米・ハワイ「国の史跡」に認定 “地獄谷”と呼ばれた強制収容所

　

　
　　アメリカ・ハワイで今年、「国の史跡」に認定された場所があります。そこは、かつて「地獄谷」と呼ばれた日系人などの強制収容所でした。
　　アメリカ・ハワイの真珠湾。旧日本軍の攻撃、そして戦争の悲惨さが語り継がれる場所です。そこから車で２０分ほどの山あいに、人々から忘れ去られていた施設がありました。「ホノウリウリ強制収容所」。日米開戦後、アメリカ政府によって日系人を中心におよそ４００人が隔離されたハワイ最大の強制収容所です。
　
　　「収容所の跡地には、いまも建物の土台がそのまま残されています。収容者の間では“地獄谷”と呼ばれていたということです」（記者）
　
　　「ここが収容所に選ばれたのは、市民から完全に隠された場所だったからです。“自然の刑務所”のようでした」（国立公園局の担当者）
　
　　先週、ハワイで２人目となる日系人知事らが訪れました。今年２月、オバマ大統領が跡地を「国定史跡」に指定すると発表し、収容者を偲ぶセレモニーがハワイ式・日本式の両方で行われたのです。
　
　　当時、人口に占める日系人の割合が非常に高かったハワイ。家族もろとも収容所送りだったアメリカ本土とは異なり、ここには日系社会に影響力を持つ人など、ごく一部が収容されました。日系二世の故サム・ニシムラさんもその１人です。
　
　　「父との面会はとても悲しいことでした。父との間には隔たりがあり、手に触れることもできなかった」（ニシムラさんの次女 グレース・フクナガさん）
　
　　「父は収容所のことを“二度と聞くな忘れろ”とよく言いました。収容されたことを恥ずべきことだと言っていました。収容されるのではなく、アメリカ政府のためにやれたことがあったと悔いてました」（ニシムラさんの長女 エドナ・サイフクさん）
　
　　灼熱の“地獄谷”に閉じ込められた収容者たちは、戦後も多くを語らず、アメリカ政府も口をつぐんでいました。
　
　　「収容者が当時、何が起こったかを語らなかったのは、“沈黙が義務”だと感じたからだと思います」（ハワイ デイビッド・イゲ知事）
　
　　日系人団体などが跡地を突き止めたのは２００２年。それがなければ、収容所は歴史の闇に埋もれていた可能性もあります。
　
　　「私たちは、収容者の人生や経験を語り継ぎたかったのです。国定史跡になることで、忘れ去られることもないでしょう」（ハワイ日本文化センター キャロル・ハヤシノ所長）
　
　　「ここで起きたことを伝えなければ、今後、同じ過ちを繰り返すだけです」（アメリカ サリー・ジュエル内務省長官）
　
　　戦後７０年。未来のためにも、日系人が受けた苦難を見つめ直す年なのかもしれません。（05日14:10）