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【阿部純子のトレンド探検隊】2015年女性の消費トレンドのキーワードは「オンナを覚醒。諦めない。」

【阿部純子のトレンド探検隊】2015年女性の消費トレンドのキーワードは「オンナを覚醒。諦めない。」 

  男女の購買行動の研究を続けているマーケティング会社「ハー・ストーリィー」は、女性増客、女性活躍のためのコンサルティングを行っている。女性誌、男性誌、テレビ番組を徹底に読み込み購買層の傾向を分析、さらに定性調査するためにグループインタビュー、座談会、13万人の女性ネットモニター、5万人を超える男女を対象にしたウェブアンケートを経過年度で行なっている。

  ハー・ストーリィー代表の日野佳恵子さんによる「2015年女性消費トレンドセミナー」が2月に開催された。雪がちらつく悪天候にもかかわらず、会場には様々な業界の人が集まり活況を呈していた。トレンドを生み出すといわれる女性が2015年に何を求めているのか、セミナーの一部をご紹介したいと思う。

 ■2015年は「新消費創生」がキーワード

  2015年の女性消費のキーワードは「新消費創生」で、これは過去の消費スタイルとは違った時代に入っていくということ。新消費創生の着眼点は以下の3つとなっている。

 ◎戦後3世代へ

  1945年の終戦から今年で70年。当時0歳だった女性が70歳になるということで、祖母まで含めた3世代が戦争体験のない世代となり、今までの消費スタイルとは異なる形が出てくると分析。70~75歳の祖母世代、戦後一番モノを買っていた40~50代のバブル世代、その子どもであるゆとり&さとり世代の3世代を総括的に見ていくことが必要になってくる。長寿高齢、少子社会の中でのインサイト(消費者の本音や欲望)を読み解くと、消費を加速させるチャンスが見えると日野さんは話す。

 ◎世帯消失マーケット

  いわゆる“おひとり様”が増加しており、一生結婚をしない生涯未婚率も男性が20%超、女性も10%超と高くなっている。世帯別のデータを見ても、夫婦のみ、もしくは一人が半数以上になり、子どものいる家庭を抜いている状況で、もはや核家族でさえなくなっている時代に突入している。

  親も子も一人になっていくという点から同居率も上昇。中でも、息子である男性1人で親の介護をするケースが急速に増えてきている。娘が親を介護する状況と異なり、仕事との両立の難しさ、細かなケアができないなど男性特有の事情もあり、この点をサポートするサービスが今後注目される分野になると予測している。

 

 ※出典:左・社会保障・人口研究所「出生動向基本調査(独身者調査)」、右・内閣府「平成24年版 高齢者白書」

 ■仕事をする(したい)女性マーケット

  安倍政権は350万人の眠っている女性人材を活用することで経済の活性化を促すとしている。…ハー・ストーリィーが2014年の専業主婦向け雑誌のテーマとして多かったものを集計したデータでも、「資格取得」「専業主婦か働くか」「主婦インターシップ」「就活ママ」が上位に入った。ワーキングママ系の雑誌でも一番多かったテーマが「キャリアアップ」。専業主婦は働くことを希望しており、すでに働いている母親は、子どもがいてもキャリアアップをして本格的に仕事をしたいという人が増えている。

 ※出典:総務省「労働力調査(詳細集計)」(平成25年平均)

  働く女性の増加につれて、女性の時間の使い方も変わっていく。働く女性の課題となっているのが「家族時間」「自分時間」「仕事時間」の配分だ。3大時間を解決する考え方、道具、サービスを徹底的に追求していく必要性があると日野さんは言う。実際に昨年、一昨年のヒット商品を見てもこの3つを解決するものが多く含まれていた。

 ■働くことを志向している女性とマーケットの間にミスマッチが生じている

  ハー・ストーリィーが独自にまとめた、20~60代の女性12タイプの一覧がある。

  中でも昨年、急成長した3タイプが、30代のフルタイムで働く既婚女性「BIZZママ」、男女機会均等法に総合職で入り、現在はすでに役職を持っている「エグゼ50」、専業主婦から自身の知識や教養を活かしプチ起業をする40~50代の「サロンマダム」。いずれもマーケットボリュームとして大きくなっている。

  そして12タイプのすべてに共通するキーワードが「働く」ということ。すべての世代が働くことに関わる消費をしている。その中で日野さんが指摘したのが、働く女性のニーズとマーケットのミスマッチだ。

 「女性は仕事、出産、育児と経験することで環境や気持ちの変化が男性よりも多く、しかも現在は急速に女性を取り巻く環境が変わってきているので、女性のマーケットは男性に比べ細分化され、短期的な傾向が強い。つまり、買うものやニーズがものすごいスピードで変わっていくということです。

  ビジネスバッグを例に取ると、女性のバッグはファッションバッグの中でビジネスも兼用というのが多く、実体験ですが、あるお店でビジネスバッグの売場を尋ねたら、男性用バッグの売場に案内されました。本当にキャリアアップしたいと思っている女性に応える機能性があり、かつ女性らしい商品が、働く女性の数にくらべてまだ足りなくて未熟だと感じます。

  しかし逆を言えば、今後はこの分野は大きく伸びるということ。…マーケットは飽和状態に見えても、環境の変化とマーケットのニーズがずれているだけで、まだまだビジネスチャンスを秘めたジャンルは多くあると思います。

  また、こんなに主婦が働きたがっているのに、一方で働き手が集まらず廃業してしまう業者がいることも報道されています。モノだけでなく働き方にもニーズとのミスマッチがあり、働き方を変えていくというビジネスモデルを作らないと、女性たちの活躍する場が実現できないという状況になっています。つまり『働く』というテーマに対し、大きなロスが起きており、これを改善する必要性があると考えています」(日野さん)

 ■2015年の注目マーケット&ヒット予測

 ◎P2キッズ

 「P2キッズ」とはプリンス&プリンセスキッズのこと。少子化時代で子は宝どころか、ダイヤモンドとなり、大切な子どもは王子、姫という扱いに。人口減少の時代でも子ども向けのものは単価が上がり、品数も増えてくる。大事な子どもと過ごす夜と週末は、子ども中心となり、3世代マーケットと絡んで子どもを中心とした店や商品を選んでいく傾向が強くなっている。

  また、将来子ども一人に両親を見てもらうため、子どもに生きていく力をつけさせたいと願う親も多く、お金に関すること、体力、知恵を付けることなど、将来を見据えた身につく遊びや習い事も増えてくる。

 ◎プラチナエイジ

  今年は1955年(昭和30年)生まれが60歳になる。「プラチナエイジ」とは60代を指す。還暦を迎えても「赤いちゃんちゃんこを着たくない」と答える人が8割を超えて、従来の60代とは意識が大きく変わってきている。還暦という区切りも、従来の長生きしたことを祝うという意味合いは薄れ、これから20年、ひょっとすると40年もあるかもしれない人生を充実させるために、より品質の高い物やサービスを求めるようになる。金銭的にも余裕があるプラチナエイジ世代のマーケットは今後成長する可能性が高い。

 ◎おまかせ商品

  より高品質、高レベルの世界を知り目が肥えてくると、自分のセンスでは限界があることを悟り、それをカバーしてもらうためにプロに任せる、つまり、素人である自分たちでは得られない結果や時間のロスを、お金を払って得ることを求めるようになる。実際に、子どもや自身のスタイリングをプロの目利きで選んでもらいショッピングできるサービスも増えている。

  共働きの家庭では、夫婦でも互いの収入を知らず、家計のコントロール、マネージメントしていないという人が50%にも及んでいる。…その結果、貯蓄が月に1万円以下の家庭も多い。お金の管理ができずに困っているのなら、お金に関することはプロに任せるというニーズの増加も予想される。客に代わってプロが目利きをするサービスは一層増えると思われる。

  2015年全体の消費ワードは「価値ある」「充ちた」「得感の」「視感買い」の4つ。「価値ある」はより高品質、より希少、自分だけのものを求め、「充ちる」は自分にエールを送るような、より自分が上がる充たされるものを求め、消費に真剣な時代を反映してお金を大切にする中でコスパやお買い得感のある「得感の」ものを求め、気持ちが上がるような、人に話したくなるような見た目のインパクトを持つ「視感買い」、この4つを感じるものがヒットするのではないかと日野さんは分析する。

  最後に日野さんは、2015年の女性消費トレンドの着眼点として「オンナを覚醒。諦めない。」がポイントであると予測した。昨年大ブームとなった「壁ドン」のように、働く女性が増えて仕事への意識は男性並みでも、キュンとしたい、ときめきたい、そういった女ゴコロは忘れないという行動意識が、さらに今年は顕著になるのではという。

  そしてそれらを裏付けるキーワードとして、マーケット、働き方や家族、結婚観が変化してきた時代に現れる「第3」の存在、都会と地方、未来と過去、大人と子どもなど、自分と真逆なものから見て発見するというような「逆」の価値観、セルフィーアイテムやちょっとデコ、ちょっとひと手間というように自分の存在を確認できる、自分だけの「自愛」がヒットの着眼になるのではと締めくくった。

 ■関連情報

 http://www.herstory.co.jp/

 文/阿部純子

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