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東京五輪2020年に向けて、日本国内の“ハラルビジネス”は加速するか
[写真]「ザ・マンハッタンカフェ・フィッシュマーケット」で行われたハラル認証式の様子
3月23日、マレーシア、インドネシア、タイ、オマーンなど7か国に59店舗を展開するシーフードレストラン「ザ・マンハッタンカフェ・フィッシュマーケット」が東京・池袋にオープンしました。このレストランは、一見するとアメリカンスタイルのリーズナブルな料理を提供するカジュアルな雰囲気のお店でありながら、その大きな特徴はイスラム教徒の生活規律に準じた“ハラル”のレストランチェーンとしてアジア最大級であるということ。23日に開催されたオープン記念式典には駐日マレーシア大使が参列したほか、国内ハラル認証機関によるハラル認証式が行われました。
“ハラル”という言葉はまだ日本国内で馴染みのある言葉とは言えませんが、実はこの“ハラル”がアジアを中心とした外国人観光客の誘致を進める日本にとって、重要なキーワードであることをご存知でしょうか。今回は、“ハラル”とは何か、そして“ハラル”が日本の観光産業どのようなインパクトがあるのかについて解説します。
ハラルとは、イスラム教徒の生活規律に準じた“安心の証”
まず、“ハラル”とは何か、基礎知識を整理しましょう。社団法人ハラル・ジャパン協会によると、ハラル(HALAL)とはイスラム教徒の教えで許された「健全な商品や活動」を意味します。イスラム教では、人々の生活に関するルールが聖典「コーラン」や預言者ムハンマドの言行録「ハーディス」に決められており、イスラムを信仰する人々はこれらのルールに基づいて「これは健全です(=ハラル)」と認められていない商品やサービスは避けなければならないのです。有名なところでは、イスラム教徒の人は豚肉が食べられないという話を聞いたことがあるかもしれませんが、これはイスラムの教えが豚肉をハラルだと認めていないため。イスラム教徒の人々はこうした古くから伝わる生活のガイドラインを守り続けているのです。ちなみに、ハラルは食品に関する決まりというイメージが強いですが、その領域は化粧品や医薬品、金融など多岐に渡ります。
ザ・マンハッタンカフェ・フィッシュマーケットでも、メニューに豚肉は一切使われておらず魚介類や鶏肉が中心。そして店内は禁酒・禁煙です。ただ、日本法人のCEOに就任したオマーアリ・ハイダー・アリさんは、「理解してほしいのは食材の制限や禁酒・禁煙ではない」と語ります。アリさんは、ハラルは“ヘルシーでフレッシュな料理をお酒やタバコのない快適な環境で楽しむ文化”だと語り、日本風にアレンジしたアメリカンスタイルのメニューと明るい雰囲気の店内を日本人にも楽しんでほしいとしています。私たちにとってイスラム教の人々のライフスタイルはなかなか想像できませんが、店内の雰囲気やメニューを体験してみると、実はイスラム教の人々も日本人と同じようにカジュアルで明るい雰囲気で食事を楽しんでいると実感できます。ハラルはイスラム教の人々にとってなくてはならないガイドラインであることは間違いありませんが、一方で私たちが想像するような堅苦しいものでもないようです。
カジュアルな雰囲気の店内
というのも、イスラム教の人々が安心してハラルに準じた商品やサービスを利用できるように、世界各国には「ハラル認証機関」というものが存在し、イスラム教の人々に提供しようとしている商品やサービスがハラルに準じているかをチェック・認証しているのです。事業者は、店舗や商品にハラル認証を受けていることを示すことでイスラム教の人々に「私たちの商品やサービスはハラルですよ」と知らせることができます。自分たちで神経質に規律に準じているかどうかをチェックしなくても、このハラル認証を受けているかどうかを確認することで、イスラム教の人々は安心して商品やサービスを利用することができるのです。私たちが日常生活で様々な公的認証を信頼の証明として商品購入やサービス利用の拠り所にしている感覚に近いのかもしれません。ちなみに、このハラル認証機関は日本国内にも数多く存在しています。
2020年を目指して、巨大市場を取り込めるか
ザ・マンハッタンカフェ・フィッシュマーケットCEOのアリさんは、「近年、日本政府がハラル観光を振興しており、これからアジアのイスラム教徒がどんどん日本に観光にやってくる」と語り、東京オリンピックが開催される2020年までに都内5店舗まで事業を拡大すると表明しています。
この背景にあるのは、近年の日本におけるイスラム教徒の観光客の増加と、東南アジアをターゲットにした日本の観光政策です。イスラム教徒の人口分布を見てみると、全世界のイスラム教徒の人口16億人のうちアジアは10億人を占め、中でも東南アジア各国のイスラム教徒比率は高く、マレーシアは88.1%、インドネシアは61%と過半数を超える国も。日本政府観光局がまとめた統計によると、マレーシア、インドネシアなどイスラム教徒の多い国からの訪日観光客は2012年で約23万人と近年急増しており、東南アジア各国からの観光客は、現在急速な経済成長と訪日に必要な観光ビザの規制緩和政策、そして2020年の東京オリンピック開催などにより今後も増加が見込まれます。日本にとっては、こうしたイスラム教徒の観光客増加は、国内の経済振興につながるビッグチャンスとなるのです。
しかし、ここで大きな課題になるのが、ハラルへの理解と対応がまだ進んでいないということ。イスラミックセンタージャパンによると、例えばハラル認証を受けたレストランの数は日本国内に100店舗にも満たない状況で、東京以外の大都市圏でさえ店舗数が一桁だといいます。また、各都市の商工会議所などは事業者向けにハラルへの理解を拡大するためのセミナーなどを積極的に開催しているものの、実際には“意欲はあるものの理解が拡がっていない”という状況が続いています。イスラム教徒のライフスタイルには食事だけでなく礼拝の習慣や異性とのコミュニケーションに関する規律など様々な習慣・ルールが存在します。言語だけでなく宗教文化に対する理解を深め、適切な対応をすることが、イスラムの巨大市場を取り込むためには避けて通れない課題となるのではないでしょうか。ビジネスの基本となる“マーケティング”は“顧客のニーズを知ること”と同義だと言われます。イスラム教徒のニーズを理解することは、大きなビジネスチャンスに繋がる第一歩になるのではないでしょうか。
(執筆:井口裕右/オフィス ライトフォーワン)
本記事は「THE PAGE」から提供を受けております。
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