夜、お持ち帰りされたい!」っていうときに効果的らしいですよ(笑)。
柴崎:そういうのって、テクニックというよりはサインなんだよね。女の子にそれをされた男が「あ、持ち帰っていいんだ」と思うっていう、ひとつの言語。
例えば、僕たちが知らない言語で「君が好き」って言われても理解できないのと同じだから、ひとつの言語として知っておくのは大事だと思うよ。太ももに手を置いたら、「私、今夜あなたにお持ち帰りされてもいいよ」って言ってるのと一緒ってことで(笑)。
ガミコ:なるほど。言葉で言うか、ボディランゲージで伝えるかの違いであって、モテてるわけじゃなくて、自分から誘っただけなんだね。
つん子:自分が好きな男の人に、好きになってもらえるテクニックってないんですかね……?
柴崎:もちろんある。でも、まずは「モテテク」があるのかを考える前に、“モテ”っていうのが何なのかを考えなくちゃいけない。
“モテる”っていうのは、好きでもない不特定多数の男に好意を寄せられるってことなんだ。好きな男から好意を寄せられることは“両想い”っていうんだよ。その線引きをしっかりしないといけない。必要なテクニックが変わるからね。
つん子:好きな相手を振り向かせる方法が知りたいんです!
柴崎:そういう悩みには、「自分の“好き”を安売りしろ」って僕はよく言ってる。どんどん「好き!」って言えって。そもそも自分の“好き”を高値で売ろうとする女に、ろくなやつはいない。
ふじっこ:なるほど。確かに、「好き」って言われると、自分も相手のことをちょっとは好きになりますもんね。
柴崎:なんなら、大して好きじゃなくても言っていい(笑)。そして、もし相手が本気にして「付き合って」って言ってきたら、「考えさせて」って答えればいいんだよ。好きなのと付き合うのは違うから(笑)。
ガミコ:女の子が「モテたい!」って思う最大の理由って、たぶん好きな人がそもそもいないと思ってるってことなんだよね。自分からアタックするほど好きな人がいないから、向こうから来てくれればいいのにな~って。「好き好き!」言いまくって、寄ってきた中から選べばいいってことかっ。
柴崎:恋愛のはじまりって、自分が思ってる以上の自分というか、自分でも知らなかった自分の一面に気付かれることだと思うんだ。「あなたのこんなところも、あんなところも、実はとっても素敵なのよ!」って相手からぐいぐい押してこられると、自分の恋愛スイッチがパチンと入るというか。
男は特に年をとるにつれて乙女化するんだよ。それこそ少女まんがよろしく「ありのままの私を好きになってほしい!」的な。だからもし年上の男をオトしたいなら、そうやって相手の恋愛スイッチを押しまくるのが有効だと思うよ。
年上の男を口説くなら、少女をオトすように口説くべし!
ガミコ:でも、柴崎さんは普段からすごく押されるんじゃないの?
柴崎:そんなことないです。僕は性格が悪いのが、すぐにばれるから(笑)。
編集部全員:(爆笑) たとえば?
柴崎:そうだなぁ。男は年をとると乙女化するけど、女性は年をとると、男子高校生化していくと思うんだよね。男子高校生ってやたらプライドが高かったり、根拠のない自信があるでしょ。それと同じで、女性はどんどん、自己評価が実際より高くなってく。だから僕はプライドが高すぎてこじらせちゃってる女友達とかにはたまに言っちゃう。「まずは結婚相談所に行きなよ。そこで提示される男たちの年収が、きみの値段だよ」って。
編集部全員:きびしい~~~~!!!
柴崎:一方で、ガンガン押してくる人、“好き”を安売りしてくれる女性って、自己評価は高くないでしょ。自分のスペックじゃ「ちょっとやそっとの頑張りじゃ彼を落とせない」と思ってるわけだから。そうしたら彼も「こんな僕に、ここまで熱心にアプローチしてくれる女性なんて、もうこんりんざい現れないかも!」って思うようになる。だから乙女をこじらしてるオッサンにはキュンとくるんだよ。
つん子:なるほど……!おじさんにも効くモテテクは、実際に有るんですね。
柴崎:もちろん。でも、「お前にはモテる覚悟があるのか」とも思う。
“モテ”の頂点、モテることを商売にしてるのってアイドルだけど、やっぱり彼女たちはプライベートも規制されるし、自分の時間の大半をモテるためのコミュニケーションコストとして費やしてる。そのうえ自分の心も切り売りすることになるでしょ。モテを商売にしていない一般の人が、テクニックを実践してモテるようになっても、実際、思っているような充実はないと思うな。
ふじっこ:私、実は昔、そんなつもりなかったのにすごく押されたから付き合いはじめて、そしたらいつの間にか相手のこと、すごく好きになっちゃってて。彼にフられた後も、なんとか元に戻れないかって必死でした。好きすぎて、ニューヨークまで追いかけていったり(笑)。
柴崎:それはすごいな(笑)。たしかに相手にそれだけの熱意を持たせるように仕向けることも、テクニックでできると思う。ただ、すごく面倒だしコストも時間もかかる。だから、彼がふじっこさんにそれだけのコストをかけたっていうことが、すでに情熱の証だよね。
周囲みんなを虜にしたり、特定の相手に熱烈に愛されたりしたいと思うのはいいけど、それだけのコストを払う腹はあるのかってこと。
ガミコ:なるほど……確かに、そうやって考えると効率悪い……。じゃあ、話は変わって、「意外に知られていないけど、これは使えるぞ!」っていうモテテクはある?
柴崎:……モテテクとはちょっと違うけど、「魔法の言葉」がある。女の子が窮地に陥ったときに使える魔法の言葉、「わかんない」だよ。男はそれを言われると、コミュニケーションが断絶されてそれ以上追求できなくなるんだよ。
つん子:自分の浮気がバレた! とかでも「わかんない」でいいんですか!?
柴崎:うん。男としてはこっちがボール持ってるのに、相手にミットを外されたら、そのボールをどうしていいかわかんなくなるんだ。
つん子:へぇ、女の子のほうがどう悪く思えても、「わかんない」って言われたら、「俺が悪かったのかな……」くらいまで考えるってことですか?
柴崎:うん、考えるね。
ガミコ:それ、もっと早く知りたかったなぁ(笑)。ちゃんと説明しなくていいんだって。
ふじっこ:いや、とっさにそういうことを言えちゃう女子っていうのは、そのテクニックを知ってても知らなくてももとからできる子なんですよ(笑)。
柴崎:あとはね、ポジティブな行動にネガティブな言葉をあわせるの。逆でもいいよ。僕は“イヤキス”って呼んでるんだけど、「好き」って言いながらキスするより、「ダメ」って言いながらキスするほうが、背徳感が上がるっていうか(笑)。
つん子:へぇ……「もっとしてやろう」って思うわけですか?
柴崎:というよりは……恋愛の醍醐味って、タブーをおかすことにあると思うんだよね。だから、タブーのないところにタブーを作ってあげるんだよ。そうすると、その行為に背徳感が出て、乗り超えることに悦びが生まれる。
だからね、テーマに戻るけど、こういうテクニックはあるにはあるんだけどさ。仕事とか生活とか、ほかにも考えるべきことはたくさんあるのに、そんなものにばっかりコストを払ってていいのかな、とも思うよ。高度な男女の腹の探り合いとか、はたから見ていて痛々しいくらい血みどろの戦いになるし(笑)。そういうドツボにはまらないために、「こういうテクニックがあるんだ」って覚えておく程度でいいんじゃないかな。
ガミコ:でも、好きって言われても絶対嬉しくない相手もいるよね。
柴崎:でしょう? 生理的に嫌だって人は誰にとってもいる。でも、「絶対無理!」って人が自分にもいるんだから、相手にもいるのは当然だってことも理解しないと。自分がもし、「こういう人は絶対ダメだ」と思ってしまう要素をたくさん持っているなら、相手にも同じだけの可能性を考えてあげないとフェアじゃないよね。
さーや:自分には甘くなりがちですもんねぇ……。
柴崎:だから、モテテクっていうのを身につけるよりも、自分を磨いた方が早い。ダイエットして体型を変えるとか、身につけるファッションを変えるとかね。内面を変えるよりは、容姿を変えるほうがずっと楽だから。たとえばフランス語を習得するより、体重を5キロ落とすほうが楽じゃない? それに、容姿をよくするのはのちのち、何にでも効果があるからね。時間の使い方として、そのほうがずっとコスパがいいよ。
ガミコ:そうなんだけれども、女子は「このままの自分を愛して!」というのが鉄板ネタですからね。
柴崎:それなら、自分もそういう相手をちゃんと愛しなさい。ありのままの相手を愛してあげるんだ。少なくとも、自分が「どうせ私はみんなよりスタイルが悪いんだ、不細工なんだ……」と思うんなら、同じような男性を軽蔑しちゃダメなんだよ。彼は自分と同じ痛みも知ってるはずだ。そしてもし、自分でそれが嫌ならコストを払う、賭け金を払うんだ。掛け金を払わないと配当は手に入らない。
つん子:女子って、そうやって自分を変えようっていう気がそもそもないから、小手先のモテテクってものに走るんですかねぇ。
柴崎:でも実際は、モテテクを実践するほうが遥かに大変だよ。相手がいる分、精神的な負担もあるしね。ダイエットするほうがずっと楽!
【結論】小手先のテクニックに目を眩まされず、自分を磨くべし!
いかがでしたか?
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柴崎竜人
(株)アミューズ所属。「シャンペイン・キャデラック」で三田文学新人賞を受賞し、小説家デビュー。映画「未来予想図」で脚本家としてもデビュー。代表作に「あした世界が(小学館)」、「三軒茶屋星座館(講談社)」ほか多数。最新作「あなたの明かりが消えること(小学館)」大好評発売中。
(『Cheese!』2015年5月号)