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密室はいかに裁かれるのか(8)~なぜ、彼女は逃げなかったのか~
なぜ、大声をあげて逃げなかったのか
- 密室で逃げなかった理由の判断は一審と二審で割れた(写真はイメージです)
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裁判の最大の争点は、その時に「なぜ、彼女は大声をあげなかったのか、逃げなかったのか」ということでした。そこで、裁判での彼女の証言を見ておくと、次のように言っています。
―大声で助けを呼ぼうとはしなかったんですか。
―そこは無理なんです。外が広い通りで車の通行量が多いんでかなりうるさいし、あまり人通りもないし、2階だったんですよね。ドアを開けて外に出て、階段を下りて人に助けを求めにいかないと、大声をあげたところでだれも聞きつけてくれないんです。
―逃げようと思わなかったんですか。
―だから逃げるにしても、本当に逃げようと思って抵抗して逃げられたかどうか分からないし、下手に騒いでよけい彼を煽(あお)り立てるようなことになっても困るし、それにそこでもし騒いで外部の人が入ってきたら事が公になっちゃうんですよね。逃げられたかもしれないけど、そこで逃げたりしたらそこで終わっちゃうんですよ。
わたし会社にいたかったんです。そこにいるためにはとにかくこのまま切り抜けなきゃいけないと思って。
―公になると自分が会社にいられなくなると思ったんですか。
―ええ、今ここでこのままわたしが黙っていれば、だれにも知られていないわけですから、何とかする方法があるかもしれないと思って。
不自然であり、到底信じられない―横浜地裁
こうした彼女の取った行動が、自然か不自然かをめぐって裁判所の判断は分かれました。原審である横浜地方裁判所は、「彼女は彼に抵抗して逃げなかった理由として、本人尋問の中で『本当に逃げようと思って抵抗しても、逃げられたかどうか分からないし、下手に騒いでよけい部長を煽り立てるようなことになっても困る』ということと、彼に対する尊敬の気持ち及び彼に対する恩があったために、彼を突き飛ばしたりは出来なかった旨を供述しているが、彼女が主張する彼の行為は、彼女の性的自由を著しく侵害する強制わいせつ行為にも比類すべきものであって、このような攻撃を受けた場合、通常であれば冷静な思考及び対応を取ることはほとんど不可能であると考えられるところ、彼女が抵抗して逃げようとしなかったとしてあげる理由は、あまりに冷静・沈着な思考及び対応に基づくものであり、納得しがたい」と判断しました。
つまり、そうした緊急事態に直面した場合に女性は大声をあげて逃げるのが当然であって、そこでいろいろと彼女が説明している状況はあまりにも冷静な判断であり、不自然であることから到底信じられないと言っています。
不自然、不合理ではない―東京高裁
それに対して、控訴審の東京高等裁判所は同じように、彼女の主張に触れた上で「これらの供述は、上司である彼の突然の行為によって混乱している彼女の内心が具体的にのべられたものであって、そのような状況下での被害者たる女性の思考として不自然または不合理なものと断定すべきではない」としています。
つまり、東京高裁は横浜地裁がこうした場合に女性がとるべきである「大声をあげて逃げる」という行為について、「強姦のような重大な性的人権侵害を受けた被害者であっても、すべての者が逃げ出そうとしたり悲鳴をあげるという態様の身体的抵抗をするとは限らないこと、強制わいせつ行為の被害者についても程度の差こそあれ同様に考えることができる」としました。
果たして、同じ事実について横浜地裁と東京高裁の判断の差を生み出したポイントはどこにあったのでしょうか。
(次回は4月28日掲載予定です)
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