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カメラ目線のガチ軍服男子にドッキリ。写真集『美少年論』
写真家・大串祥子の「美少年論Men Behind the Scenes」は、288ページ、厚みが2.5センチのどっしりした写真集。
目に鮮やかな紫色の見返しにドキドキしながらページをめくると、まずはウイリアム王子も通われたという英国の名門パブリックスクール・イートン校の生徒たちの学校生活が。白いシャツが清潔感あふれる、知的な顔立ちの少年たちが勉強したりスポーツしたりしている姿がそっと覗き観るように撮影され、ご学友同士が語り合い笑い合う、完全に素っぽい姿にときめく。
次は軍服男子。ドイツ軍の兵役やコロンビア軍麻薬撲滅部隊で従事している少年というよりは青年たちの訓練風景やポートレート。こちらは、アイドルブロマイドみたいなカメラ目線のものが多く、虚をつかれます。
銃を構えて地面に伏している兵士がカメラ目線で、ふ。とこちらを見て微笑んでいる写真には衝撃を覚えました。
最後は、近代五種競技の選手たちの写真。大串祥子は、北京オリンピックにおける国際近代五種連合UIPM公式フォトグラファーだっただけはあり、フェンシング、水泳、乗馬、射撃、ランニング競技に臨む選手たちの、一瞬の筋肉や神経の動きを鋭くキャッチしています。
こちらは、ところどころ、選手の笑顔も入っているとはいえ、軍服男子の章ほどのほっこり感はほとんどなく、硬派なスポーツドキュメンタリーのような感じ。
学生、兵士、アスリートと、まったく違った環境にいる男子たちを、それぞれ違ったアプローチで撮っているのです。
この写真集に出て来る美少年たちに共通しているのは、日本人男子とは違う骨太さ。鼻梁や顎、首、胸板、上腕のがっしり感は、美少年というイメージとややかけ離れているように思えますが、これはこれで眼福です。
森茉莉の「私の美男子論」のラインナップが実に多彩で、美男子と感じるセンサーは人それぞれなのだと思い知らされることと同じような視点ではないでしょうか。
なんといっても、なかなか入り込めない海外の希有な場に入って撮るという偉業にもかかわらず、あくまで自然体で、被写体への視線が柔らかいところも、逆に作家の凄みを感じました。
彼女は冒頭で「秩序、階級、ルール、制服、不条理に彩られた究極の男性社会を見つめるまなざしには先入観も批判も否定もなく 純粋な女の好奇心が、我を突き動かす」と宣言していて、この手の世界を映すときともすれば紋切り型になってしまうストイシズムを再現することなく、一見ドメスティックなイケメン写真集のようにも感じられるようなストイシズムと対極の表情を追いかけていきます。…