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プロフェッショナル巧の格言 笑福亭鶴笑(落語家) “パペット落語”が国際問題を解決「お笑いの可能性は世界共通」(2)

プロフェッショナル巧の格言 笑福亭鶴笑(落語家) “パペット落語”が国際問題を解決「お笑いの可能性は世界共通」(2)

 パペット落語を創り上げたことで、お笑いの可能性に目覚めた鶴笑の関心は、海外に向かう。
 「お笑いの可能性いうのんは世界共通。でもこれは、ほんまに外国に行ってみんことにはわからへん。そう思って、まず行ったんが大道芸の本場、ニューヨークのバッテリーパーク。ここでウケたんがクセになって、次がオーストラリア。ここではブリスベーンからシドニーまで、お客さんからの投げ銭だけで行ったんですよ。ここまでやったら次は活動拠点を移そうとなって、家族でシンガポールへ移住しました。なんで移住したのかというと、腰を据えてやりたかった。何日か出かけてやるのと、拠点を移してやるというのはやっぱり違いますもんね。しかし、いきなり欧米というのはやっぱり不安。それでちょっとでも日本と共通点が多い東南アジアに行ったんです。シンガポールでは、テレビの番組ができるわ、華僑や日本人会からのお呼ばれはしょっちゅうで、えらい売れっ子になりました。でも、その環境がぬるま湯に思えるようになって、次はロンドンで路上の芸からやり直しました」

 どこへ行っても、パペット落語、紙切り、南京玉すだれの三点セット。言葉より笑いのコミュニケーションで押し通す。公演の傍ら、各地のコンテストに参加し、’98年のハンガリー国際人形劇フェスティバルをはじめ数々の大会で優勝。そして国際派の芸人という評価が高まった’01年、9・11の同時多発テロに遭遇した。
 「あの時、僕はロンドンにいたんですけど、あっちの芸人さんはテロの報に接するや、異文化交流と平和な笑いの必要性を訴えて、すぐにボランティア活動をやりだした。阪神大震災でボランティア活動の重要性をわかっていた僕も、あの行動力には驚かされました。芸人でもこんな形の社会貢献ができるんや…。そういう思いが高じたのが『国境なき芸能団』です」

 NPO法人『国境なき芸能団』は’08年にロンドンで結成され、大阪を拠点に活動を開始。鶴笑以外のメンバーは、ボランティアの趣旨に賛同した芸人をその都度ピックアップする。費用はすべて手弁当の完全ボランティア。出発前に集まったカンパや募金はすべて援助物資にあてられる。
 それにしても『国境なき芸能団』とは何とも洒落たネーミングだ。命名のきっかけは国際ボランティアの本家『国境なき医師団』との出会いである。
 「トルコでお会いした『国境なき医師団』の方々が『肉体的な病は医学で治せるけど、精神的な病は笑いでしか治せない』と言わはるんです。それであの人らが『医師団』やったら、こっちは『芸能団』や、となったんですね」

 その後、文字通り世界を駆け巡り、『国境なき芸能団』で訪れた国はこれまで40数カ国に及ぶ。
 「最初の公演は南米ドミニカ。開拓移民であっちに行った人たちを励ますつもりで行きましたが『私たちよりあちらの人を…』と言われて励ましてきたんは、現地の貧しい人たち。次にストリートチルドレンに笑ってもらいたくてブラジルへ。ポルポト政権の悪夢が残るカンボジアにも行きました。それから戦乱の難民キャンプに笑いを届けようということで、イラク、アフガニスタンにも行ってます」

 紛争地域へ出向くにあたっては、外務省や関係当局から自粛勧告もあった。さらに「売名行為」という批判の声も飛んできた。
 「アフガンの首都カブールでボランティア公演をやってたところを地元のテレビで紹介され、それを見た外務省の関係者が飛んできて帰国勧告です。ちょうどその頃、イラクでは湯川さんがイスラム国に拘束されていたんですね。いま思ったら、そういうことも関係してたのかもしれません」

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