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自動車のキーワードを読み解く (3) 「クロスオーバーSUV」とは? 「CX-5」「ヴェゼル」なども該当

 自動車のキーワードを読み解く (3) 「クロスオーバーSUV」とは? 「CX-5」「ヴェゼル」なども該当

 

 2000年代初頭から、突如として現れた新しいジャンルのクルマ、それがクロスオーバーSUVだ。最近登場した国産車でいえば、ホンダ「ヴェゼル」やマツダ「CX-5」などが該当するが、いまやこのジャンルに属するモデルは非常に多くなっており、どれが代表的なモデルかとは言いがたい。

 マツダ「CX-5」

 多くの人は「背の高いオフロードっぽい外観のモデル」といったイメージでクロスオーバーSUVをとらえているが、改めてその定義を聞かれると困ってしまう人も多いだろう。

オンロードモデルから生まれたオフロードモデル

 まず言葉の意味から整理しよう。「クロスオーバー」とは、「交差」あるいは「融合」といった意味がある英語。一方、「SUV」は自動車のジャンルのひとつで、「Sport Utility Vehicle(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)」の略だ。スキーやサーフィン、キャンプなどアウトドアスポーツに使うために、舗装路以外も走れる走破性やスポーツギアを積むための積載性を備えたモデルといえる。

 ホンダ「ヴェゼル」

 ということは、「クロスオーバーSUV」とは、「SUV」となにかを「融合」させたモデルであるだろうと想像がつく。その「なにか」とは、とくに変わったものではなく、舗装路を走るごく普通の乗用車のこと。初期のクロスオーバーSUVとは、既存のオンロードモデルのシャシーを流用して開発したSUVのことだった。現在でもこの手法は普通に使われており、前述の「ヴェゼル」は「フィット」、「CX-5」は「アクセラ」のシャシー(プラットフォーム)を利用している。

 当然、そのキャラクターはSUVよりもオンロード寄りになる。そもそもSUVというジャンル自体、より本格的なオフロード走行を想定した「クロカン(クロスカントリー)4WD」よりもオンロード寄りなのだが、それよりさらにオンロードに近づいているのだ。実際、クロスオーバーSUVの中には、外観がアウトドアっぽいだけで、実質的にはオンロード専用のようなモデルも多い。その意味では、クロスオーバーSUVとはファンション性の高い、見た目重視のモデルといえる。

 ところが、クロスオーバーSUVが人気を集めるようになると、こうした定義に当てはまらないモデルが出てきた。ポルシェ「カイエン」に代表される、シャシーを専用設計したクロスオーバーSUVだ。この場合、クロスオーバーSUVの定義は、「ラダーフレームではなくモノコックシャシーを採用したSUV」ということになる。ラダーフレームというのはトラックなどに採用される梯子型のフレーム。SUV発祥の地である米国では、ピックアップトラックの人気が非常に高く、初期のSUVはピックアップトラックの装備を豪華にしたようなモデルだった。

 そのため、モノコックシャシーを採用したSUVは本来のSUVとは違うジャンルであるという理屈が成り立つ。こうしたモデルは当然コストが高いから高級志向で、性能としても最高のものを求めている。オンロードでもオフロードでも最高の走りができる、という意味での「クロスオーバー」となっている。

クロスオーバーじゃないSUVはどこに?

 オンロードモデルのシャシーを流用するにしても、専用設計にしても、とにかくモノコックシャシーを採用していることがクロスオーバーSUVの特徴であり、定義だ。ただこの理屈だと、「クロスオーバー」の付かない本来のSUVはモノコックシャシーではない、という前提がないと成り立たない。しかし、そんなSUVはあるのだろうか?

 もちろん、あるにはある。SUVの黎明期にアメリカで流行したピックアップトラックベースのSUVはみんなラダーフレームだし、日本車でも「ハイラックスサーフ」とか「テラノ」といったラダーフレームのSUVがあった。しかし、これらはすべて古いモデルだ。いまでは「クロスオーバー」の付かないSUVはほとんどない。

 このように考えると、クロスオーバーSUVは、SUVから枝分かれした別のジャンルというより、SUVが進化した形と考えるべきだろう。そもそもラダーフレームというものが乗用車ではほぼ絶滅しており、本格的なクロカン4WDである「レンジローバー」ですら、ラダーフレームを捨ててモノコックシャシーを採用している。

 まとめると、クロスオーバーSUVとはモノコックシャシーを採用したSUVの総称であり、それはかつてのSUVが進化した形ということになるだろう。これですっきりした……と言いたいところだが、しかしクロスオーバーSUVはその人気ゆえに、ひとくくりにできないほど巨大なジャンルになっている。モノコックシャシーをオンロードモデルと共用するモデルと、専用設計のモデルは、性能や価格だけでなくめざす方向性も違っており、もはや分けて考えるべきといえるだろう。

 ただ、そうすると専用設計モデルは本格クロカン4WDとどう違うのか、オンロードベースのクロスオーバーSUVは普通のハッチバックモデルとどう違うのか、という疑問も湧いてくる。結局、「スポーツカーの定義とは?」という永久に終わらない議論と同じで、明確な線引きはできないのだ。

 もちろん、それが悪いことではなく、単純にカテゴライズできないモデルがたくさんあるからこそ、自動車は面白いのだともいえる。「レンジローバー」はモノコックシャシーでオンロード性能も多分に意識しているのに、なぜクロスオーバーSUVと呼ばれないのか? フォルクスワーゲン「クロスポロ」はクロスオーバーSUVに入れてもいいのか? 考え始めると、じつにとりとめがない。

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