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高さ3メートルの防音壁 保育所は迷惑施設か
●住民「ついのすみか…戸惑い」 園「まちづくり理解を」
安心して産み育てる環境を整えるため、保育所や幼稚園の整備が急がれる。しかし「子どもの声がうるさい」「親の送迎マナーが悪い」など近隣住民の苦情で建設が難航したり、園児の活動を制限したりするケースも出ている。子育て施設は迷惑施設なのか-。来週(25日)と2回にわたって考える。
【連載】保育所開設にはさまざまな障壁が・・・
4月の陽光が降り注ぐ園庭で、社会福祉法人「新芽会」の鶴丸聡一郎理事長(52)は高さ3メートルの防音壁を寂しそうに見上げた。「子どもの声は不快なのか…」
福岡県古賀市に1日、新設された認可保育所「舞の里バディ保育園」(定員110人)。建設を計画した2年前から近隣住民の反対運動に遭った。(1)騒音対策として防音壁を設置(2)住宅側にある幅6メートルの市道を送迎に利用しない-ことを求められた。資金不足のため、鶴丸理事長はブロック塀での代用や高さ1・5メートルの防音壁などを提案したが、「民家側の約60メートル全てに高さ3メートルの防音壁を設置」は譲ってもらえなかった。
結局、約600万円掛けて防音壁を設置。駐車場や給食食材の搬入口の位置も市道を通過しないよう変更した。鶴丸理事長は「いろんな意見があると思うが、子どもの存在が活気あるまちづくりにつながると理解してほしい」と話す。
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「子どもたちには何の罪もない。保育所が必要なのも分かる。でも、自分たちには死活問題ということも理解してほしい」。市道を挟んで保育所に隣接する自宅に住む男性(65)は訴える。
約20年前に今の家を購入し、7年前に退職した。夫婦で老後を過ごしてきたが、保育所ができれば環境が激変してしまう。「この辺りの静かな環境を気に入って家を買った。子どもの声や送迎で騒がしくなると…。ついのすみかと思っていたのに」と戸惑いを隠せない。
近隣約200世帯への説明会や意見交換会は4回開かれたが、住民でつくる「新設保育園建設計画の再考を求める会」は、見直しを求める3717人分の署名を市に提出した。同会代表の男性(50)は「保育所が迷惑施設とはこれっぽっちも思っていなかった。でもここは開発から約30年たった住宅地。60代、70代を超えた住民が多いことを配慮してほしかった」と振り返る。今のところルールは守られ、トラブルは起きていない。
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4月から始まった「子ども・子育て支援新制度」。深刻な待機児童問題の解消に向け、保育の量と質の充実を図るのが狙いだが、どのような施策を展開していくかは市町村に任される。
福岡市のベッドタウンである古賀市(人口約5万8千人)では2013年度に待機児童が発生。「ありがたい話」(同市子育て支援課)と新芽会に建設費として国、県合わせて約1億7千万円を補助するなど支援してきた。しかし、防音壁設置など具体的なトラブルについては「民と民の問題」との立場だ。
都市部で土地を探すのは難しい。住宅街に保育所が建設され、トラブルが起きることは珍しくないだろう。次回は、住民と良好な関係を築いた保育所を紹介し、あるべき姿を考えたい。
=2015/04/18付 西日本新聞朝刊=