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日帰りで楽しむロンドン郊外の街 (6) イギリス人が憧れる、シーサイド・リゾート
ロンドンから列車に乗ること約50分。今回はイギリス最大のリゾート地、ブライトンへとやってきました。ロンドン-ブライトン間を15分間隔で列車が運行しているという便のよさから、ブライトンはロンドンのベッドタウンとしても人気があります。週末などにはロンドンをはじめ、イギリス各地から観光客が訪れるので賑やかです。
私が最初にブライトンを訪れたのは2000年、ARELS(毎夏イギリスで開催される、教育機関とエージェントの国際会議)参加のためでした。その頃は、イギリス国内に2つしかなかった貴重な桟橋の1つ、ウエスト・ピアもあり(2002年の火災で全焼)、そこからもう1つの桟橋、ブライトン・ピア(ウエスト・ピアが焼失する前はパレスピアと呼ばれていた)までの間を、当時の同僚たちとパーティー後のほろ酔い気分で散歩したのが、今となっては懐かしい思い出です。
それから約8年後、ブライトン・フェスティバル・フリンジ(Brighton Festival Fringe:毎年5月に開催される国際的なダンス、音楽、演劇などの祭典)で、ブライトンを再び訪れることになったのですが、ブライトンは相変わらずお洒落で活気のある、変わらない姿を見せてくれました。
ブライトン・フェスティバル・フリンジの一環で、この日は空中ブランコのショーも。左奥に見えるのは、かつてのウエスト・ピア
ロンドンの黒みがかった、がっちりとした建物に比べると、ブライトンの建物は優雅で繊細、それでいてお洒落。白やパステルカラーの建物が多いせいか街全体が明るく、まるで「地中海リゾート」、といったような雰囲気さえ醸し出しています。海岸線の形から、ビーチ沿いの遊歩道、サーフィンやビーチバレーをしている人々の姿などの風景は、日本の湘南エリアのそれと妙に重なっているように思え、ブライトンは私の中で「イギリスの湘南」、としてすっかり定着してしまっています(笑)。
17世紀までは、ほんの小さな漁村に過ぎなかったブライトンですが、その名を知らしめることとなったのは、18世紀に入ってから。当時、イギリスで大流行した海水浴をきっかけに、ブライトンは上流階級や裕福層のイギリス屈指の保養地として発展。今ではカジュアルな若者たちを中心に、1年中活気に満ち溢れています。ナイトクラブやバー、レストラン、劇場などのレジャー施設なども数多くあり、ブライトンが「海辺のロンドン」と呼ばれているのもうなずけます。
カフェが一体となったシアター、「コメディア」
さて、今回は駅から約徒歩5分のところにあるコメディア(Komedia)にて、ブライトン・フェスティバル・フリンジのコメディー・ショーを鑑賞してきました。コメディアは、シアター・ロイヤル(Theatre Royal)と並ぶ、ブライトンでは人気のある劇場。演劇や音楽、コメディー・ショーなどがほぼ毎日のように上演されています。私が訪れた時は、ブライトン・フェスティバル・フリンジの真っ最中だったため、普段以上にいろいろなショーが催されていました。
そんな中、今回鑑賞したのは、日本以上のファンがいるのでは? と思うほどイギリスで大人気の日本人パントマイマー「が~まるちょば」のコメディー・ショー『The Western』。笑いあり、涙ありの内容の濃い1時間でした。ブライトン・フェスティバル・フリンジでは、世界各国からパフォーマーが訪れ、そのショーの数はなんと600以上! 個性的で小規模なショーが多く、チケットも安く手に入るのがこのフェスティバルの特徴で、特に舞台ファンにはオススメ。1日にいくつものショーを観ることも可能ですよ。詳細は、ブライトン・フェスティバル・フリンジのウェブサイトで見れます。ぜひチェックしてからお出かけくださいね。
コメディー・ショーを楽しんだ後は、コメディアからほんの目と鼻の先にあるブライトン博物館&美術館へ。緑豊かな公園の中にあり、入り口までの小道を歩くだけでもゆったりとした気分になれます。ここでは、アールヌーボーやアールデコの家具やドレス、絵画の幅広いコレクションが展示されています。
「ブライトン博物館&美術館」の入り口までは、緑のまぶしい公園の中を通り抜けて
「ブライトン博物館&美術館」の外観。ロイヤル・パビリオンと同じ公園内にある
(上)ブライトン博物館&美術館の2階から見下ろしたギャラリー(右)ギャラリーにはモダンアートが中心に展示されている
黒いイブニング・ドレス。衣装から見るイギリスの歴史も興味深い
ブライトン博物館&美術館の絵画コレクション。小じんまりとして落ち着いた雰囲気
ブライトンといえば、イギリスのリージェント王子(後のジョージ4世)がこよなく愛した街としても有名です。ブライトン博物館&美術館のちょうど斜め前に見えるのが、19世紀に彼によって建てられた豪華な夏の離宮、ロイヤル・パビリオン(Royal Pavilion)です。
たまねぎ型のドーム屋根が目印、夏の離宮「ロイヤル・パビリオン」
ロイヤル・パビリオンは、インド風の外観、中国風の内装、英国風の庭園を持つという、異国情緒たっぷりのユニーク極まりない建物で、王子には申し訳ないのですが、ブライトンの街の雰囲気には少々ミスマッチな感もあります。館内には当時の上流階級に人気のあったシノワズリー(中国風の装飾)をふんだんに使った、凝りに凝ったインテリアが施されています。ヨーロッパ建築の中にオリエンタルな要素を取り入れたこの内装から、王子の当時の贅沢な生活の様子や、東洋に対しての強い憧れが感じられます。
「ロイヤル・パビリオン」の正面
「ロイヤル・パビリオン内のカフェテラスからの風景。館内は残念ながらカメラ撮影禁止
ロイヤル・パビリオンからは、その西側にある迷路のように細い路地が入り組んだ、ザ・レーンズ(The lanes)へ。ハイセンスなショッピング・エリアとしても知られているブライトンには、セレブなどもよく訪れると言います。ザ・レーンズには、お洒落なカフェやレストランがひしめき合っているほか、高価なジュエリーショップ、アンティークショップ、ハンドメイド品を扱う個性的なショップも多く、小さなギャラリーを覗くような感覚で楽しめます。もう少しブライトンでショッピングを楽しみたいという方は、ブライトン駅の南西側にある、最新のショッピングセンター、チャーチル・スクエア(Churchill Square)へ行かれてもいいと思いますよ。
お洒落なショッピングエリア、「ザ・レーンズ」。もしかすると大物セレブにも会えるかも?
ザ・レーンズからさらに南へ突き進むと、目の前に青々とした穏やかな海が広がってきます。やはりブライトンでの最大の見所はビーチ! これを抜きにブライトンは語れません。ブライトンの浜辺はサンドビーチではなく、ペブルビーチ(Pebble Beach。丸い小石が敷き詰められている浜辺)なので、大変歩きにくいのですが、寝そべるとまるで岩盤浴のようで、ポカポカとしていて、かなり癒されます。海岸沿いの遊歩道を歩けば、露店のスタンド、カラフルなアーケード、お洒落なオープンカフェなどがあり、見ていて飽きません。
ブライトンのビーチ。奥に見えるのが歴史ある桟橋、「ブライトン・ピア」
ビーチバレーを楽しむ若者たち。ブライトンらしい夏の風景
遊歩道沿いのオープン・カフェでお喋りと日光浴を楽しむ人々
次回は、ジョージア調の美しい建物が立ち並ぶ、イギリス随一の温泉保養地で世界遺産の古都、バースへ出かけます。