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【大人の逸品】男の夜更かしを10倍楽しくしてくれる逸品大集合!

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 真夜中の奇跡――「ミッドナイト・イン・パリ」
 文=ウッディ・グレース(評論家)

  1920年代のパリ――。そこは芸術の中心だった。アーネスト・ヘミングウェイ、スコット・フィッツジェラルド、コール・ポーターといったアメリカの作家や作曲家が暮らし、サルバドール・ダリ、パブロ・ピカソ、マン・レイなどといったヨーロッパの芸術家たちと自由な交流を持ったのである。

  日本では2012年に公開されたウッディ・アレン監督、脚本の映画「ミッドナイト・イン・パリ」は、そんな20年代のパリが、じつにいい香味のスパイスとして登場してくる作品だった。といっても時代設定は現代なのである。

  ハリウッドの青年脚本家のギルは小説を書こうとしている。しかし、なかなかうまくいかない。20年代のパリに憧れが強く、あの芸術家たちが退廃的な交流を繰り返す中にいれば、もっと刺激的な作品を書けるはずなのだが、と思っている。そんな矢先、フィアンセとパリに行くことになる。

  憧れのパリだ。しかし、昼間はフィアンセの買い物につきあわされ、現代パリのインテリとのパーティーには気が乗らない。そしてある晩、パーティーをひとりで抜け出てしまい、千鳥足でセーヌ河岸をほっつき歩く。すると、そこに奇跡が起こる。いつの間にか20年代にタイムスリップしてしまい、名だたる芸術家との夜が始まるのだ。毎夜、毎夜……。もちろん、奇跡は長続きしない。しかし、ギルは大きなものを得ていくのである。

  私は、この作品に男が夜更かしする根源的な理由が描かれている気がする。男は夢を見るために夜更かしするのだ。楽しみごとに熱中し、あわよくばその世界に行ってしまいたいと思う。私は、そんな感覚に陥ることがしばしばある。「ミッドナイト・イン・パリ」は、そんな子供じみた感覚を、陳腐に落ちることなく、ファンタスティックにコミカルに描いていた。ウッディ・アレンの映画にここまで感動したのは初めての体験だった。

  自分に対しての理解者を得たような気になり、今日も夜更かしをしている。真夜中の奇跡を信じて。

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