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ついに地球にたどり着いた「はやぶさ」
6月13日、JAXA相模原に集まった1500名を超す来場者から、度重なる拍手が上がった。小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還に際し開催されたパブリックビューイング(PV)のために集まった人々による拍手だ。
パブリックビューイングのためにJAXA相模原に集まった人々
同日19時51分00分(日本時間)、はやぶさはその身から小惑星「イトカワ」で採取したであろうサンプルを搭載したカプセルを分離、地球への降下軌道に乗せた。あまりの来場者の多さに会場を3つに分けたJAXA相模原では、はやぶさの最後の1つ1つの動きが報告されるたび、大きな拍手が鳴り響いた。
PVで多くの来場者が眺めていたJAXA相模原に設置された運用管理室では、その間もはやぶさの最後に向けた作業が着々と進められていた。JAXA相模原からのデータの送受信ははやぶさが太平洋の水平線に消えるまで続けられた。水平線に消える最後のコマンドを送信したのが22時27分、そして鹿児島局がはやぶさの最後の電波を受信したのが22時28分。この後、カプセルの地球再突入時刻である22時51分までの30分の間、リチウムイオン電池の寿命を向かえていたはやぶさは地球の影に入り、電力を失い、カプセルとともに地球に降下した。
JAXA相模原の運用管理室。中心付近で立っているのがはやぶさプロジェクトマネージャーの川口淳一郎氏
運用管理室の入り口脇にはあかつきやIKAROSなどからのメッセージが貼られていた
はやぶさの運用管理を終えた運用管制室では、JAXAスタッフから運用に協力してきたNECネットワーク&システムインテグレーションのスタッフに花束が贈呈された。その瞬間、その様子を映し出していたPVの観客から実に1分間ほど拍手が鳴り響いた。
これまではやぶさの運用を助けてきたNECネットワーク&システムインテグレーションのスタッフにJAXAスタッフから花束が贈呈された
はやぶさの道筋
はやぶさが地球を発ってから、この日の運用完了まで実に2600日近い月日が過ぎた。本レポートでは、これまでのはやぶさが辿ってきた7年間の道程をざっくりとだが、振り返ってみたいと思う。はやぶさは2003年5月9日、M-Vロケットにて打ち上げ、2005年9月12日、約20億kmの旅を経てイトカワに到着。同年11月に2回のタッチダウンを試み、サンプル採取を試みた。
往路でも復路でもはやぶさにはさまざまな困難が襲い掛かった。まずは往路。2005年7月29日、姿勢安定に用いられる3台のリアクションホイールのうち1台が故障した。イトカワに到着した後の同年10月、2台目のリアクションホイールも故障。残りの1台のリアクションホイールだけでイトカワに着陸、サンプル採取に挑戦した。
復路ではさらなる試練が襲い掛かった。イトカワ離陸後、化学エンジンの燃料漏れが発覚、ガス化した燃料が宇宙空間に噴出した結果、温度低下を引き起こしバッテリが放電、そして方向性を失ったはやぶさは12月9日、地球との通信途絶状態に陥った。
7週間後の2006年1月26日、運用チームの必死の呼びかけにこたえたはやぶさは奇跡的に通信を回復、イオンエンジンの推進剤であるキセノンガスを直接噴射という本来の使い方と異なる手法を用いることで姿勢を制御することに成功した。
姿勢制御に成功したはやぶさは、2006年3月までに通信を回復、エンジンの再起動を経て地球への帰還に向け、再び宇宙を航行し始めた。しかし、この間の通信途絶の影響により、当初予定であった2007年帰還は無理となり、3年後の2010年の地球帰還へと運用が変更された。
この帰還運用には、化学エンジンが使えないため、新たな方法として太陽光圧を利用した姿勢制御を実施、これによるイオンエンジンの推進剤であるキセノンガスを用いずに姿勢制御することが可能となった。
絶体絶命と思われる危機を乗り越えたはやぶさと運用チームに、再び大きな困難が襲い掛かったのは2009年11月4日。A/B/C/Dと4つあるイオンエンジンとスラスタのうち、生き残って運用を続けていたスラスタDのイオン中和器が寿命に到達。これにより、はやぶさは飛ぶための翼を失ったこととなる。
しかし、それでも運用チームはあきらめなかった。通常運用では予定していなかった奇策をこんなこともあろうかと、といった具合に用意、実際に運用して見せた。その方法とは、先に中和器が故障してしまったスラスタBのイオン源とイオン源の不調で待機状態になっていたスラスタAの中和器をバイパスして接続、1台のエンジンとして活用することだった。
満身創痍なったはやぶさは、その後、死力を振り絞ったかのように地球に向けた航行を続け、6月13日22時51分、オーストラリア上空200kmに到達、その役割を終え地球を眺めながらその身を炎に沈めた。実にはやぶさが地球から小惑星「イトカワ」に赴き、そして地球へと帰還するまで7年間の月日が流れていた。
はやぶさはカプセル分離後、7~8枚の撮像に挑戦。そのうち、最後に撮影した1枚に地球が写っていた。下が黒くなっているのは、はやぶさからの送信が追いつかなかった影響によるもの(提供:JAXA)
なお、同日23時17分、PV会場に一際大きく、そして長い拍手が鳴り響いた。運用管理室のスタッフが中継を行っていたモニタに向かって「ありがとうHAYABUSA」と書かれたはやぶさのイラストを掲げたことに沸き起こった拍手であり、7年間続けてきたはやぶさの運用管理が終了したことの宣言だった。
運用管理室を映し出していたパブリックビューイング用のカメラにJAXAスタッフが提示した「ありがとうHAYABUSA」のボード
カプセル分離から着地までの一連の流れ(提供:JAXA)
内之浦宇宙空間観測所より打上げ
地球スウィングバイ成功
イオンエンジン延べ20,000時間稼働
リアクションホイール1基目が故障
小惑星「イトカワ」に到着。約20kmの距離で相対停止
リアクションホイール2基目が故障
イトカワへの第1回降下リハーサル(異常検知にて途中で中止)
イトカワへの第2回降下リハーサル(探査ロボット「ミネルバ」が着陸に失敗
イトカワへのタッチダウン(1回目)
イトカワへの2回目のタッチダウン。その後、スラスタに異常が発生
イオンエンジンの推進剤であるキセノンガスの噴射により姿勢制御
化学エンジンの燃料漏れ再発生による影響から姿勢を喪失、地球との通信途絶
地球への帰還予定が2010年6月に延期と発表
はやぶさのビーコン信号を受信
太陽光圧による姿勢制御を実施
はやぶさ、イトカワの軌道から離脱。地球へ向けた巡航運転を開始
燃料節約のため、イオンエンジンを停止
リアクションホイールを停止、姿勢制御を一旦スピン安定に
三軸姿勢制御を確立し、イオンエンジンを再点火
イオンエンジンが異常停止
2つのスラスタのイオン源と中和器をバイパスすることで接続、イオンエンジンを復活
地球帰還に向けた第2期軌道制御を完了し、イオンエンジンの連続運転を終了
星姿勢制御(STT)のCCDセンサにより月と地球を撮影
TCM-2を終了
TCM-3を終了。地球への帰還を確実に
TCM-4を終了。WPA内の予定地点への降下軌道への修正を完了
カプセルの分離信号を確認
地球撮像に成功。はやぶさからの最後の送信画像
カプセルが高度200kmに到達。大気圏に再突入を開始
火球が最大光度に到達。各地で火球を確認
ビーコンの発信を確認
地上への着陸を確認
WPAにてヘリコプターが現地でビーコンを確認
ヘリコプターが目視でカプセルを確認「はやぶさ」の主な軌跡