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東北大、中性粒子ビーム直接酸化技術で次世代GeMOSトランジスタ構造を実現

東北大、中性粒子ビーム直接酸化技術で次世代GeMOSトランジスタ構造を実現 

 東北大学(東北大)は、GeチャネルMOSトランジスタの製造プロセスにおけるゲート絶縁膜形成に、無損傷で低温酸化が実現できる中性粒子ビーム酸化プロセスを用いて、2.0nm以下の極薄高品質Ge酸化膜の直接形成を実現し、電気的にMOSトランジスタ界面が超低界面準位であることを実証したと発表した。

 同成果は、同大 流体科学研究所および原子分子材料科学高等研究機構 寒川誠二教授らによるもの。詳細は、9月17日~21日にフランスで開催される「The 42nd European Solid-State Device Research Conference(ESSDERC)」で発表される予定。

 現在の半導体産業は新材料の導入や微細化の研究が盛んに進められている。中でも、MOSトランジスタの高性能化に向けた研究は重要となっている。集積回路の高性能化には回路の微細化が不可欠だが、現在の2次元平面的広がりを必要とする素子技術では、微細化した回路素子からのリーク電流による発熱が大きくなり過ぎて、22nm以降の高集積回路の実現は難しいとされている。

 この壁を打ち破る1つの技術として、チャネル材料にGeを用いたMOSトランジスタの開発が進められている。GeMOSトランジスタにおける製造上および特性上の課題は、ゲート酸化膜形成時におけるGeおよびGe酸化膜界面準位とされている。

 図1 先端デバイス開発ロードマップ

 研究グループでは、2005年に中性粒子ビーム酸化を用いて3次元シリコン構造を無損傷に低温酸化すると、起立型MOSトランジスタにおける電子の移動度を向上できることを発表しているが、今回、Ge基板表面の自然酸化膜を独自に開発した水素ラジカルにより除去し、真空一貫で連続して酸素中性粒子ビームによる300℃以下の低温酸化で均一超低損傷Ge酸化膜を形成し、その上に高誘電率膜であるアルミニウム酸化膜を堆積することでMOSキャパシタ構造試作を行い、電気的に界面準位を測定。

 この結果、従来の熱酸化やプラズマ酸化によるGe酸化膜に比べて、極薄のGe酸化膜が界面準位が低い状態で形成することに成功した。これは、中性粒子ビームによる酸化では300℃以下という低温で面方位依存性なく緻密なGe酸化膜が原子層レベルで形成できるためだという。GeはSiに比べ、熱プロセスやプラズマプロセスへの耐性が低く、膜厚の制御や低界面準位を実現することが難しく、Geを用いた高移動度MOSトランジスタ実現の大きな障害になっていた。しかし、中性粒子ビーム酸化を用いて高品質極薄Ge酸化膜が実現できたことから、今後GeMOSトランジスタの開発が大きく前進することなるとしている。

 また、プラズマを用いたプロセスでは、励起されたラジカルやイオンにより表面反応は低温で進行するため、従来の熱プロセスに比べて圧倒的に低温のプロセスが実現できる。しかし、プラズマから照射される放射光(特に紫外線)により、基板表面から数十nm以上の深さで欠陥が生成される。特に形成構造がナノオーダーになると、構造全体に欠陥が生成されるためにデバイスとしての機能を果たすことができない。今回、GeMOSデバイスへの中性粒子ビーム酸化の適用と実際の電気特性の向上を実現し、次世代GeMOSトランジスタへの超低損傷・低温プロセスの有効性を明らかに示すことに成功し、この問題を解決した。

 中性粒子ビームによる加工・表面改質・材料堆積技術は、現在の半導体業界が直面している革新的ナノデバイスの開発を妨げるプロセス損傷を解決するまったく新しいプロセス技術と考えられている。また、同技術を用いた装置はプラズマプロセスとして実績があり、もっとも安定した装置において用いられているプラズマ源をそのまま用い、中性化のためのグリットを付加するだけで実現できることから、今後、22nm以降の先端ナノデバイスにおける革新的なプロセスとして実用化されてゆくことも期待される。

 なお、同技術はすでに大手装置メーカーで装置化が進んでおり、近い将来、実用化されることとなると研究グループではコメントしている。

 図2 中性粒子ビーム酸化装置

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上原健二
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