仕事で役立つ人気ビジネスアプリおすすめ!
[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「撤退を検討」が急増、日系企業の中国拠点に異状あり
日系企業の中国拠点に異変が起きている。これまで続いてきた人件費の高騰に加えて、急速な円安、すなわち人民元高が進んだことで、中国から撤退する日系企業が相次いでいるのだ。中国拠点を維持している日系企業でも、中国人従業員による不正に苦しむところは少なくない。一方で、市場としての中国の魅力は依然として大きく、今なお先進国がうらやむ高い経済成長率を誇っている。日系企業の中国拠点が今、どのような事態に陥っているのか。日経BP社が主催する実務系セミナー「ものづくり塾」「技術者塾」において講師を務める、キャストコンサルティング取締役・上海法人総経理の前川晃廣氏に聞いた。
──毎日、マスメディアを通じて中国の情報は入ってきますが、日本にいると中国の実態がはっきりとつかめません。日系企業が中国拠点を運営する上で、今、困っていることは何でしょうか。
前川晃廣(まえかわ・あきひろ)氏。1964年生まれ。1987年、復旦大学国際政治学部に1年間国費留学。1989年に慶應義塾大学政治学科を卒業後、旧・日本興業銀行に入行。興銀上海支店課長・広州事務所首席代表などを歴任し、2008年キャストコンサルティング取締役、2011年上海法人総経理。近著『中国現地法人の出口戦略と撤退実務』(きんざい)
まずは、人件費の高騰でしょう。工場のワーカー(作業者)で比較した場合、福利厚生を入れて日本では平均で約25万円であるのに対し、中国では約8万円と日本の3分の1程度にまで迫ってきました。確かに、中国のワーカーの人件費は日本と比べるとまだ低いと言えるのですが、10年前は10分の1の水準でした。そこからみると3倍と、ものすごい上がり方をしています。特に、2008年のリーマン・ショック後にこの人件費の高騰が顕著になってきました。
そして円安、すなわち人民元高です。2011年秋に円高はピークで、1米ドル=76円をつけました。それが2015年2月末には、1米ドル=約120円。同じ時期に1人民元=約12円だったのが、今では1人民元=約20円となっています。私は中国で生活しているのですが、12円だった商品が20円になると「随分高くなったなあ」と感じます。
──日本企業としては、中国における反日感情も気になりますが、その影響はないのですか。
もちろん、反日感情は残っています。しかし、だからといって仕事がやりにくいということはないですね。それよりも「環境規制」です。中国系企業には甘いのに、外資系企業に対しては厳しくなりました。
法律があるわけではないのに、環境に与える負荷が大きい業種の企業はここの工業団地に来るなとか、水質データであるCOD(化学的酸素消費量)をいくらまで下げろといったことを、外資系企業は特に厳しく言われるようになっています。
──「中国は世界の工場」と呼ばれていたのは、つい最近だったような気がします。それが今では、「こっちに来るな」とまで言われるようになるとは…。
外資系企業に対する税金の優遇もほとんどなくなりました。法人税率をみると、2007年末まで中国系企業に対しては33%であったのに対し、外資系企業は15%と半分以下で済みました。
それが、2008年からは中国系企業も外資系企業も一律25%になりました。「法人税率が日本の3分の1で済む。安いな」と思って工場を造ったら、あるときから「はい、25%です」となったわけです。でも、増税ではなく、あくまでも優遇税制の廃止、というのが中国当局の見解です。日本の法人税率よりは低いとはいえ、期待していた日系企業としてはガックリくるでしょうね。
──ここにきて、日系企業が中国拠点を運営するコストが急上昇しているようですね。
ええ。人件費の高騰が最も顕著ですが、それだけではありません。中国人従業員の権利意識の高まりで、「労働条件で不当な扱いを受けた」「過去の未納の社会保険料を払え」などと、労働者の権利を声高に主張するようになっています。つまり、労務コストが上がってきているのです。
こうなってしまった原因の1つは、日系企業が「人」に対する投資をしてこなかったことにあります。ものづくりに対する設備投資には熱心だったのに、労務管理がきちんとできる「人事のプロ」の育成には投資を怠ってきた。そのことは、中国拠点の日本人駐在員の出身分野を見れば分かります。
まず製造部門が駐在し、続いて営業部門、次に財務部門で…、おしまい。人事部門の駐在員なんてまずいない。人事部門は直接利益を生むことはないコストセンターです。だから、中国に送り込まれることがないのです。