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サツマイモの近縁野生種のゲノム解読
重要作物のサツマイモでゲノム(全遺伝情報)研究が進んだ。サツマイモの2倍体近縁野生種Ipomoea trifidaのゲノムを、かずさDNA研究所(千葉県木更津市)の平川英樹(ひらかわ ひでき)グループ長と磯部祥子(いそべ さちこ)室長、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)九州沖縄農業研究センターの岡田吉弘(おかだ よしひろ)主任研究員らが解読した。
写真. ゲノムを解読したIpomoea trifidaの花(左)と根(右)。サツマイモと同様に、同じ属のアサガオに似た花を咲かせる。根は通常肥大しないが、解読した系統の「0431-1」ではわずかに肥大が見られる。(提供:農研機構九州沖縄農業研究センター)
市場に流通しているサツマイモのゲノムは、ひとつの細胞に6組のゲノム(6倍体)を持つ複雑な構造をしているために、解析が難しい。今回の成果は、その解読を実現するのに必要となる基盤情報を通常の2倍体野生種で示し、サツマイモの品種改良に寄与する成果といえる。3月24日付の国際科学誌DNA Researchオンライン版で発表した。
サツマイモは中南米が原産。この近縁野生種Ipomoea trifidaのうち、メキシコから導入された系統で解析した。そのゲノムは5億1300万塩基対からなり、約1万2000個の遺伝子が分離された。このうち、サツマイモの収量に関連するデンプン合成に関わる遺伝子なども見つかった。この遺伝子を利用して、デンプンの性質や含量を改良するためのDNAマーカーを開発するなど、サツマイモの育種に活用することができるという。
研究グループは「サツマイモは世界的に重要な作物にもかかわらず、遺伝子の情報がほとんどなかった。その状況を大きく変える突破口にしたい。ゲノム情報の育種的な利用だけでなく、サツマイモの分類や進化の研究の手がかりになる。この2倍体野生種の解析で、より複雑な6倍体のサツマイモのゲノム解読にめどがついた」と指摘している。