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【報道ステーション】古舘vs古賀の救いようのない内ゲバ
1985年春。生放送開始と同時にテレビ画面に映った古舘伊知郎(注1)は、頭部に包帯を巻いた痛々しい姿だった。プロレス中継の開始前、外人レスラーのデビッド・シュルツに暴行を受けたのだ(注2)。
しかし暴行自体が生中継されたワケではないから、古舘にとってはちょうど30年後の今回の方がより痛かったか。3月27日の「報道ステーション」生放送中に起こった元経産官僚・古賀茂明氏による<番組内テロ>のダメージは、まだまだ癒えてない。
改めておさらいすると、古賀氏は番組中に突然、自身のコメンテーター降板について、「テレビ朝日の早河会長や古舘プロジェクトの佐藤会長の意向で降ろされた」と発言。その背景に「菅官房長官を始めとする官邸の凄まじいバッシング」があった、と主張した。それまでも番組内で<Iam not ABE>と書かれたプラカードを掲げる(注3)など奇矯な行動が目立った古賀氏だが、この日はさらなるブッ飛び方。
電波ジャックともいえる事態に古舘伊知郎も気色ばみ、「古賀さんのお話は承服できない」「(録音テープを)出すというのなら、こちらも出さざるを得ない」と、反撃した。
官邸は高みの見物
「圧力をかけた権力者」と名指しされた菅官房長官は「まったく事実無根。公共の電波を使った報道として極めて不適切だ」と、テレビ朝日を批判した。しかし実際は高みの見物といったところだろう。
この事件が起こって以来、他のメディアやネットで取沙汰されるのは、古賀氏の特異な人物像や報道ステーションという番組の内幕。あるいは古舘伊知郎の発言内容などばかりで、肝心の「官邸から圧力があったかなかったか」の検証は関心の埒外だからだ。生放送中の事件が浮かび上がらせてしまったのは、そういう勢力、すなわち<お花畑リベラル>とか<馬鹿サヨク>(注4)の文字通りの小ささだった。
本筋の問題追及より自分のメンツ重視、外への訴求より内輪の諍い優先、憲法遵守を謳いながら刑法は無視、事実より感情を優先、ヘイトスピーチに怒るわりに汚い言葉で異論を罵る。沖縄で嫌がらせを繰り返したり、官邸前で太鼓を叩いて踊ったり、公共の電波で首相を馬鹿呼ばわりしたりする人々に共通する特徴だ。もはやキャラとして生温く見守られているに過ぎない。
涙目で「そっちがそうなら、こっちだって!」と言い合う中年男2人の姿は、戦後の日本メディアを支配してきた<反権力気取り>の賞味期限切れを象徴していた。…