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「最後のひとひねり」で年間入場者数130万人達成 -通天閣観光社長 西上雅章
「いい提案が上がってこない」と嘆くよりも、自分で考えよう。自らがアイデアを出し、会社を引っ張っている社長たちをご紹介する。
数あるタワーのうち東の横綱が東京スカイツリーだとすれば、西の横綱は大阪のシンボルタワー・通天閣だろう。その通天閣は2012年度、開業100周年を迎えて入場者数が132万人に達し、史上3番目を記録した。その勢いはいまも続き、連日、1階のエレベーター乗り場の前には行列ができている。
「とにかく“日本一おもろいタワー”を目指して、いろいろなアイデアを考えては投入してきました。おもろいの中身は大阪ならではの演出。こちらでは『コテコテ』と表現しますが、企画展示やイベントを『これでどないや?』というぐらいに繰り出してきたのです」
こう話すのは、通天閣を運営する通天閣観光の西上雅章社長だ。幼いころから通天閣を見て育った。というより、通天閣が遊び場だったといったほうが適切かもしれない。父親の一氏も、昭和から平成にかけて、同社社長を務めた人物。西上社長にとって、もはや生活と通天閣は一体化している。
西上社長が現職に就任したのは10年前の2003年のこと。当時の入場者は、いまの半分の73万人あまり。あるとき、西上社長はエレベーターのなかで「これで500円は高いな……」とつぶやく男性客の声を聞いた。500円は、その頃の展望料金だった。
実は、それ以前から西上社長は薄々感じていた。すでに眺望のみを売り物にする時代は終わっていたことを。それなのに当時の5階の展望台はガランとした空間で、来場者を楽しませる工夫は皆無に近かった。
「大阪の庶民に親しまれ、入場者の7割を占める府外の方たちからも愛された通天閣というハードを生かすのには、上ってもらうだけでは明らかに魅力不足でした。そこで大阪ならではのコテコテのソフトを取り揃えていくことが、復活の一番の近道だと判断しました」
その成果の一つが、100周年事業として2012年4月に全面改装された5階展望台だ。エレベーターを降りると、壁一面が金色、床は赤一色で統一されている。大阪といえば豊臣秀吉。派手好きな秀吉がつくった「黄金の茶室」のイメージを再現して話題になった。
関東の人間が見たら、これだけでもコテコテ感が目いっぱいという感じだが、西上社長は満足しない。さらなる演出を繰り出していく。実は、その際に大切にしているのが、アイデアに“ひとひねり”加えることなのだ。…