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[FT]ギリシャ・ロシア・中国をつなぐ屈辱の感情
アレクシス・チプラス氏は今年1月にギリシャの首相に選ばれる直前、有権者にこんな誓いを立てた。「月曜日には国民の屈辱の日々が終わる。外国からの命令とはおさらばだ」
ギリシャのレジスタンス戦士の墓碑に献花するチプラス首相。ナチス占領下で数百人にのぼる戦士が処刑された(1月26日、アテネ)=ロイター
国家の屈辱を強調したこの発言を、ギリシャがおかしいからと片づける気になった人は、世界のほかの国々にも目を向けるべきだ。筆者がこの1年、最も頻繁に取り上げてきた4つの国際問題――ロシア、ユーロ圏、中東、東アジア――を見渡せば、国家的、あるいは文化的な屈辱という表現がこの4つすべてを結びつけるテーマになっていることが分かる。
チプラス氏が首相として最初に取った行動の一つは、第2次大戦でナチスに処刑されたギリシャのレジスタンスの戦士たちの墓碑を訪れることだった。これは国としてのプライドに基づく行動だ。有権者に過去の英雄を思い出してもらうと同時に、ユーロ圏の債権者たちを主導したドイツにちょっとした意趣返しをしたのだ。
チプラス氏らは、ギリシャの債務削減と緊縮経済の終了を公約して政権を発足させた。同氏が率いる急進左派連合(SYRIZA)の対決色の濃いアプローチはこうした目標の達成にほとんど寄与しなかったものの、有権者は同政権の果敢な抵抗劇を楽しんだ。SYRIZAの支持率は上昇した――ギリシャの銀行が保有する預金の残高は縮小したが。
■プーチン氏、傷つけられたプライド
ギリシャ政府による債権者との衝突と同様に、ロシアによる欧米との対立は、国家のプライドを傷つけられたという感覚に根ざす。ウラジーミル・プーチン大統領と同氏の世代の指導者たちはかつて、ソビエト連邦という今日よりも広大で強力な国家のために働いていた。そしてプーチン氏は、現代のロシアは引き続き「偉大な国家」として扱われるべきだと主張している。
退役軍人へにこやかに勲章をつけるロシアのプーチン大統領。大祖国戦争から70年を記念した式典前のセレモニーで(2月20日、モスクワ)=ロイター
ロシア政府はウクライナ介入の理由として、海軍基地や市場、国境といった実在する権益を守ることを挙げているが、これは表向きの理由であり、ロシア政府の言葉には国家が屈辱を味わったという感覚があふれている。ロシアはもう軽視されたり無視されたりできないと訴えているのだ。
ロシアは今後、あの傲慢な米国にいじめられるわけにはいかないという気持ちを示すだろう。プーチン氏は、ロシアが最も輝いていた時期の精神を呼び覚まそうと、1940年代の大祖国戦争に言及している。また政府高官らは、ロシアの核兵器はこの国が大国であることの象徴であり、ほかの国々がロシアを恐れる理由でもあると胸を張る。