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NIPS、動物細胞の容積変化制御に2つのタンパク質が関与していることを確認

NIPS、動物細胞の容積変化制御に2つのタンパク質が関与していることを確認 

 生理学研究所(NIPS)は、動物細胞がその容積を調節する際に浸透圧のコントロールを「ABCF2」と「α-アクチニン-4」という2つのタンパク質が関係していることを明らかにしたと発表した。生理研細胞器官研究系機能協関研究部門と鈴鹿医療科学大学薬学部との「生理学研究所計画共同研究」による研究で発見されたもの。

 硬い細胞壁を持たない動物細胞の容積は、刻々と変化する細胞外および細胞内の浸透圧の影響を受けて容易に変化する。ただし、動物細胞には増大または減少したその容積を元に戻し、常に一定に保つ能力があり、これは生命を維持する上で必要不可欠な機能だ。例えば、細胞外の浸透圧が低下したり細胞内の浸透圧が増大したりすると細胞外から水が入り、細胞の容積は一旦膨張する。しかし動物細胞は、この状態から細胞内の余分な水と溶質を細胞外に排出し、元の容積に戻ろうとする仕組みを持つ。

 この過程は「調節性容積減少(RVD)」と呼ばれ、この時に排出される陰イオン(アニオン)の通り道である「容積感受性外向整流性アニオンチャネル(VSOR)」の働きが、RVDの過程に必須であることがわかっている。しかし、VSORの分子は未同定であり、RVDを可能にさせる分子基盤には不明な点が多い。

 そこで研究グループでは、RVDの過程に細胞骨格系が関与するというこれまでの報告を踏まえて、アクチン結合タンパク質である「α-アクチニン-4(ACTN4)」のRVDにおける関与を検討した。

 「siRNA」(small interfering RNA:低分子の二本鎖RNA)を用いてヒト上皮由来「HEK293T」細胞におけるACTN4の内在性発現をノックダウンすると、低浸透圧刺激後のRVDの過程は顕著に遅くなり、ACTN4を大量発現させるとそれは有意に促進された。これらの結果から低浸透圧刺激後の細胞容積調節にACTN4が関与していることが明らかになったのである。

 また、RVDが有意に亢進し始める時期に一致して細胞質内のACTN4が細胞膜へ移動することがわかった。ACTN4の結合タンパク質を「プロテオミクス」的に探索した結果、細胞質に局在するタイプのABCタンパク質である「ABCF2」と同定され、そのACTN4との結合が低浸透圧刺激で有意に促進されること、ABCF2のN末端領域がACTN4との結合に必要であることが明らかになったのである。

 そして、低浸透圧刺激後にACTN4が細胞膜へ移動することと、ACTN4とABCF2の結合の促進には、正常なアクチン細胞骨格が必要であることも判明した。さらに、ABCF2を大量発現した細胞ではVSOR電流が大きく抑制されてRVDの過程が顕著に遅くなること、またその発現をノックダウンした細胞ではVSOR電流が顕著に大きくなって容積の回復が早くなることを明らかにしたのである。

 以上の結果から、画像で模式的に示すように、低浸透圧刺激後にABCF2とACTN4の結合能力が高まることによってVSORを負に制御する調節タンパク質であるABCF2はVSORから離れることとなり、RVDが亢進されることが考えられるという結論を得たという。

 VSOR活性調節におけるABCF2とACTN4の役割の仮説モデル。(左)等浸透圧下においてABCF2はVSORに結合し、その活性を負に調節している。(右)低浸透圧刺激による細胞容積増加に伴ってABCF2はVSORから外れ、VSORは活性化。VSORから外れたABCF2は細胞膜下に存在するACTN4と結合する。低浸透圧刺激後速やかにABCF2は細胞質から細胞膜へと移動して来るが、これらも細胞膜下に存在するACTN4と結合。細胞骨格の再編成を伴いつつ細胞膜の突出が形成されるにつれて、ACTN4は細胞質から細胞膜下へと移動してくる。この新しく細胞膜下へ移動してきたACTN4によってABCF2はVSORとの再結合を阻まれ、その結果VSOR活性化が持続することによって低浸透圧刺激後の細胞容積調節が加速する仕組みだ

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