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判明したSTAP細胞の正体 最後に残る謎
2014年6月25日未明。横浜にある理化学研究所統合生命医科学研究センターの遠藤高帆上級研究員は、3日前に若山照彦山梨大学教授から届けられたSTAP幹細胞「FLS」に関連する遺伝子配列データを見ていて、奇妙なことに気づいた。
STAP細胞と、そこから作られた緑のマウス(写真)、マウスに注射して作ったテラトーマ(奇形腫)、2種類の幹細胞はすべて10年前に作られたES細胞からできていたことがわかった
FLSは、小保方晴子氏が作ったSTAP細胞から若山氏が作製したもので、STAP細胞にはない増殖能力を備え、目印としてマウスの全身で緑に光る蛍光たんぱく質の遺伝子が入っていた。だが解析の結果は、そこに精子で光る別の蛍光たんぱく質の遺伝子が入っていることを示していた。
■解析に3グループ動く
この発見は、理研発生・再生科学総合研究センター(現多細胞システム形成研究センター、CDB)の小保方元研究ユニットリーダーらが2014年1月に発表した「STAP細胞」の実態を解明する突破口となった。FLSからはマウスを作ることができ、STAP細胞が多能性を持つ確実な証拠とされていた。すでに数々の疑義が浮上していたが、その正体と思われる細胞が、このとき初めて浮上した。
若山氏は、2013年3月までCDBに研究室を持ち、全身で光る蛍光たんぱく質と、精子で光る蛍光たんぱく質の遺伝子をセットで持つ黒マウスを飼育していた。大阪大学の岡部勝・元教授が遺伝子導入技術で作ったマウスだ。
STAP細胞は、このマウスに由来する可能性がある。遠藤氏はその日のうちに、CDBと若山氏に解析の結果を連絡した。理研はそれまで一貫して「論文は撤回するので新たな調査はしない」と明言し、残された細胞やマウスの調査にも消極的だったが、5日後の6月30日、一転して論文の予備調査に入ると発表した。
CDBは小保方氏の冷凍庫から見つかったFLSのゲノム(全遺伝情報)の解読に踏み切り、若山氏も保存していたFLSのゲノム解析の道を探った。この解析は最終的に、遠藤氏ら5人の研究者グループが担った。これとは別に、東大グループがNHKの委託を受け、若山氏のFLSの解析に着手した。
■最初から存在しなかった
曲折はあったが、3グループとも12月末までに、同じ結論にたどり着いた。FLSは、かつて若山研に所属していた大田浩研究員が2005年に、岡部氏の黒マウスと市販の白マウスを交配して受精卵を取り、そこから作った胚性幹細胞(ES細胞)だった。ES細胞は発生の研究室ではよく作られ、その手法は確立している。
9月に発足した調査委員会(桂勲委員長)は、CDBの解析に基づいて詳細な調査を行い、今回の論文で「STAP細胞から作った」とされていたものは、FLSのほか、マウス、マウスに注射して作ったテラトーマ(奇形腫)、別種の多能性細胞であるFI幹細胞のすべてが、10年前に大田研究員が作製し、その後何の研究にも使われていなかったES細胞からできていたことを明らかにした。STAP細胞は、最初から存在しなかったのだ。
調査では「129/GFP ES」(129は市販の白マウス、GFPは蛍光たんぱく質を意味する)と書かれたチューブが小保方氏の冷凍庫から見つかり、中身が大田氏のES細胞だったことが確認されている。
大田氏は2010年3月に理研から転出し、その際にES細胞は「すべて運び出したつもりだが、同じ株がCDBにあったのなら、置き忘れたのかもしれない」と話している。だがチューブのラベルは大田氏が書いたものではなく、このチューブがどのようにして小保方氏の冷凍庫に入ったかは今もわかっていない。
(詳細は24日発売の日経サイエンス3月号に掲載)
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