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渋谷の名店『茶亭羽當』に聞く、古き良き珈琲文化。仏・独発祥の入れ方が日本流に進化
コーヒーの新潮流“サードウェーブ(第三の波)”の代名詞であり、ブームの火付け役でもある『ブルーボトルコーヒー』。創設者ジェームス・フリーマン氏は日本の洗練された喫茶文化やおもてなし文化に触発され、同店に影響を与えたとも言われている。そんなジェームス氏が「昔ながらの喫茶店で本当に素晴らしい」と評したのが、渋谷『茶亭 羽當』だ。
「渋谷というと若者の街というイメージがありますが、この店は近隣で働くビジネスマンやご近所の方々が喧噪を忘れてゆっくりと過ごしてもらえる高級コーヒー専門店として1989年9月にオープンしました。仕事の打ち合わせで使う方もいれば、買い物やデートの合間に訪れる方々もいらっしゃいます。それぞれの目的に応じたコーヒーを提供したいと日々努めていますので、ご来店されたお客様の顔と様子、雰囲気や季節も考慮しながら一杯一杯抽出しています」とは、バリスタの寺島和弥さん。
そんな同店のコーヒーは挽き立てが身上、粗挽きを贅沢にたっぷりと使用する。レギュラーコーヒーは炭火焙煎。大正時代から続く老舗のロースター「山下珈琲店」が手掛けたものだ。種類は大きく分けてペーパードリップとネルドリップの2種類。レギュラーサイズのコーヒーはペーパードリップで。デミタスコーヒーはネルドリップを採用している。
「お店の看板のブレンドは苦味と酸味のバランスを取りながら、多くの方に好んでいただけるような苦みと酸味のバランスが取れた味わいにしています。ネルドリップの場合はオールドビーンズを使い、コーヒーのエキスだけを抽出していきます。時間はかかりますが、コーヒーの甘味や深みをより感じられます」
寺島さんにレギュラーサイズのブレンドコーヒーを入れていただいた。適量のコーヒー豆を缶からフタに手早く移し、挽き立てのままきれいに折り目を付けたペーパーフィルターにセットする。その間、選んだカップをお湯で温めておきながら、口の細い専用ポットで丁寧にお湯を回しかける。するとコーヒー豆がまるでスフレのように盛り上がり、さらに中央の泡をめがけてお湯を落としていく。流れるような所作は茶道の型を思わせるが、たくさんの注文をこなすうちに自然と身に付いた無駄のない動きなのだとか。
「フィルターの真ん中から湯を落とし、浸透させます。コーヒーは蒸らしの際にエキスが抽出されるのです。下から落ちるコーヒーはきめ細やかでコロコロと弾けます。この液体の粒はフランス語で琥珀色を意味する“ランブル”と称されており、純度の高いクリアなコーヒーの証でもあります」。…