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統一地方選がスタート 何のために、誰を選ぶの? 内山融・東京大学大学院教授
[写真]「地方自治は民主主義の学校である」(J.ブライス)。統一地方選挙は、4月12日(知事選、政令指定市長など)と26日(市区町村議など)に投票が行われる。 (ロイター/アフロ)
第18回統一地方選は、約1カ月間の選挙戦がスタートした。地方自治体の首長(知事や市長)と議会(県議会や市議会)の選挙が全国で一斉に行われる。そもそも、統一地方選とはどんなもので、国政選挙と何が違うのか。そして、有権者はこの選挙にどのように向き合うべきなのか。政治学者の内山融・東京大学大学院教授に質問に答えてもらった。
Q:そもそも統一地方選とは何でしょうか?
A:地方自治体の首長(知事や市長)と議会(県議会や市議会)の選挙を全国で一斉に行います。自治体の首長と議員の任期は4年なので、各地で4年に一度選挙があることになりますが、これらを統一して実施することにより、有権者の関心を高めることや、選挙経費を節減することをねらっています。本年3月から5月の間に任期が切れる首長や議員の選挙をまとめて、4月12日(知事選、政令指定市長など)と26日(市区町村議など)に投票が行われます。
Q:地方選に投票することにはどんな意義があるのでしょうか?
A:まず、自分たちに関わる事柄について自分たち自身で決定するという民主主義の原理を、身近な場で実践するという意義があります。
「地方自治は民主主義の学校である」ということばを聞いたことがあると思います。英国の学者・政治家であるJ.ブライスのことばです。ブライスが念頭に置いていたのは米国のタウンミーティング(住民集会)ですが、こうした場で自分たちの身近な問題について議論して決定することにより、民主主義というものを実践的に学ぶことができるということです。
衆参議員選など国政の場は一般の人々から距離があるため、そこでの決定が自分たちにどのように関わるのかがわかりにくく、判断も付きにくいことがあります。その点地方選では、比較的近い存在である首長や議員を選びますし、身近な問題が争点になることも多いので、主体的な判断が行いやすくなるでしょう。このように、実際に政治参加を行い、その意義を実感できることに地方選の大きな意義があります。
また近年、地方分権の流れが強くなっています。国が持っている権限や財源を地方自治体に移すことにより、住民が自分たち自身のことを決めやすくしようという趣旨ですが、大事なのは、そうした権限や財源を自治体の側できちんと受け止めることができるかどうかです。もし住民が自治体の運営に関心を持たなかったら、地方分権は中身のないものとなってしまうでしょう。この点でも、有権者が地方選に積極的に関心を持つことが必要です。
Q:国政選挙との違いはどのような点にあるのでしょうか?
A:まず、仕組みについては次のような違いがあります。国の場合、有権者が選挙できるのは衆参両院の国会議員です。そうして選出された国会議員が内閣総理大臣を選びます。つまり、国の場合には、「有権者→国会→内閣」という経路で政権が成立します。一方、地方自治体では、地方議会の議員に加えて、知事や市長などの首長も直接選挙で選びます。「有権者→議会」と「有権者→首長」という二つの経路があるわけです(「二元代表制」と呼びます)。首長と議会の間でチェック&バランスが働く仕組みになっており、米国の大統領制に近いシステムといえます。
政党対立の図式にも違いがあります。現在の国政では、自民・公明の与党に対し、民主・維新などの野党が挑むという構図になっています。一方の地方選は、必ずしも国政と同じの対立図式になっていません。今回の知事選で自民・公明と民主が対決する図式になっているのは北海道と大分だけです。神奈川や福岡など6県では、自民と民主が同じ候補を支持する相乗り型になっていますし、岡田克也・民主党代表の地元である三重では、同党が独自候補擁立を見送りました。
Q:投票率が年々下がっているようですが、なぜでしょうか?
A:2011年に行われた前回の統一地方選では、道府県議選の投票率が平均で50%を割りました。知事選の投票率も平均で53%弱でした。統一地方選が始まった当初(1940年代後半~50年代)はいずれも80%前後ありましたが、年々下落しています。
投票率に影響する要因はいろいろありますが、なかでも、自分の1票によって政治がどれだけ変わるかについての期待感が重要です。つまり、自分が1票を投じることによって県政や市政のあり方が大きく変わるとの期待を持てば、その人は投票に行くでしょう。しかし、「どうせ投票しても何も変わらない」と考える人は投票所に足が向かないでしょう。相乗り型の候補が増えたり、圧倒的に強い現職知事が出馬していたりすると、変化が期待しにくく、投票率の低下につながると考えられます。
そのほか、市町村合併で投票所の数が減ったことや、地域の共同体のつながりが弱くなってきたことなども、投票率低下の原因として考えられます。
Q:どうしたら地方選を活性化できますか? 私たち有権者はどうすべきでしょうか?
A:民主主義を根っ子のところで支えているのが地方選であるならば、その活性化は不可欠です。そのためには、政党や政治家の側が魅力的な政策案を練り上げ、地方自治の大切さを有権者に粘り強く訴えかけることが大事です。有権者の側も、「政治はお上がやってくれるものだ」という意識を捨て、「自分たちのことは自分たちで決めるのだ」という意識のもと、主体的に自治体運営に関わっていくことが必要です。その意味で、政治家と有権者の関係は鶏と卵の関係のようなものです。政治家の側も有権者の側も少しずつ変わっていく中、両者の共振が生じたとき、大きな変化がもたらされるでしょう。
そうした変化を促進するための制度改革も重要です。特に、議会と有権者の距離を縮めるための方策を導入すべきでしょう。議会を一部のプロの独占物にするのでなく、一般の人々のアクセスを容易にするということです。たとえば、議会の定例会を夜間に開催する、会社勤めの人が地方議員を兼職しやすくする、といった措置が考えられます。
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内山 融(うちやま ゆう)
東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など。
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