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日帰りで楽しむロンドン郊外の街 (8) シェイクスピアゆかりの地

日帰りで楽しむロンドン郊外の街 (8) シェイクスピアゆかりの地  

 ストラトフォード・アポン・エイヴォン(Stratford-Upon-Avon)は、イングランド中部・エイヴォン河のほとりにある緑豊かな小さな街です。ロンドン(パディントン駅)からは列車で2時間強の距離にあります。ストラットフォードとは「浅瀬を渡る道」という意味。イギリスにはストラトフォードとつく街の名前がいくつかあるため、”エイヴォン川のほとり”(アポン・エイヴォン)のストラトフォードいうことで、ストラトフォード・アポン・エイヴォンという街の名前がついたそうです。中世の雰囲気が漂うテューダー様式の木骨造りの建物が多く残り、観光地とはいいながらどこかのんびりとして落ち着いています。

 雨の中にたたずむ、シェイクスピアの像

 街の西側にある駅から街の東側のエイヴォン川までは徒歩15分ほど。小じんまりとした街なので、ゆったりとした時間を過ごす場所としては最適でしょう。小さい街ながらもイギリスの劇作家であるウィリアム・シェイクスピアのゆかりの地ということで、その知名度は高く、シェイクスピアや演劇ファンを中心に、観光シーズンには世界中からたくさんの人が訪れます。

 私がコッツウォルズに住んでいた頃、ストラトフォード・アポン・エイヴォンの街まで車で30分ちょっとで行けたので、隣町といった感覚で遊びに行っていました。その当時、人気だったのがストラトフォード・アポン・エイヴォンでのシェイクスピア観劇。ある程度の希望者が集まると、まだ明るいサマータイムの夕暮れ時に車を乗り合わせ、くねくねとした細い道を走らせて、ストラトフォード・アポン・エイヴォンの街まで出かけたものです。

 大学時代に『ロミオとジュリエット』を原文で読むという授業を取っていたので、シェイクスピア時代の英語を多少は理解できると思っていましたが、やはり劇のセリフを全部理解するのは不可能に近いものがありました。ストラトフォード・アポン・エイヴォンでは、シェイクスピアの3作品『じゃじゃ馬ならし』、『真夏の夜の夢』、『お気に召すまま』を観ているのですが、随分昔に読んだっきりだったので、作品のストーリーをど忘れてしまい、あとから日本語で作品を読み直して理解した部分も多々ありました(苦笑)。そんな私の経験から、観たいシェイクスピアの作品は一度、日本語版で予習してからこちらで観る、という方法をオススメしたいですね。

 旧ロイヤル・シェイクスピア劇場で『じゃじゃ馬ならし』の開演を待つ人々

 たとえ英語が理解できなかったとしても、よく知られたシェイクスピアの作品を上演することが多いので、話の内容はだいたいついていけるはずです。細かい部分まではわからなくても、シェイクスピアが生涯を過ごした地、ストラトフォード・アポン・エイヴォンで、彼の劇作を生で観るという経験はこの上なく贅沢で格別なものです。

 ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)のホームタウンである、ストラットフォードには、ロイヤル・シェイクスピア・シアター、スワン・シアター、コートヤード・シアターの3つの劇場があります。現在は、ロイヤル・シェイクスピア・シアター、スワン・シアターの2つの劇場がリニューアル工事中で、2010年に再オープンの予定。その間は、2006年にオープンしたコートヤード・シアター(Courtyard Theatre)の方で主に上演されるそうです。1,000人の観客を収容できるこの劇場は、新しいシェイクスピア・シアターの雛形になると言われています。

 旧ロイヤル・シェイクスピア劇場(現在リニューアル工事中)
 (上)旧スワン劇場(現在リニューアル工事中)

 公演は夜が多いのですが、日によっては昼の公演(マチネ)もあるので、事前にウェブサイトでチェックしておきましょう。チケットのオンライン予約も可能です。

 観劇の間の休憩タイムもまた楽しみの1つ。エイヴォン川に面した劇場にはテラスがあり、川を行き交うボートを眺めながら、そこでワインを飲んだり、アイスクリームを食べたり、お喋りをして過ごすのが英国流です。ぜひ、トライしてみましょう。

 エイヴォン川を行きかうカラフルなボート

 旧ロイヤル・シェイクスピア劇場からの眺める、エイヴォン川

 この他にも、シェイクスピアが青年期まで過ごした生家(Shakespeare’s Birth Place) や、彼が学んだ学校、グラマー・スクール(Grammar School)、晩年を過ごしたナッシュの家/ニュープレイスの庭(Nash’s House/New Place)、埋葬されているホーリー・トリニティ教会(Holy Trinity Church)などがよく知られています。ただ、シェイクスピアの妻アンが結婚する前まで住んでいたという茅葺屋根の美しい、アン・ハザウェイの家(Ann Hatherway’s Cottage)へは、街の中心から徒歩で30分近くかかるので、1日で回り切るのは時間的にかなり厳しいかもしれません。

 季節の花が美しい、ナッシュの家/ニュープレイスの庭

 シェイクスピアの通っていたというグラマー・スクール。チューダー様式が美しい

 ホーリー・トリニティ教会の外観

 シェイクスピアと家族が静かに眠る、教会の墓地

 このように、ストラトフォード・アポン・エイヴォンは、シェイクスピアゆかりの場所がいくつもあり、まるで街全体がシェイクスピアのテーマパークのようです。文学にあまり興味のない人でも、せっかくなのでぜひ観劇をして、テューダー様式の家々を楽しみながら美しい街を散策してみてください。また、天気のよい暖かい日であれば、街の景観を楽しみながら、穏やかなエイヴォン川でのクルージングもオススメですよ。

 次回は、アカデミックな石造りの街、オックスフォードへと向かいます。

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