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京大、直径数μmサイズの磁気円盤においてスピン状態の対称性の破れを発見
京都大学(京大)は、ミクロな磁気円盤におけるスピン状態の対称性の破れを見出したことを発表した。同成果は同大の小野輝男 化学研究所教授、山田啓介 同大学院生(現 パリ南大学研究員)、葛西伸哉 物質材料研究機構主任研究員、仲谷栄伸 電気通信大学教授、佐藤知徳 同大学院生、およびローレンスバークレイ研究所のPeter Fischer博士、Mi-Young Im博士との共同研究によるもので、英国科学誌「Nature Communications」オンライン版に公開された。
直径が数μm程度の磁気円盤を作ると、磁化が円盤面に沿う磁気渦構造ができるが、この磁気渦の中心には、コアと呼ばれる磁化の向きが円盤に垂直方向に立ち上がる領域が存在している。
図1 磁気渦の概念図。渦の回転方向(時計回り・反時計回り)とコアの向き(上・下)の組み合わせによって磁気渦は(a)~(d)の4つの状態をとりうる
この磁気渦構造の研究は京大が進めてきた研究の1つで、すでにコアの検出や電流によるコアの回転運動の励起、コアの向きの反転、コア運動によるスピン起電力発生などの研究が報告されている。
磁気渦状態には、渦の回転方向(時計回り・反時計回り)とコアの向き(上・下)の2つの自由度があることが知られており、それらの組み合わせによる4つの磁気渦状態は同じエネルギーを持ち、同確率で現れると期待されていた。
しかし今回、ローレンスバークレイ研究所のX線顕微鏡を用いて、単磁区状態から磁気渦状態への変化を詳しく調べた結果、これら4つの状態は独立ではなく、例えば、時計回りの磁気渦は上向きコアを持ちやすい、といった具合に渦の回転方向とコアの向きの間に相関があることが判明した。
なお、研究グループでは、この磁気円盤におけるスピン状態の対称性の破れについて、ジャロシンスキー守谷相互作用を仮定することで説明可能であることが、マイクロマグネティクス計算により判明したとしている。
図2 X線顕微鏡による磁気渦構造の観察例。(a)磁気渦の面内成分測定:黒コントラストが右向き磁化成分、白コントラストが左向き磁化成分を表し、これらから磁気渦の回転方向が決定できる。(b)磁気渦の面直成分測定:各磁気円盤中心の白黒のコントラストがコアの上向き・下向きに対応している。(c)は(a)および(b)から決定された磁気渦のスピン構造