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東大、弱視者向け三次元情報呈示用「眼鏡型ディスプレイ装置」を開発
東京大学(東大)は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いて三次元視覚情報を表示する「眼鏡型ディスプレイ装置」を開発したことを発表した(画像1)。開発したのは、東京大学先端科学技術研究センター人間情報工学分野の田中敏明特任教授だ。
画像1。弱視者用に開発された三次元視覚情報を表示する眼鏡型ディスプレイ装置
今回のHMDシステムは、三次元情報を拡大・縮小して表示する装置のことで、2年前に田中特任教授が開発した視覚認知障害者向けの検査訓練用機器を弱視者向けに改良し、試作した。これまでは1.5倍までの拡大が限界だったが、今回開発した機器は、左右への視覚呈示により三次元的視覚情報を呈示しつつ、2.3倍まで拡大できるようになったのが特徴だ。
視覚情報を拡大・縮小して、自分の日常生活行動に適するように拡大を調整することができるため、弱視者の見る方法に近い感覚で視覚情報得ることが可能となる。また、ほかの視覚補助具と比べて、小型軽量で持ち運びも容易なため、日常生活の多様な場面で使用可能な点もポイントだ。
弱視はロービジョン(low vision)ともいわれ、定義としては「眼鏡やコンタクトレンズを使っても見ることが十分に回復せず、生活に不便を感じる状態」である。全盲とは区別され、医学的には視覚障害の1つだ。日本においては、最も狭義である視覚障害者認定の2級から6級の人数でも19万人、日本眼科医会の発表によれば100万人以上ともいわれている。
ロービジョンを支援する視覚補助具が、拡大鏡(ルーペ)や、単眼鏡、拡大読書器などだ。拡大写本や大活字本は、補助具を使うことなく読めるため、「見えにくさ」を抱える多くの当事者にとって、読みづらさを解決する最良の手段であるが、公共図書館の視覚障害者向けサービスや、特に点字図書館は、ほぼ点訳や音訳だけの図書構成であり、拡大写本のサービスを手掛ける図書館は現状では極めて少ない。このような現状から、いろいろな生活場面で使用可能な支援機器の充実が切望されている状況だ。
今回の眼鏡型ディスプレイ装置は、小型カメラで撮像した三次元画像情報を拡大・縮小してHMDに呈示することが可能で、拡大読書機とは異なり、自分の動きに合わせて視野を拡大することができるため、弱視者の見る方法に近い感覚で視覚情報得ることが可能だ。
田中特任教授が2年前に開発したHMD機器は、前述したように1.5倍までの拡大が限界だったが、今回開発した機器は左右への視覚呈示により三次元的視覚情報を呈示しつつ、2.3倍まで拡大できるようになり、より正確で迅速な三次元情報の表示が可能となっている。
弱視者には左右の視力に差がある場合も多いが、同機器は左右への独立した三次元的視覚情報呈示が可能なことから、左右の各視力に合わせて拡大することも可能だ。
田中特任教授は、今後、盲学校などと共同研究を進め、早期の実用化を目指すとしている。
画像2。眼鏡型ディスプレイ装置を使って視覚情報を得る被験者