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「一家言あり」社外役員続々

 「一家言あり」社外役員続々

 

経営に第三者の目 両立のモデルにも

 

  • カゴメ社員と商品について話す、社外取締役でマルトモ社長の明関さん(左)(東京都中央区で)=池谷美帆撮影
  •   社外から女性役員を迎える企業が増えている。第三者としての知見に加え、女性ならではの視点を企業経営に生かすのが狙いだ。

      人材を探しやすいように、国などが候補者の情報をデータベース化する動きも広がってきた。

      「商品を買う立場からすると不便な面もある。すぐ飲み終わるし、ゴミも増える」

      食品大手のカゴメ(東京)取締役会で、社外取締役の明関美良(みょうせきみよ)さん(35)の声が響いた。同社のスリム型ペットボトル入り野菜飲料の売り上げ状況を、担当者が説明していた時のことだ。

      同社が販売に力を入れている商品だが、従来品より約200cc減った点などを「不便」と指摘した。「走り始めた事業に、社内の人は疑問を投げかけにくい。社外の人間だからこそ、感じたことは積極的に発言します」と力を込める。

      明関さんは、かつお節製造販売会社、マルトモ(愛媛)社長。同じ食品会社のトップとしての知見を買われ、昨年6月、カゴメ初の女性取締役に迎えられた。

      カゴメの事業規模はマルトモより大きく、就任に戸惑いもあったが、「海外展開や投資に関する議題などで知らない言葉は復習し、カゴメの発展を自分なりに考えてきた」と振り返る。

      仕事と家庭を両立させる女性の姿をカゴメの経営陣に印象づける役割も担った。社外取締役就任は第4子の妊娠、出産と重なったが、夫の協力などを得て毎月の役員会や国内外の視察は全てこなした。

      近くで働きぶりを見てきたカゴメ経営企画室の中川理子さんは、「社長であり主婦である明関さんの視点が加わり、議論が活性化した。出産直後からバリバリ働く姿も社内にはなく、刺激を受けた」と話す。

      東京海上日動火災保険(東京)は6月から、法政大教授(女性労働論)の武石恵美子さんを社外監査役に迎えることを決めた。

      「10年かけて女性の職域を広げ、両立制度を充実させてきた。女性の登用もある程度進んだ。さらに女性の活躍推進を図るために力を借りたい」と同社。

      武石さんは2月、キユーピーの社外監査役にも就任した。「他にも、私の周囲で社外役員をオファーされた女性がいる。時代の流れを感じる」と感慨深げだ。

    登用 二つの理由

     

      女性の社外役員が求められる理由は二つある。一つは、企業経営の健全化の観点から、独立性の高い社外取締役の登用を求める動きだ。企業に社外取締役の導入を促す改正会社法が5月に施行される。また、上場企業の行動指針として6月から適用される「コーポレートガバナンス・コード」でも、社外取締役を2人以上選任するよう求める。

      もう一つは、経営陣の多様性の重視。安倍首相が上場企業に女性役員を最低1人は置くよう、経済団体に要請するなど、女性役員を求める声は大きい。ただ、役員候補者となる女性が社内におらず、内部昇格は難しいと考える企業は多い。

      こうした点から、「女性を社外役員にすれば一石二鳥と考え、この1、2年、急速に需要が高まった」と、三菱UFJ信託銀行(東京)法人コンサルティング部の中川雅博さんは説明する。

      同銀行が東証の上場企業を調査したところ、女性の社外取締役がいるのは2014年6月末の142社から、11月末時点で191社に増えた。

      武石さんは「今後、様々な分野で活躍してきた女性が社外役員になる可能性がある」と指摘。「社外役員の活躍は、その企業の若い女性たちの働きやすさにもつながるはず」と期待する。(板東玲子)

    候補者をデータベース化

     女性の社外役員に対するニーズは高まっているが、各企業が適任者を探すのは一苦労だ。これまでは紹介や口コミなどが主で、一部の企業役員経験者などに依頼が集中しがちだった。
      そこで内閣府は3月、インターネット上に「はばたく女性人材バンク」を開設。国の審議会委員などを経験した識者や経営者、弁護士など女性178人の情報を、本人の承諾を得てデータベース化し、企業が自由に検索できるようにした。
      また、東京や横浜、大阪、福岡の弁護士会も、所属する女性弁護士の候補者名簿を作成。日本公認会計士協会もリストを作り、紹介制度を始めている。

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